神戸の観光戦略について(神戸を拠点とする滞在・周遊型観光の提案)

 神戸って乗り換え便利!

 とにかく便利!アクセス抜群!神戸三宮からならどこへでも行けちゃう!おしゃれな神戸を満喫して関西を旅しよう!

 

(日本交通株式会社 高速バス の広告用リーフレット

 

 

 

 神戸の観光振興、観光客の誘致を促進する方策を考えてみた。

 一般に、ある都市における観光振興といえば、その都市にある観光資源を発掘、整備することと考えられるが、少し視点を変えて考えてみたい。題して、神戸市を拠点とする「滞在・周遊型観光」と名付けてみた。

 神戸は関西圏の一角にあり、周囲には我が国を代表する観光地がひしめき合う、おそらく国内最大の観光資源が集積する地域に位置する。周囲があまりにも強力な観光地に囲まれているため、神戸は、(神戸もすばらしい観光地であるとは思うが、)観光地としてはどうしても影が薄くなってしまう。このモデルは、神戸を関西圏あるいは我が国の一大観光拠点とすることを柱としている。

 すなわち、神戸に長期宿泊、すなわち「滞在」して、周囲にある観光地を巡る「周遊」を行う観光モデルである。神戸はそうした、「滞在」し、周囲の観光地を「周遊」するに最適な都市であると考える。なぜ、そのように考えるかというと、理由はいくつか挙げられる。


(1)神戸を中心に、1~2時間以内にきわめて強力な観光資源が集中している。京都、奈良などの古都、姫路城や彦根城、琵琶湖・竹生島等の国宝、USJ、天橋立、宮島(厳島神社)と、日本三景のうち二つまでが日帰り観光可能だ。神戸はこれらの観光地から中心地的な場所に位置している。(つまり、どこに行くにも便利な場所である。)

30分:大阪、明石、有馬(日本三名泉)
60分:京都、滋賀、姫路、淡路、岡山*
90分:奈良、福知山、広島*、名古屋*
120分:鳴門(渦潮、大塚国際美術館)、舞鶴、岩国(錦帯橋)*
150分:天橋立日本三景
180分:宮島(日本三景)*

 * は新幹線利用の場合

(2)実際に、神戸市民はこれらの観光地を観光するときは、まず、宿泊することはなく、日帰りで行くことが一般的だ。宿泊の必要性を感じることがないからだ。

(3)これを可能としているのは、神戸の交通の便が極めてよいからだ。JR神戸線京都線が一本で結ばれており、姫路から米原までが、新快速電車で高速かつ多頻度で結ばれている。阪急、阪神近鉄などの私鉄も三宮に乗り入れている。東京から鹿児島までが一本で連なる新幹線の新神戸駅にはすべての列車が停車する。そして、長距離バスの路線が西日本の主要都市とを結んでいる。現在、三宮に西日本最大級のバスターミナル(バスタ三宮)が整備されているが、これが完成すると、あらゆる方面のバスがすべて1か所から乗車できるため、わかりやすく、迷わず、きわめて便利である。

(4)関西圏、西日本には膨大な観光資源がひしめきあっているがため、とても1日や2日で見て回ることが難しい。遠方から何度も訪問することを考えると、こうした滞在・周遊型の観光は経済的にも合理性がある。

(5)京都や大阪はすでに観光地としても飽和状態であり、そこから少し距離がある、混雑の少ない、開放的で風光明媚な神戸で宿泊することは十分に合理的だ。混雑して宿泊費が高騰するそれらの都市と比べて、宿泊費用の点からも合理性がある。

(6)神戸(三宮)は、時刻表を意識する必要がほとんどない都市である。なぜならば、列車はほとんど待ち時間なしに次々とやって来るからだ。そのため、神戸には、「思いついたら」「時間ができたら」、すぐに出発できる自由さがある。この自由度も、神戸を滞在・周遊型観光の拠点とすることにふさわしい条件だ。

 

 このように、これまで、神戸が大阪や京都に近いため、日帰りで十分と言われていた条件を逆手にとり、神戸を関西圏、西日本の周遊観光のための拠点とする構想である。

 たとえば、関東や東北、北海道などの東日本の人たちが、関西圏、中国四国地方を周遊しようと思えば、神戸に宿泊し、連泊して大きな荷物はホテルに置いたまま、毎日、公共交通機関を使って、自由に気の向くままに周囲の観光地を巡ることができる。朝に出発し、半日行先の観光地を巡り、夜には神戸に戻って宿泊する。場合によれば、夜の神戸の街で神戸ビーフや中華料理、世界の料理を食べ、港を散策し、美しい夜景を楽しむのもよいだろう。翌朝には、神戸の街角の喫茶店でおいしいパンや珈琲、紅茶などの朝食を楽しむこともできる。考えてみれば、これらは神戸市民が日常的に享受している利便性そのものなのだ。

 期間は、2泊の連泊から、望めるなら5日、可能であれば1週間から2週間滞在すると、上記の観光地はおおよそ制覇することができるだろう。

 日程が長期になれば、中日(なかび)を設けて、神戸の市街地で散策したり、買い物したり、六甲や須磨など市内の観光地をめぐるのもよいだろう。

 こうしたスタイルの観光は、スケジュールの比較的自由がきく、学生やシニア層に適しているだろう。しかし、国内の観光客だけでなく、実は海外の観光客にこそ適合的であると考えられる。というのは、海外の観光客は長期の旅行日程を組んで来日する例が多いからだ。荷物も多く、1か所に長期滞在して観光するのは合理性がある。また、来日すること自体、時間もかかり、費用も高額になる。そうそう度々やって来ることも困難であるから、一度にあちらこちらを周遊することは合理的だ。外国人の観光客であれば、滞在中に、六甲山の早朝登山なども、人気があるかもしれない。

 神戸は外国人観光客、特に欧米の観光客に魅力がないといわれるが、海外旅行の魅力は観光地を見ることだけではない。それと同等、それ以上に、その国の日常の生活、文化を体験することも大きな楽しみのはずだ。神戸は日本の縮図といわれるほど多様性に富み、風光明媚で、明るく開放的で、また世界の食文化が集まる都市であり、日常品からブランド品まですべての買い物に対応でき、外国人にとって滞在するにきわめて便利な土地であるといえる。

 そのような神戸の属性は偶然ではなく、神戸が外国人を受け入れてきた都市であり、それこそが神戸を外国人が好んで定住をしてきた理由なのだろう。そうした歴史的な痕跡として、北野の異人館街がある。自分たちの先祖がはるか海をわたってきて、街を開き、定住し、文化を根付かせたという、歴史を物語る記念碑という位置づけを与えることができるだろう。その「祖先の歴史をたどる旅」、「異邦人の愛した神戸」という大きなテーマが成立しうるのではないか。このテーマの下に神戸への滞在・周遊モデルを普及させてはどうか。

 国内の観光客には、「おしゃれな神戸に住む体験」、これまで神戸を訪れた様々な人々のような「異邦人となる体験」を提供するという切り口もあるかもしれない。

 

 もしも、この滞在・周遊型モデルが普及し、神戸が関西地方、西日本の周遊拠点と認識されるようになるなら、神戸の宿泊需要が爆発的に増加することになるだろう。この宿泊需要の受け皿になるのは、三ノ宮駅から新神戸駅の間の地域が適地であろう。先日も、加納町の交差点の南東の空地に大規模なホテルチェーンが進出する計画が発表されたが、まさにそのさきがけといえるだろう。しかし、それだけでもまだ十分ではなく、こうしたホテルがもっと供給される必要がある。そうした方向性の下に新神戸駅周辺も再開発をすすめるとよいだろう。

 

 この構想の実現にあたっては、神戸を関西地方、西日本における滞在・周遊の拠点と認識してもらう必要がある。それには、やはり民間の事業者によるPR、たとえばホテル事業者や、旅行業者、交通事業者によるキャンペーンは重要だろう。

 

 このモデルを普及するには、旅行雑誌やインターネット動画等に、「関西の効率的な巡り方」という視点で記事にしてもらうのは有効ではないか。(従来、旅行雑誌が都市別、府県別になっていることが多かった。他の地方の人が思う以上に、関西圏の各都市は強い個別性を保ちつつ、関西圏として緊密に連携している。)

 また、旅行業者と連携して、神戸で一定以上の連泊をした場合に、なんらかの特典(地場産品のプレゼントなど)のインセンティブを設けることも考えられるかもしれない。

 

 

 滞在型の旅行になれば、これまで日程上カバーすることができなかった、小規模だが価値の高い観光資源にも脚光が当たることになる効果も考えられる。滞在日数が少なければ、どうしてもその地域を代表する観光資源が選択され、ある意味、定型化した表面を撫でるような観光スタイルとなってしまう。滞在型であれば、より幅広く、深い観光を行うことが可能となるはずだ。