新型肺炎の流行について(38)

 新型コロナウイルス感染症の発生動向は、8月上旬をピークに落ち着きを取り戻しているが、ここへ来て、新規発生数の下げ止まり、再反転の兆しが見える。第2波のピークから下がったとはいえ、第1波のピーク時に近い水準で高止まりしている。

 

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(出典 厚生労働省HP)

 

 街中への人出の状況を、NTTドコモが「モバイル空間統計」として発表している。「感染拡大以前」と比べて人出の状況がどの程度減少しているのかを表すものである。(平日は平日平均と、休日は休日平均と比較。)

 下は大阪梅田のグラフである。

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(出典:日テレニュース データとグラフでみる新型コロナウイルスより)

 

 これを見ると、6月下旬頃にマイナス15%程度まで人出が回復したが、感染の再拡大とともに次第に下降に転じた。8月中旬にはマイナス25%程度にまで下がり、感染拡大がやや落ち着いてきたことから、9月以降に再び人出が増え始め、6月下旬と同水準のマイナス15%程度に回復している。この連休でさらに人出は増えるかもしれない。そこから予想されることは、いったん沈静化が進んだ感染拡大が再び増勢に転じるのではないかということだ。また、これから気候が秋から冬に向かい、気温の低下も進んでいくと、10月以降は再び感染拡大の勢いが強まるのではないかと予想する。

 

 一方、経済情勢も懸念が深まっている。

 JTBの労使は、社員約1万3千人に冬の賞与を出さないことで合意した。夏は支給した。冬の賞与見送りは少なくとも1989年以降で初めてという。

朝日新聞 2020/7/9)

 

 JR西日本西日本旅客鉄道労働組合(JR西労組)が冬のボーナスにあたる一時金について、2.69カ月分としていた支給額を減らす方向で合意したことが11日分かった。新型コロナウイルス感染拡大の影響により業績が悪化しているため。具体的な支給額は今後、交渉する。

日本経済新聞 2020/9/11)

 

 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが約4000人いる正社員と嘱託社員の冬の賞与を7割削減することが14日、分かった。業務が無いダンサーなど一部の契約社員には配置転換を要請し、合意できなければ退職などを促す。人件費を圧縮し、新型コロナウイルス下の業績悪化に対応する。

日本経済新聞 2020/9/14)

 

 人事院が行う2020年の国家公務員の給与改定勧告で、ボーナス(期末・勤勉手当)を引き下げる公算が大きいことが15日、分かった。

 基準となる民間企業の給与実態調査で、民間のボーナスが公務員を下回るとみられるため。新型コロナウイルス感染拡大で民間の今年夏のボーナスは下がっていた。ボーナスが引き下げ勧告となれば、10年以来10年ぶりとなる。

時事通信 2020/9/16) 

 

  冬のボーナスの支給の停止、大幅削減などのニュースが続々と報じられ、ついに国家公務員の給与引き下げの観測も流れ始めた。

 これまで、一人10万円の定額給付金の支給など、実態とは相違して、特定の業種以外の人々にはそれほどの経済的痛みは感じていなかったのではないかと思われる。しかし、ボーナスの削減が実施されると、そうした空気を吹き飛ばすほどの影響を及ぼすのではないだろうか。今後、消費の落ち込みが拡大するおそれが高い。

 JR西日本について先日も報じられたように、新規投資の大幅な削減も進められようとしている。経済の落ち込みが拡大する危険が高まっている。

 さらに心配されるのが、今年度から来年度にかけて税収の大幅な減少が予想されることだ。その場合に、地方自治体は税収に応じて大幅な支出の削減を行うことになるだろう。

 ここで公的支出を減らしてしまうと、経済は坂道を加速度的に転げ落ちるおそれがある。ここは、税収予想→予算という通常の思考ではまずい。意図的に公的支出の水準を維持することに努めなくてはならない。地方自治体は、ここで定石通りに歳出削減に努力するのではなく、政府に対して財政規模の維持を求めることに努力すべきだ。地方自治体のトップは連携して、地方の実情を政府に訴えるべきだ。政府の言われるままに振る舞うばかりが地方自治体の役割ではない。地方の実情を誰よりもよく把握し、政府の目の届かない地方の現状を政府に伝え、正しい判断を求めることが重要だ。地方自治体のトップは、大きな問題にこそ心血を注ぐべきだ。

 

 新型コロナウイルスの世界での感染者数は、9月18日現在で3007万人、死者は94万人、アメリカ、ブラジル、インドではまだまだ直線的に感染者が増加する状況が続き、ヨーロッパでは一時感染が収束していたが、再び増勢を強めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JR西日本が2021年3月期の業績予想を発表

 JR西日本は16日、令和3年3月期の連結業績予想を発表し、最終損益が2400億円の赤字(前期は893億円の黒字)になる見通しを示した。赤字幅は昭和62年の民営化後で最大となる。新型コロナウイルスの影響で鉄道利用が大幅に落ち込んでおり、年度末時点での回復は通常の6~7割程度にとどまるとした。

産経新聞 2020/9/16)

 

  JR西日本が2021年3月期の業績予想を発表した。売上高は前年比39.0%減で、運輸収入が同49.2%減に落ち込むことが主な原因とのことである。鉄道分野では、山陽新幹線や特急の利用状況は3割程度であり、これが年内いっぱい続き、年度末に6割程度に回復するとしての想定のようだ。

 そうした状況から、同社はコスト削減や設備投資の抑制を進めている。従業員の冬のボーナスの減額も打ち出されるなど、非常に厳しい状況である。

 そうした中で、JR大阪駅西側開発や三ノ宮駅ビル建設などの大型投資について、年内に具体的な見直し内容を示す予定とのことだ。記者会見では「コロナ以前の水準に戻る想定は持ちづらい」という発言があったらしい。

 本欄では、先に、今般の新型コロナ禍が三宮再開発の進展に影響を及ぼすことを予想したが、その可能性はますます強まったように思われる。三ノ宮駅ビルの具体名を挙げて年内に見直し内容を示すとした以上、なんらかの見直しは必至だ。少なくとも建設時期の延期は避けられないだろう。場合によっては、いったん仮設建物の建設ということもあるかもしれない。そうなれば、三ノ宮駅ビルの建設は、かなりの長期間、計画が凍結されることも予想される。これは、三宮再開発を都市発展の最重要課題としていた久元市政にとっては大きな失点だろう。

 久元市長は、三宮再整備を主要な公約の一つとして平成25年11月に神戸市長に選出、就任したが、その中心命題ともいうべきJR三ノ宮駅の建て替えについては、就任からほぼ7年が経つ現在においても未だ計画すら発表されていない状況で、進捗の遅さが様々な方面から指摘されていた。この間、「都心の未来の姿検討委員会」や「三宮構想会議」などの検討会議を重ね、平成27年9月に「神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン]」、三宮周辺地区の「再整備基本構想」が策定されたが、ここまでで約2年を費やしてしまった。そこからようやく旧三ノ宮駅がほぼ解体を終えた状況が現在である。今回は、新型コロナウイルス禍を受けての状況の激変とはいうものの、そもそも、今年は本来東京オリンピック開催の年であり、ここで我が国の経済の流れが一つのピークを迎え、オリンピック後には経済情勢が変化するだろうことは、これまでも指摘がされていたことであった。こうした計画は経済情勢に大きく左右されるため、新三ノ宮駅ビルのスムーズな実現のためには、これに照準を合わせて計画を進めるべきであったであろう。やはり神戸市は時間をかけすぎたのだ。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

教育委員会のメール問題

 神戸市の久元市長のツイッターに近頃、次のような投稿があった。

 教育委員会事務局は、コロナ感染期の半年間に小中学校などへ3687件ものメールを送付。中にはzipファイルを沢山添付、校長、教頭先生がこれを開き長時間かけて印刷し先生方に配布しているとか。明らかにおかしい。市長部局で調査官を任命して改善する。教育の内容に立ち入らないので、許されるだろう。

久元喜造ツイッター2020/9/10)

 

 教育委員会事務局が学校現場に夥しい数のメールを送りつけ、先生方に過大な負担を押しつけている問題。既に民間(金融機関、電機メーカー、報道機関)出身の業務改革調査官3名を任命し、調査に着手した。今月中に改善方策を提案してもらい、教育委員会事務局には直ちに実施に向けて動いていただきます。

久元喜造ツイッター2020/9/10) 

 

 大変な剣幕だ。

 校長、教頭先生が添付ファイルを開き長時間かけて印刷し配布しているというが、確かにおびただしい数のメールだ。 メールがたくさん学校現場に送られているのは事実なのだろう。

 では、その原因はなんなのだろうか、想像してみる。

(1)まず、学校には現実にたくさんのメールが送られる状況があるのだろう。というのは、学校というのは一つの社会にも相当するものなので、単に学業に関する連絡だけではなく、現下のコロナウイルス関連はもとより、気象、災害、防犯、健康など、あらゆる分野が学校になにがしかの関わりがあるのだろう。それらは必然的に教育委員会を通じて学校現場に連絡されることになるのだろう。

(2)中には不要不急のメールも含まれるのかもしれない。これらが適切に仕分けられたら、メールの数はいくらかは減らせるのかもしれない。また、メールの内容が十分整理されないまま、多数の添付ファイル付きで送りつけられることも少なくないのかもしれない。

(3)「メールを送りつけている人」は誰なのかと考えると、おそらく教育委員会の現場の上位の人物であるより、末端の職員ではないだろうか。

 

 このように考えると、久元市長が言う「夥しい数のメールを送りつけ」、「過大な負担を押しつけている」というのは、少なくとも何かの悪意があってのことではなく、結果的にそうなってしまっている、ということではないかと思われる。

 さらに想像を膨らませると、送る方としても、次から次に国や県、市役所の内外から大量のメールが送られてきて、多くの仕事を抱えている中で、それを十分に整理する間もなく処理をしなければならないという状況に置かれていて、追い立てられるように仕事をしているのではないだろうか。

 また、学校現場でも、誰か別の人が、事務を肩代わりして整理してくれる人がいれば、このようなことにはならないのではないだろうか。

 

 こうした問題が起きるのは、結局は、実態に見合った人員が教育委員会や学校現場に配置されておらず、現場の末端の職員が努力でカバーしているような状況が背景にあるのではないだろうか。であるならば、もっと冷静に、実務的に解決策を考えればよいことで、市長の立場にある人が、このような市の内部の問題を一般の市民に対して声高に訴え、このように強い物言いをするのには違和感がある。これでは、かえって、教育委員会に対する市民の信用をおとしめ、教育現場に対する不信感をあおることにならないだろうか。

 久元市長は、教育委員会の職員に対して、このように強い物言いをする必要があるのだろうか。これを読む教育委員会の現場の職員の気持ちはどのようなのだろうか。このような投稿を読むと、なにか悲しくなってしまう。もっと、おだやかな言葉が使えないものだろうか。現場の職員も、神戸の発展、市民生活の安寧を願って仕事をしているに違いない。同じ目標に進む者同士で無闇に対立するのはつまらないことだ。闘うべきはそこなのだろうか。

 

 

経済の循環について

 「花見酒」という落語がある。二人の男がそれぞれ酒を仕入れ、花見客を目当てに売りに行く話だが、途中の休憩時に、片方が手持ちのお金をもう片方に払って酒を飲み、もう片方がそのもらったお金で片方から酒を買い、再び片方がもう片方から酒を買うということを繰り返し、最後には二人が仕入れた酒がすべてなくなり、最初に手に持っていたお金だけが残ったという話だ。

 これは笑い話として語られるわけだが、経済モデルと考えると非常に興味深い。すなわち、貨幣を媒介にして、それぞれの商品が消費者にわたり消費される姿を現したものだ。つまり、貨幣が商品を消費者の手に渡す役割を果たしていることがよくわかる。両者の商品が同じ種類であることが奇妙に感じる一因なので、別の商品だと考えるとどうだろう。たとえば、片方は魚で片方が米とする。貨幣が往復することによって、商品が消費者の手に渡って消費されることがわかる。

 現代の社会では、生産活動は分業で行われ、各主体は自らが消費するためにではなく他者への提供を前提に生産をしている。それらの生産物は、商品として貨幣を媒介に交換されることによって、消費者の手に渡る。自らの生産物が他者に購入されなければ貨幣を手に入れることができず、自らが必要とする品物を手に入れることができない。その品物を必要とする人であっても貨幣を所持していない場合には、それを購入することができない。そして、購入されることがない商品は社会で日の目をみることなく、余剰品として処分されることになる。

 景気が悪いというのは、物が不足している状態ではない。物は十分にあって、その物を求める人も十分にいる。しかし、物を必要とする人の手元に貨幣が不足しているがために、その商品を必要とする人の手に商品が渡らない状態だ。では、なぜ必要とする人の手元に貨幣が不足しているのだろうか。それは、必要な人のところに貨幣が流れにくくなっているからだ。また、貨幣をすでに十分に持っている人に対しては貨幣が流れやすくなっており、そうした人はいったん手に入れた貨幣を再び循環させることなく貯蔵してしまうことが多くなる。そうなれば、貨幣は社会を循環することが少なくなり、貨幣が偏在するのだと考えられる。貨幣は人体でいうと酸素を体に行き渡らせる血液にたとえられる。血液の循環が滞ると健康が損なわれるように、貨幣の循環が滞ると経済、社会は機能不全を生じるのだ。

大阪都構想について

 大阪市を廃止して四つの特別区に再編する大阪都構想の制度案について、大阪市議会は3日、大阪維新の会公明党の賛成多数で可決した。大阪府議会に続いて議決したことで一連の議会手続きは終了。否決に終わった前回2015年に続いて2度目となる住民投票は10月12日告示、11月1日投開票の日程で行われることが固まった。

(2020/9/3 朝日新聞

 

 大阪都構想は、2015年に住民投票が実施され反対が賛成を上回る結果となり、実現にいたらなかったものであるが、再び住民投票が行われることが決まったようだ。

 

 大阪都構想とは何か、その定義をネット上で探してみると、次のようなものが見つかる。

 大阪都構想(おおさかとこうそう)は、大阪で検討されている統治機構改革の構想。大阪府大阪市(または大阪市を含む周辺市町村)の統治機構(行政制度)を、現在の東京都が採用している「都区制度」というものに変更するという構想である。 特に、
1. 大阪市を廃止し、
2. 複数の「特別区」に分割すると同時に、
3. それまで大阪市が所持していた種々の財源・行政権を大阪府に譲渡し、
4. 残された財源・行政権を複数の「特別区」に分割する、

ということが記載された「特別区設置協定書」に沿った統治機構(行政制度)改革を大阪都構想と呼ぶことが一般的に多い。

(中略)

 また、同構想の結果できる広域普通地方公共団体の名称は、現在の法制度下では「大阪都」になることはなく、大阪府のままである。「大阪府大阪市を統合する」という枠組みという点から、「大阪府大阪市合併」または「府市統合」ということもある。

wikipedia

 

 この説明によれば大阪都構想とは、大阪市の「廃止」・「分割」構想であるということになる。

 これを、図示すると次のようである。

 

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 横軸は規模の大小を表し、縦軸は権限の大小を表している。現在の大阪市は、神戸市と同様、政令指定都市なので、一般の市町村が持たない財源や権限が与えられている。大阪市の人口は262万人で大阪府人口の約30%に相当し、大阪府下では非常に強大な影響力を持っていることは間違いない。だからこそ、大阪府大阪市が長年にわたって競合する関係にあったと考えられる。

 大阪都になれば、大阪市は廃止され、それまで有していた財源および権限を大幅に大阪府に譲り渡し、4つの特別区に分割される。

 大阪市が従来保有していた財源と権限は大阪府に引き継がれることになるが、大阪市民は同時に大阪府民であるとはいえ、これまでは大阪市民だけで処分を決定することができたものが、大阪府の中の30%分の決定権しか有さないことになってしまう。つまり、大阪市が手放した財源と権限は大阪市民だけでは決定ができなくなるのだ。

 財源でいうと、本来は市町村税である法人市町村民税、固定資産税、特別土地保有税都市計画税事業所税は、大阪府に移され、特別区の手元に残るのは個人市町村民税、市町村たばこ税軽自動車税にすぎない。これでは、特別区の行政はとても賄えないから、「特別区財政調整交付金」として大阪府から特別区に交付されることになるが、大阪市民の自由になる財源は大きく失われてしまうだろう。

大阪府/特別区設置協定書

 

 これまで、人口で大阪府の30%を占め、大きな存在感を発揮してきた大阪市は、権限と財源を失うばかりではなく、一つ一つは4分の1の規模に縮小されてしまう。これにより、大阪市民は、大阪市を通して保有してきた大阪府下での特別な地位を放棄することになるし、大阪市民だけの利益を代表して全国で発言する自らの代弁者を失うことになる。従来のような競合関係を解消するために、大阪市を解体するのであるから、大阪市に代る4特別市が大阪府下で特別な地位を失うのは当然のことだ。しかし、それにとどまらず、大阪市民は、府下の他の市町村にも劣る特別区という権限の脆弱な団体の区民という存在になってしまう。なぜならば、固定資産税すら自主財源とできない市町村は他に存在しないからだ。

 特別区ではそれぞれ区長が公選されるものの、もはや大阪府知事と対等に交渉できるような存在ではないだろう。もはや、大阪市域の住民を代表して大阪府知事にもの申すリーダーは存在しないのだ。現在の都道府県と市町村はどちらも憲法が保障する地方公共団体であり、本来的には上下の関係にはなく、対等の関係であると説明されている。一方、特別区については、これまで幾多の変遷を重ねてきており、一時は都の内部団体と理解されていたこともあるが、次第に権限を回復し、近年、ようやく「基礎的地方公共団体」と位置づけられるようになった。しかし、それでも憲法が保障する地方公共団体であるとは理解されておらず、通常の市町村よりもはるかに不安定な存在であるといえよう。

 これまで大阪市としての一体感を持った市民が大阪の都市を築いてきたと思われるが、人為的に4分割された特別区の区民として、従来のような一体感は持てるのだろうか。この一体感こそが、地方自治の根本であると考えられる。4分割された大阪市民が、これまでのような大きな力を大阪府下、全国で発揮することができるのだろうか。

 東京都を例外として、日本国内すべての住民に基礎的自治体、国や県と法的に対等な存在として、市町村が与えられている。この市町村はその住民の利益を一義的に保障し、体現する存在だ。いわば、住民の財産ともいうべきものだ。大阪市民は、これをわざわざ破壊して、無権利の状態に自ら飛び込もうとしている。

 以上のように考えると、こうした改革を、大阪市民以外の府民であればともかく、大阪市民が諸手を挙げて歓迎することは理解に苦しむ。

 大阪都推進の理由として、二重行政の解消が挙げられているが、二重行政の解消というならば、十分な行政機構を持たない市町村ならばともかく、大阪市は十二分の行政機構を有しているのだから、大阪市域、大阪市民に関わる行政分野であれば、大阪市民のための行政機関である大阪市に権限を委譲するのが筋であろう。

 大阪市は、日本を代表する大都市として、先進的な都市作りを行ってきた輝かしい歴史を持つ。大阪市民は本当にこれを投げ打って大阪都を目指すのだろうか。一度、移行してしまえば、その回復にはおびただしい労力を要するだろう。本当に、このようなことに血道を上げるものだろうか。

新型肺炎の流行について(37)

 内閣府が17日公表した4~6月期の国内総生産(GDP)の1次速報は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期(1~3月)より7.8%減り、3四半期連続のマイナス成長になった。このペースが1年間続いたと仮定した年率換算では27.8%減。成長率のマイナス幅は比較可能な1980年以降で最大で、事実上、戦後最悪の落ち込みだ。コロナ危機が国内経済に与えた打撃の大きさが浮き彫りになった。(中略)GDPの減少率は、コロナの影響が出始めた1~3月期の年率2.5%減から一気に拡大。これまで最大だったリーマン・ショック直後の2009年1~3月期の年率17.8%減も、大きく上回った。

 

朝日新聞 2020/8/17)

 通常、売上が数パーセント減少するだけで不景気と言われるのに、二けたの減少、年率27.8%は想像を絶する数字だ。今回のコロナ不況は姿が見えにくい。大災害や大型の企業倒産のようなショッキングな場面があるわけでもなく、静かに事態が進行している。しかし、事態は確実に悪化しているだろう。生き物に例えるなら、体内に病原菌が広がり、次第に体を蝕み、ある限界を超えたときに、いきなり倒れるようなことが生じるだろう。

 このような事態においては、企業の経営効率や自助努力の問題ではなく、世界的、全人類的な問題がある局面に集中的に被害を及ぼしているにすぎないから、公的な援助、十分な資金供給が必要だ。個々の企業を救うことが、社会全体の崩落を救うことになる。

 

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(出典:厚生労働省HP) 

 新規感染者の推移を見ると、1日1500件を超えるような状況からは幾分下がってはいるが、それでも、4月の緊急事態宣言が発令されている頃のピークを上回る数字となっている。今後、感染者数の再びの急増も考えられ、これから秋、冬を迎えることから、一層の警戒、備えが必要であろう。

 8月28日現在で世界の感染者数の累計は2445万人、死者は83万人である。アメリカ、ブラジル、インド等では勢いが衰えることなく直線的に感染者が拡大している。フランスやスペインなどヨーロッパ諸国では、いったん感染が収束したが、活動再開に伴って再び拡大の様相と示している。これから北半球では秋、冬を迎え、爆発的な感染が生じないか心配だ。

新型コロナウイルス禍の下での関西3空港の状況(2)

 関西エアポートが2020年7月の関西3空港の利用状況を発表した。

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(出典:関西エアポートのプレス資料から作成)

 

 旅客数は前年比で、関西空港(国際線)は△99.6%、関西空港(国内線)は△69%、伊丹空港が△43%、神戸空港が△61%となっており、減少幅は、関西空港(国際線)<関西空港(国内線)<神戸空港伊丹空港の順になっている。

 発着回数をみると、次のとおりである。

 伊丹空港 6,831回(前年比△43%)

 関西空港 2,374回( 〃 △46%)

 神戸空港 2,195回( 〃 △15%)

 これをみると、神戸空港の発着回数が△15%と、減少幅が小さいことがわかる。これは、他の空港に比べて便数が復元されていることを表している。しかし、旅客数は△

61%と乗客数はそれと比例して復元していないので、搭乗率がかなり低くなっているようだ。しかし、神戸空港に拠点を置く航空会社が積極的に回復に努めていることはうかがわれ、国内の感染状況が落ち着きを取り戻せば、すみやかな旅客数の復活につながのではないだろうか。