神戸阪急が全館改装

 阪急阪神百貨店を傘下に置くエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは12日、神戸阪急(神戸市中央区)を全館改装すると発表した。約80億円を投じ、都市型百貨店としてファッションや美容系売り場を強化。神戸の土地柄に合わせ、ライフスタイル提案型の売り場も展開する。全館改装は、阪神・淡路大震災で被災した「そごう神戸店」当時の1996年4月以来、26年ぶり。

 改装は、本館(地階~9階)と新館(地階~8階)の地階部分を除く9割で実施。2023年秋ごろまで続き、順次フロアをオープンする。

 

神戸新聞 2022/5/12)

 

 5月12日、H2Oリテイリングが、神戸阪急の全館改装を実施すると発表した。2019年10 月に、そごう神戸店から神戸阪急に変わったが、地階食品売場などの一部の改装が行われたのみで、全館改装は初めてとなる。

 そごう神戸店は、かつては、神戸の交通の中心である三宮駅に直結する地の利を活かし、大丸神戸店をもしのぐ地域一番店であった。しかし、震災で大きな打撃を受け、店舗の一部を縮小する形で再建されたものの、その後、積極的な改装は行われず、年々陳腐化し、百貨店が持つ華やかさは失われ、大丸神戸店に大きく遅れを取るようになってしまった。そごう神戸店から神戸阪急に変わったが、従来の店舗をそのまま継承する形であった。そして、今回、神戸阪急となって初めて、新しい経営方針の下、全館改装が行われることになった。近年、周辺都市での都市整備が進む中で、神戸都心の求心力低下が顕著になっていた。その主な原因の一つは、そごう神戸店の不振にあったことは間違いないだろう。今回の神戸阪急の大改装は、神戸商業の復活の契機となるものとして大いに期待したい。

 

◎ リモデルのポイント
 
① 都市型百貨店として期待されるハレ型の品揃えの強化・拡充 および 今日的な時代感を捉えた高感度コンテポラリー化 
 人口150万都市・神戸市の中心地にある百貨店として、下層階ではラグジュアリーやモードファッションのカテゴリーを強化し、化粧品や服飾雑貨の売場も一新、四国や中国地方など広域からの集客もねらいます。 
 対象フロア…本館1階~3階および新館1階~3階 オープン時期…2022年度中順次

 

② 独自性のある地域密着ライフスタイル型「神戸スタイル」ワールドの新設 
 都会でありながら、人の営みとすぐそばに海や山といった豊かな自然が共生する素敵な街「神戸」の百貨店として、中上層階を中心に、モノの情報発信だけでなく「洗練された華やかな暮らし」など、神戸の人の暮らしをイメージし、神戸の皆様の暮らしと共創するライフスタイル提案型の売場づくりを行います。
 対象フロア…本館4階~6階・8階 オープン時期…2023年度中順次

 

③ 新しい発見・驚きなどの楽しさ提案の強化 
 各フロアに情報発信スペース「パティオステージ」を新設し、神戸エリアにおける「楽しさ№1百貨店」を目指します。
 対象フロア…本館1階~8階 オープン時期…2023年度中順次

 

(株式会社阪急阪神百貨店エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 2022/5/12)

 

神戸阪急・高槻阪急のリモデルについて (swcms.net)

 

 注目されるのは、神戸阪急が、150万都市・神戸市の中心地にある百貨店としてだけではなく、四国や中国地方など広域からの集客を狙うとしていることだ。

 

 神戸市の人口は150万人であるが、兵庫県の人口は約540万人である。さらに、関西圏(2府4県)の人口は約2000万人で、中国・四国地方の人口は約1100万人である。この構図の中で、神戸は、中国・四国地方と関西圏との交通の結節点にあたり、関西圏の西の玄関口の位置にあたる。神戸の都市戦略の要諦は、兵庫県以西の中国、四国地方の1600万人の中で第一の都市になることだ。

 都市の規模は、圏域の人口の規模で決まる。圏域人口が多ければ、相対的に僅少な需要であっても、実数的にはまとまった需要となり、一つの産業として成立しうる。これが都市における規模の経済効果であり、都市の生産性を決定することになる。たとえば、人口の1%でしか存在しない需要があったとすると、10万人の規模では成立しない産業も、その100倍の1000万人の規模になると一つの産業として成立しうる。そして、それが独立した産業となり、専門化することによってその生産性が高まる。同時にそれが都市全体の生産性を高めることになる。その生産性の高さを求めて、さらに人口や産業が集積するというのが、都市の発展のメカニズムである。

 神戸の都市政策においては、150万人を対象とした都市機能を求めるだけではなく、兵庫県、中国、四国地方を合わせた1600万人を対象とした都市づくりを考えるべきだと考える。それによって、より高度な都市機能を維持し、競合する他都市に対しても優位性を発揮できると考える。

 そうした考えに立って、兵庫県、中国、四国地方を見渡したときに、神戸は既に最大都市である。また交通条件的に中国、四国地方と関西圏との結節点の位置にある。圏域内で、仮にどこか1カ所に集まるとすれば、最も集合するのに便利な場所を選ぶだろう。同様に、その圏域内で1カ所だけ設置する施設があるとすれば、最も人が集まりやすい場所を選ぶだろう。神戸は、そうした場所を目指さなければなならない。

 この都市戦略の実現のために行うべきことは、新神戸~三宮~神戸空港を結ぶ交通機関の整備である。神戸は東西の主要な幹線が通っているが、結節機能が弱く、これを受け止めることができず、大阪に流れてしまっている。これを、いかに結節させ、素通りさせず、受け止めることができるかが大きな課題だ。現在は東西に通過してしまっている各交通機関を縦に結び、結節させることができるなら、そこに中国、四国地方のセンターが生まれるだろう。そこに人口1600万人を対象とした高度な都市機能を集積させることだ。これは夢のような話だろうか。現在でも神戸の旧居留地にはブランドショップが軒を連ねている。これは、兵庫県以西、中国、四国地方では最大の集積地だと思われる。その集積を生んだものは、単に神戸がファッショナブルな都市であるというイメージだけではなく、阪神間の高い購買力と、中国、四国地方からの流入を受け止めるのに適地と認められたものだと考えられる。この端緒を大きく育てるべきだ。

 今回、神戸阪急が、大きな視野を持ち、中国、四国地方など広域からの集客を狙うとしており、その成否は今後の神戸の発展を占うものとして注目される。

 

 

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