人口減少数 神戸市がワースト1に(その3)

  神戸市がやった人口誘導施策が十分ではなかったという点について、なぜ十分ではなかったのかという記者の質問に対して、久元市長は次のとおり答えた。

 

  一種の成功体験というようなものがあって、神戸が福岡や川崎に人口が抜かれるはずがないということ、そういう意識がやはり長い間にあったのではないかというふうに思います。

  私は、市役所で仕事をするようになってすぐに、副市長になったばかりのときでしたけれども、神戸が置かれている状況を自分なりに分析をいたしまして、間もなく福岡に人口が抜かれる可能性が極めて高いということをお話をしたことがありましたが、相当多数の職員の皆さんがこれを驚きを持って受けとめたという反応でした。

  その後は、私は副市長から市長になりましたので、これは私の責任だというふうに思いますけれども、やはり人口減少対策についての緊張感を持った取り組みを行うことができなかった、これは反省点です。改めて、神戸がどういうまちを目指すのか、そのために何をするのかということを、まず我々がしっかりと対策を検討し、市民の皆さんにお示しをする必要があると思います。同時に、神戸はすばらしいまちです。神戸の持つ可能性に我々はやはり自信を持つべきだと思います。市民の皆さんの多くも神戸に愛着を持ち、そして神戸の可能性に大きな信頼を寄せているというふうに思います。市民の皆さんの知恵、あるいはアイデアを結集して、この人口減少社会を克服していく、人口減少幅というものをいかに抑えていくのかということ、これが非常に大事なことではないかと思います。

  同時に、やはり我が国全体が人口減少に入っているわけですから、ほかの都市を出し抜くとか、あるいは人口の奪い合いをするというような発想で都市経営はすべきではないと思います。やはり人口減少対策、人口減少社会の中で、自治体として何をすべきなのかということに関し、ほかの自治体のモデルになるような政策ということを立案し、内外に示すことができれば、大都市自治体としての役割を果たすことになるのではないかというふうに考えています。

 

 この久元市長の発言で、気になるのは、人口減少対策が後手に回った背景について、当時副市長だった2012から13年頃から危機を認識していたが、(市役所には)成功体験、抜かれるはずがないという意識があったのではないかと述べている点だ。どのような施策を講じるか、絶対的な決定権があったにもかかわらず、現時点まで効果的な対策を講じてこなかった久元市長に100%の責任がある。これまでも、報道やネットでは、再三、危機が訴えられていたのにもかかわらず、「人口規模を追わない」、「上質な街を目指す」などと、問題を真正面から捉えようとしなかったのは、第一に久元市長である。

 さらに、「神戸がどういう街をめざすのか、(略)まず、われわれがしっかり検討」と言っているが、もう就任から6年にもなるのだ。今から検討するようなことなのだろうか。

 

 「出し抜く」とか「人口の奪い合い」はすべきでないというが、「都市間競争」は単なる「ゼロサムゲーム」なのだろうか。人口減少社会を迎えて、我が国全体で、社会の「収斂」が始まっているのだ。その収斂先として選ばれるかどうかに、国内他都市は生き残りをかけてしのぎを削っている。ダンピング競争に陥るのは避けるべきだが、都市間競争の中で、都市の質を向上させ、新しい価値を提供し、その結果、神戸市が選ばれるということであれば、全体の利益になることだ。都市間競争をそういう意味で捉えるなら、やはり「出し抜く」ぐらいの気概がなければ、そのスタートラインに立つことすらできないのではないだろうか。