パラダ号の少年実習生

 2017年7月、神戸港で開港150年を記念する「海フェスタ神戸」が開催された。その中のイベントとして「帆船フェスティバル」が神戸港メリケンパーク周辺で開催された。今からちょうど6年前のことである。

 帆船フェスティバルには、「日本丸」、「海王丸」などの日本の帆船の他、外国の帆船も参加し、何隻もの帆船が帆柱を連ねる光景は壮観であった。

 日本丸海王丸は新港第1突堤に、新港第2突堤にはロシアの帆船「パラダ号」が停泊していた。パラダ号は3本マストの大型帆船で、黒い船体に白のストライプが入り、船首や船尾には金色のクラシカルな装飾が施され、その船体はひときわ目を引いた。近くに行くと、見物に訪れた大勢の市民が周囲を囲んでいた。ちょうど、船員たちがマストに上って帆を広げる実技を見せようとしているところだった。高いマストを危なげもなく、するすると上り、手際よく白い帆を広げていく船員の姿を、見物の市民たちは興味深そうに眺めていた。

 

 

 

 船内は一般開放され、若い異国の船員たちが市民と一緒に撮影に応じたり、互いに手を振り合ったり、友好的なムードであった。その中で、他の乗員よりも一際若く、まだ子供のような少年の実習生が、船上でバラライカを演奏して聞かせてくれたことが印象に残っている。

 

 

 あの時の若い船員たちは今どうしているのだろうか。彼らが戦火の照準の先にいないことを祈りたい。