兵庫県・第三者委員会が報告書、斎藤知事の告発対応は「違法」

 兵庫県の斎藤元彦知事が内部告発された問題を調査する第三者委員会は19日、報告書を県に提出した。告発文書に記載された言動の多くを「パワハラに当たる」と認定告発者を特定した県の対応は公益通報者保護法に違反するとした。

 「違法の可能性が高い」などとした県議会調査特別委員会(百条委員会)の調査報告書よりも厳しい内容となった。

(以下略)

 

日本経済新聞 2025/3/19)

 

 

 斎藤兵庫県知事に対する内部告発問題を調査する第三者委員会が3月19日、報告書を県に提出した。

 

兵庫県/「文書問題に関する第三者調査委員会」調査報告書

 

 先に兵庫県議会の百条委員会が報告書を公表しているが、そこでは、「パワハラ行為と言っても過言ではない」、「外部公益通報に当たる可能性が高い」など、断言を避ける書きぶりとなっている。これに対して、今回の第三者委員会の報告書では、ストレートに「パワハラに当たる」と明言し、公益通報者保護法の問題でも「極めて不当」「違法である」と断定している。

 そして、当該告発文書について、第三者委員会は次のように評している。 

斉藤知事は、元西播磨県民局長を「公務員失格」、「うそ八百」などの言葉を用いて非難したが、本件文書には数多くの真実と真実相当性のある事項が含まれており、「うそ八百」として無視することはできず、むしろ、県政に対する重要な指摘をも含むものであった

 

 今回の結論については違和感はなく、大筋において、公正であり、妥当な結論ということができるだろう。調査結果を発表した第三者委員会は、県の要請で設置された独立性の高い調査機関であり、元裁判官ら6名の弁護士により構成されている。その調査結果は極めて重い。

 

 

 筆者は、今回の内部告発問題について、昨年(2024年)5月に次のように述べている。

 

 今回の事件について、問題点は二つある。

 

(1)告発された行為自体

 この内容が事実であるならば、事は極めて重大である。これの真偽については、完全に中立の第三者が客観、公正に調査を尽くすべきであろう。「一定客観的な調査」は、客観的であるとは言えない。

 

(2)告発者に対して不利益な処分を行ったこと

 もう一つ重要な問題は、今回の通報を行った者に対して、公正な調査を行う前に、「事実無根の誹謗中傷」と、告発された当事者が一方的に断罪して、懲戒処分を行ったことだ。

 これは、通報を行った者に対する不利益な取扱いを禁じる「公益通報者保護法」に違反している。公益通報者保護法は、公益のための通報(「公益通報」)が社会全体の利益に資することから、通報者の通報行為を正当な行為として保護しようとするものである。

 

(中略)

 

 今回の通報者に対する処分は、本件について人々の口を噤(つぐ)ませる効果を持つだろう。そして、本件のみならず、今後、公益通報を行おうとする者は、自分が本当に守られるのかどうかの懸念から、必ず躊躇するようになるに違いない。公益通報制度に対する人々の信頼感は大きく毀損されてしまった。このことの責任は極めて重大である。

 今回の通報者に対する懲戒処分が認められるのであれば、通報者の保護という法律の目的は全くの有名無実となり、公益通報者保護法は事実上、空文化してしまうことになるだろう。

 

(以下略)

 

(神戸評論 2024/5/19)

 

 

firemountain.hatenablog.jp

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 

 今回の内部告発文書問題について、当時、筆者は、個別の指摘事項については、詳細な調査を待たないと事実関係が明らかにならないし、事実関係の評価においても論証することは難航が予想されたため、深入りの議論はしなかった。しかし、第二点目の公益通報者保護法の問題については、外形的に違法であることは明らかであったので、「『公益通報者保護法』に違反している」と断定した。これは、喩えて言うなら、100キロの制限速度違反をしている自動車のようなものであり、規制値を測るメーターの針が振り切れた状態であり、その程度の著しい法令違反であった。つまり、はじめから誰の目にも違法であることが明らかであったのである。したがって、今回の第三者委員会の報告書によって初めて違法が明らかとなったと考えるべきではない。

 

 今回の内部告発問題が発生してから、すでに1年が経過している。問題発覚当初から、斉藤知事の一連の対応の違法性は明らかであった。しかし、斉藤知事は、兵庫県議会、マスコミ、県民の真相解明を求める声に対して真正面から向き合おうとしなかった。斉藤知事は、質問に対してあらかじめ用意した答を壊れたレコードのように繰り返すとともに、事実と異なることを述べ、詭弁を弄し、法の曲解を重ね、問題の解決を阻み続けてきた。その異様な姿からは、斉藤知事は、一般社会と共通の言葉、価値観を持たないと思わざるを得ないものだった。

 かように問題が長期化した原因は、一重に斉藤知事の不誠実な態度にこそある。その間に、当該告発者をはじめ、真相解明に当たろうとした兵庫県議会議員、その他複数人が命を絶つという恐ろしい事態となっている。こうした状況を招いた斉藤元彦氏の責任は極めて重大であるといわざるを得ない。そして、なによりも、言論による民主主義の一つの社会的コアとなるべき県知事が、県議会、マスコミ、県民と共通の言葉、共通の価値観を欠落していることこそが問題の本質であると考える。つまり、「知事の資質欠如は明らか」(読売新聞 2025/03/20)なのだ。斉藤知事は、一日も早く自らの身を処すべきである。

 

社説:兵庫第三者委 知事の資質欠如は明らかだ : 読売新聞