久元市長 就任7周年インタビュー

 神戸市の久元市長は任期が残り1年となったことを受けて、NHKのインタビューに応じました。
 人口減少対策やコロナ対策などに全力を挙げる考えを示す一方、来年の市長選挙に立候補するかどうかは明言を避けました。

(略)
 この中で、3年前、2期目に当選した時の公約の達成状況について、「60点くらいかなと思う。点数が上がっていないのは、残念ながら人口減少に歯止めがかかっていないからだ。ただ、バランスのとれたまちづくりや拠点駅の整備にはめどがつけられたので、一定の前進があったと考えている」と総括しました。
(略)
 一方、久元市長は、来年の秋に予定されている、次の市長選挙に3期目を目指して立候補するのか問われたのに対して、「任期いっぱいまで全力で仕事をしたい。次の選挙については、自分自身が適任か自問自答しながら、しかるべき時期に判断したい」と明言を避けました。

(NHK NEWSWEB 2020/11/19)

 

 任期が残り1年となった久元神戸市長に対してNHKがインタビューを行った。インタビューは神戸新聞を始め複数の報道機関が行っているようであるが、「3期目の立候補について明言を避けた」と評している点が注目される。

 同インタビューでは公約の達成状況について、60点ぐらいと自己評価している。点数が上がっていない理由として、人口減少に歯止めがかかっていないことを理由に挙げている。

 久元市長が就任した当時、新市長に対する一番の期待は、当時はまだそれほど鮮明ではなかったが、勢いに陰りが差してきた神戸を活性化し、他の大都市に伍して再び力強い成長軌道に乗せることだったのではないだろうか。久元市長は、この期待に十分応えられただろうか。

 都市再生の中核となる三宮再開発は、バスターミナルの建設、市役所の建て替え、東遊園地とウォーターフロントの再整備を挙げて「人の流れができれば、三宮は大きく変わる」(朝日新聞 2020/11/21)としているが、これだけで神戸の都心の吸引力が高まるとは思えない。おまけに三宮再開発の中心となるはずのJR三ノ宮ターミナルビル計画はコロナ禍の中で「白紙」になってしまうという事態に陥ってしまっている。その一方で、六甲山上のビジネス拠点化や北区の里山移住を人口減少対策の切り札と考えているなど、的外れ感が著しい。

 久元市長は就任から丸7年たつが、未だ神戸の都心の活性化、神戸経済の復活という課題に有効な解決策を見いだせていない。解決策を考える場合には、まず、神戸の都心にどのような位置づけ、役割を与えるかということが先決問題だ。久元市長には決定的にこの点が欠けている。美しい街、歩きやすい街、クラシカルな街並み、それは都市の化粧直しではあっても、「だから何なのだ」ということだ。都市は社会を構成するものであるから、果たすべき役割や機能があるのだ。それは神戸市民にとっての役割、関西圏での役割、西日本、国内、世界での役割があるはずだ。その役割をきちんと定義ができていないから、方向性が見えないのだ。目標をきちんと定めないと努力の方向、優先順位が見えない。それができていないから、マスコミからも「総花的」と言われるのだ。しかし、久元市長はその指摘を受け入れることができず、記者に論旨のずれた反論を繰り返すばかりだ。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 この記事の記者は、さすがに重要な点を見抜いている。

 

  これは筆者の仮説であるが、久元市長は博覧強記ではあるが、物事を構造的、分析的に捉えることが不得手なのではないだろうか。だから、重点事項、優先事項、戦略ポイントがなく、総花的になってしまうのだ。

 市長自身も自分が適任でないことに気がついているのかもしれない。今回のインタビューを読んでそのようにも感じた。次の選挙については、「自分自身が適任か自問自答しながら判断したい」という言葉にそれが表れているようにも思われる。

 

 

 今年1~9月に兵庫県から県外へ移った転出者が、県内への転入者を6515人上回り、全国47都道府県でワーストの「転出超過」になったことが県などへの取材で分かった。(略)

 兵庫県によると、県内では近年、20代前半の人口流出が課題に。県内には大学が多いが、卒業後、就職のため東京や大阪へ転出するケースが目立つという。さらに新型コロナの感染拡大以降、これまで多かった中国・四国地方などから兵庫への移動を見合わせる動きが出ており、転出超過の拡大に影響したとみられる。

神戸新聞 2020/11/17)

 

 最近も、総務省住民基本台帳に基づくデータで、2020年の1月~9月の人口移動で、兵庫県はマイナス6,515人となり、全国最大の転出超過数となったと報じられた。同じ期間での神戸市の社会増減の合計はマイナス1,279人で、兵庫県のこの結果に県庁所在都市である神戸市の動向も大きく影響していることは間違いないだろう。