ポートライナー神戸空港延伸事業をどう評価するか

  ポートライナーは、ポートアイランド2期および神戸空港の新たな交通需要に対応するため、中公園駅市民広場駅の単線部分1kmの複線化および市民広場駅神戸空港駅4.4kmに新たな複線を建設する延伸事業を行い、平成18年(2006年)に開業した。

 

 ポートアイランド2期および神戸空港の新たな交通需要にどのように対応するかについては、様々な議論があったに違いない。ポートライナーは、元来、ポートアイランド1期の交通需要を満たすために建設された交通機関であるから、これとは別に新たに三宮から神戸空港までの路線を引くことも一つの選択肢として考えられただろう。

 

 

 ポートアイランド2期および神戸空港への交通機関は、実際には、既存のポートライナーを延伸する形で実現された。それについて、以前に紹介した「延伸事業の記録」でも、「既存線と連携した形で延伸することにより、新たに三宮~神戸空港を結ぶのに比べ、大幅な建設費の削減ができました」と述べており、あえて、ポートライナーの延伸という形で建設をしたことが伺い知れる。

 

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 この延伸事業については、どう評価されるだろうか。

 その当時、神戸空港が成功するかどうかは不透明なところがあり、しかも、阪神・淡路大震災から日も浅く財政状況が厳しい中で、空港本体の建設に対しても内外からすさまじい批判が浴びせられていた時期であった。そのため、現在でもバス路線でよいのではないかという議論が出るぐらいだから、空港のアクセス線を建設することは、かなりの勇気が必要であったことであろう。その中で、ポートライナーの延伸という形で最小限の投資で、いわば、三宮から市民広場駅までの建設を省略する形で、ポートライナーによる空港アクセスを実現したわけだ。

 しかし、その判断は正しかったと言ってよいだろう。ポートライナー定時制にすぐれ、在来の鉄道等からの接続もよく、神戸空港の利点を実感させるのに十分の役割を果たした。神戸空港は、リーマンショックやJALの撤退等の幾多の困難に見舞われながらも、ついには規制緩和、国際線の声も上がるほどとなった。これは、このポートライナー延伸事業に負うところが大である。

 いまや、神戸空港は国内有数の空港に成長し、さらなる成長の姿を多くの人が思い描けるようになってきた。だから、あの大逆風の中で、これを構想し、決断した人の功績は大いに賞賛すべきだ。

 今日では、ポートライナーは年々乗客が増え、その混雑が問題化されるほどになってきた。しかし、これは、事業の成功を表すもので、むしろ喜ぶべき事態だ。今こそ、空港建設当時、建設費等の事情により実現できなかった、三宮~市民広場間の路線を建設をすべき時期だ。