神戸空港のアクセス増強はどのように考えるべきか

ポートライナー乗客数(平成29年))

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 表を見ると明らかなとおり、三宮と貿易センターの乗客数とそれ以外の各駅の乗客数の合計はほぼ同数である。これが意味するところは、ポートライナーは、三宮および貿易センターとそれ以外の各駅とを結ぶ交通機関であるということである。つまり、ポートライナーの乗客は三宮および貿易センターから乗車して目的地へ向かい、目的地から三宮および貿易センターに乗客が戻ってくるという人の流れを表している。

 

 それを前提にポートライナーの乗車人員数の推移をモデル化すると、次のように表せる。

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 つまり、三宮および貿易センターで乗客は乗車し、ポートターミナル以降の各駅で順々に降車し、終着駅の神戸空港で全員降車して乗客数はゼロになる。最大乗車時を100%とすれば、市民公園では約50%の乗車率となり、医療センターで大方9割の乗客は降車し、約1割が神戸空港へ向かうということである。

 ピーク時間帯では、定員に対する乗車率は150%を超えるとのことだから、このモデルによると、みなとじま駅でほぼ定員に戻るということになるようだ。

 つまり、ポートライナーの混雑が言われるが、混雑しているのは三宮からみなとじま駅ぐらいまでで、それを過ぎると急激に乗車率は低下することになる。そして、神戸空港に向かう乗客は最大時の1割程度にしかすぎない。したがって、ポートライナーの混雑を緩和するには、三宮からみなとじま駅ぐらいまでの輸送力を増強すればよいことになる。

 どうしてこのようなことになるのかというと、ポートライナーはもともと、ポートアイランド1期の交通需要をまかなうために敷設されたものである。その後、ポートアイランド2期および神戸空港が建設され、その交通需要をまかなうために、三宮からポートアイランド2期および神戸空港の間に新線を敷設するべきところを、建設費を抑制するために既存のポートアイランド線を共用して、ポートライナー市民広場駅からの延伸のみを行ったため、既存の三宮から市民広場駅の間は需要が重複することになった。その後、ポートアイランド2期および神戸空港の需要の拡大に従い、ついに、この重複部分の輸送能力が限界に達してしまったのである。

 

 これを解決する方法として、当ブログではポートライナーの「東部新線」の建設を提案している。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 この提案では、三宮駅から京コンピューター前駅の東側の屈曲部まで新線を建設し、その先から神戸空港駅までは、既存のポートライナーの路線に合流するという案である。つまり、神戸空港建設時に建設を省略して既存のポートライナーの路線を共用した部分を、新たに補ってやろうという考え方だ。

 仮に、これを建設すると既存の本線と東部新線で、乗客はどのように分かれるだろうか。

 現在のポートライナーの乗客数を使って予想してみると、南公園、中埠頭、北埠頭および神戸空港駅の乗客数が東部新線を利用すると考えると、その合計は3,090千人となる。残りの各駅を利用している 10,687千人が、ポートライナー本線を利用すると考えられる。そうすると、全体の13,777千人の22.4%の乗客が本線から東部新線に移転することになる。これだけが移転すれば、ポートライナー本線の混雑はほぼ解消するのではないだろうか。その後は、需要施設を東部新線の沿線に建設し東部新線の需要を拡大するように努めることになる。

 

 この東部新線で、今後の輸送力は十分確保できるのだろうか。

 現在のポートライナーの例で考えると、神戸空港駅の乗客の受け入れ能力の上限は約12,000千人と考えられる。とすれば、現在の南公園、中埠頭、北埠頭の乗客数は、1,805千人なので、残りの10,000千人分程度は神戸空港の乗客に充てることができる。神戸空港の利用客のポートライナー利用率を仮に50%とすると、神戸空港の利用客が20,000千人ぐらいになるまでは受け入れ能力があると想定される。

 今後しばらくは、これで輸送能力に不足はないはずだが、さらに需要が拡大し、容量超過が発生する場合はどうすればよいだろうか。

 その場合は、さらに、容量超過となる部分に新たな路線を敷設することも考えられるし、本線を撤去して輸送能力の大きい通常規格の鉄道に置き換えることも考えられるが、それは将来的な課題だろう。