関西3空港懇談会とりまとめ(全文)

2019 年5 月11 日

関西3空港懇談会取りまとめ

~関西全体の発展に繋がる関西3 空港の最適活用に向けて~

 

1.関西3空港の経緯

 関西国際空港(以下「関西空港」)、大阪国際空港(以下「伊丹空港」)、神戸空港の役割分担・運用については、関西空港の2期事業推進と経営状況悪化、神戸空港の開港を控えた中で開催した関西3空港懇談会(以下「本懇談会」)において2005 年に合意された。その合意内容は、伊丹空港の存続協定(1990 年)を踏まえたものであり、空港法に基づく国の基本方針(2008 年)にも反映されている。

 本懇談会が2010 年に行った「取りまとめ」では、3空港の一元管理による最適活用の実現という方向性を示した。その後、国の方針に基づき、関西空港伊丹空港経営統合(2012 年)、コンセッション実施により、関西エアポート株式会社(以下「関西エアポート社」)による民間運営が開始された(2016 年)。続いて、関西エアポート社が100%出資する関西エアポート神戸株式会社による神戸空港の民間運営が開始(2018 年)され、関西エアポート社による関西3空港の一体運営が実現した。

 

2.現状・本懇談会の問題認識

 2010 年の本懇談会取りまとめ以降、関西の航空需要は大幅に拡大している。特に、訪日外国人は、政府のインバウンド促進施策や各地域の取り組み等により、2018 年には3千万人まで劇的に増加した。関西空港は、こうした訪日観光需要の増大を背景に、24 時間運用や滑走路2本を有する等その高いポテンシャルを発揮することで、首都圏空港と並ぶ国際拠点空港へ成長した。一方で、環境アセスメントで想定した年間発着回数23 万回の到達も近づき(2018 年発着回数約19 万回)、ピーク時間帯には航空機離着陸やターミナルの混雑が激しい状況も生じている。同時に、平成30 年台風21 号による大規模浸水被害の発生等を踏まえ、空港機能の喪失を防ぐ災害対応力の抜本的な強化についても、現下における喫緊の課題となっている。

 伊丹空港は、現在も騒音値が環境基準を達成できていない状態が続いており、引き続き騒音低減等の周辺環境の改善が求められている。一方、発着枠370 回/日の上限まで活用される等、その利便性が発揮されており、空港の利用者等からは、更なる公共交通機能としての空港の利便性向上を求める声もあり、その両立が課題となっている。

 神戸空港は、神戸市周辺とその以西を中心とする国内需要が堅調に伸びており、発着回数は60 回/日の上限に達している。また、空港の利用者等から更なる増便を求める声があるなど、航空需要拡大への対応が課題となっている。

 今後、関西では、ワールドマスターズゲームズ2021 関西、2025 年大阪・関西万博、IR誘致などのビッグイベント・プロジェクトが計画されている。政府がインバウンドについて2020 年4千万人、2030 年6千万人の目標を掲げ、関西観光本部として関西への訪問率45%を目指す中、これら好機を逃すことなく、インバウンドの勢いを加速させ、関西全体の発展に繋げていくことが重要である。

 地域の自治体や経済界が連携し、関西全体の魅力向上に取り組むと同時に、空港側においても、こうした取組と歩調をあわせつつ、3空港それぞれの機能を適切に発揮させ、今後の関西の拡大する航空需要を確実に受け止めていくことが必要である。首都圏空港をはじめとする国内主要空港や、アジア近隣諸国の拠点空港において容量拡大や機能強化の取組が進められる中、こうした動きも念頭に、今後の需要動向も見通しつつ、関西のゲートウェイとして中核的役割を担う関西空港の更なる機能強化、伊丹空港及び神戸空港を含む関西3空港の航空ネットワークの充実など、将来の航空需要を見据えた議論を進め、今後の関西の成長・発展に備えることが重要である。

 以上の認識の下、アジア・世界の活力を取り込み、関西全体の発展に繋げるための関西3空港の最適活用を目指すことが不可欠となっている。

 

3.3空港の方向性

 世界基準の能力を有する関西空港を主軸に、伊丹空港神戸空港が有する特性を活かした最適活用による、世界・アジアに向けた「関西地域における一つの空港システム」を構築することを目指す。これにより、関西全体の航空需要拡大、関西経済の発展を目指す。

 安全・安心の確保の下、環境面の配慮と各空港の能力と需要を踏まえた利用者利便性・経済性を両立させ、空港と地域の共存・共栄を図る。

 各空港に関する取組や課題については、関西の将来を見据えた時間軸の視点を持ち、短期・中期・長期を整理して検討する必要がある(下表参照)。

短期(2021 年頃まで)

中期(2025 年頃まで)

長期

ワールドマスターズゲームズ

2021 関西の開催

 

・大阪・関西万博の開催

・IRの実現

関空の発着回数23 万回到達

 

・インバウンド6,000 万人

(2030 年)

なにわ筋線開業(2030 年度)

リニア中央新幹線の大阪開業

(2037 年)

 

4.各空港の役割

 各空港の位置づけと役割は基本的に変更しない。

 関西空港は、西日本を中心とする国際拠点空港、関西圏の国内線の基幹空港。今後は、関西さらには西日本のゲートウェイ空港として、内際ネットワークの一層の充実が重要である。

 伊丹空港は、国内線の基幹空港、環境と調和した都市型空港。

 神戸空港は、神戸市及びその周辺の航空需要に対応する地方空港。今後は、関西全体で一つの空港システムを構築する観点から、需要に応じて、関西空港伊丹空港を補完する機能が求められる。

 

5.今後の取組・課題

 目標時期という時間軸の観点より、現在のニーズに応え、将来の成長に備えるため求められる具体的な取組や課題は以下のとおりである。

 なお、今後の取組については、主に、3空港の運営事業者である関西エアポート社が主体となることから、本懇談会としては、その経営判断を尊重し、その取組と連携・協力していくことを基本に、以下のとおり整理する。

(1)短期の視点に立った取組

 ワールドマスターズゲームズ2021 関西の開催などを見据え、概ね2021 年頃までに実現をめざす取組は、以下のとおりである。

 関西空港については、関係機関と連携し、災害対応力の抜本的強化を図るとともに、混雑緩和や旅客処理能力向上を図る施設整備(ターミナル1リノベーション等)に着手するなど、世界基準の国際拠点空港の構築に向け、一層の機能強化を推進する。

 伊丹空港については、引き続き関係者と連携し、安全・安心と周辺環境の改善に取り組むとともに、2020 年東京オリンピックパラリンピックに向けたターミナル改修の着実な実施等を通じて、空港機能の強化・利便性向上を図る。

 神戸空港については、関西空港伊丹空港を補完し関西の航空需要に適切に対応するため、神戸市及びその周辺とこれを結ぶ地域の航空需要と航空上の安全性を踏まえて、国内線発着枠、運用時間を段階的に拡大(当面、最大発着回数80 回/日、運用時間を23 時まで延長)することとし、必要な措置について、国への理解・協力を求めていく。また、課題となっている空港アクセスの強化について検討する。併せて、今後、ニーズの高まりが予想されるプライベートジェットの受入を推進することとし、必要なCIQ体制整備等についても関係省庁に理解・協力を求めていく。

 上記に加え、広域災害対策の一環として、3空港の災害対応力向上を図るとともに、発災時の3空港相互支援体制を構築し、日本全体での空港間の支援・補完についても体制を整えていく。

(2)中期の視点に立った取組

 2025 年大阪・関西万博の開催、IR誘致などを見据え、概ね2025 年頃までを目途に実現をめざす取組は、以下のとおりである。

 関西空港については、拡大基調が続く航空需要を適切に受け止めることができるよう、旅客処理能力の拡大(ターミナル1リノベーション等)に継続的に取り組むとともに、年間発着回数23 万回到達を見据えた環境影響調査の検証に着手する。また、国をはじめ関係機関との連携・協力を得て、将来の需要に応じた発着容量の拡張可能性に関する検討を行う。また、関西の官民連携の下、内際ネットワークのさらなる充実など、国際拠点空港としての競争力強化と需要拡大に取り組む。

 神戸空港については、上記の関西空港の取組を踏まえつつ、関西空港伊丹空港を補完する観点から、国際化を含む空港機能のあり方等について関係機関との検討を行う。

(3)上記以外の課題

 伊丹空港については、国と地元自治体や地元住民団体との間で締結された1990 年の存続協定を踏まえ、過去の経緯を尊重して運用される必要がある。そのため、伊丹空港に関する取組については、存続協定等を尊重し、地元関係者と対話しながら進めることが重要である。

 近年、悪天候等により、運用時間外の発着便やダイバート(代替着陸)便及び欠航便が発生している。今後は、関係者と連携して定時運航率の向上などに取り組み、周辺環境の改善への努力と利用者利便の向上を図る。

 伊丹空港の将来像については、上記の課題解決を図った上で、存続協定や国の経営統合基本方針、地元の意向、短中期の取組等を踏まえ、また、将来の大幅な需要変動を見据えて、国際便の就航可能性を含めた今後のあり方について、状況に応じて議論する。

 

6.空港のあり方に関連するその他の取組

 各空港における観光・ビジネス利用促進、輸出入の促進など、関西全体の航空需要拡大について、引き続き、関西の官民が連携して取組む。

高速道路ミッシングリンクの解消、なにわ筋線の整備、海上交通の拡充など、空港アクセスの充実についても、同様に関西の官民が連携して取組む。

 ワールドマスターズゲームズ2021 関西、2025 年大阪・関西万博など国際イベントの臨時的対応については、「5.今後の取組・課題」を踏まえ、本懇談会でその時々に議論する。

 

7.今後の懇談会の開催

 本懇談会については、今後も適宜継続開催し(原則として年1回程度)、その時々の状況変化に応じて評価検討を行い、必要な課題について議論し、順次結論を得る。

 

以上