新神戸駅の大改造

 神戸空港の国際化が決まり、神戸空港の旅客ターミナルの大幅な拡張計画が打ち出されている。神戸空港の年間利用者数は、規制緩和前でも320万人に達しており、規制緩和後は、国内線510万人、国際線190万人で、合計700万人が見込まれている。

 一方、新神戸駅の乗車人員は、神戸市の統計(神戸市統計書)によれば、2018年度には年間360万人に達しており、神戸空港を上回る利用客数になっている。神戸空港のターミナルは、時間帯によっては大混雑が発生しており、利用客数がそれを上回る新神戸駅も同様の様相を呈しているものと思われる。

 新神戸駅はもともとターミナル駅として設置されたものではなく、当初は通過列車もあるひっそりとした駅だった。追い越し線もない上り下りの2本の線路を両側から挟む形に作られたホームの下部に作られた駅舎は、そもそも非常に狭かった。しかし、明石海峡大橋の開通後、淡路や四国からの新幹線乗り継ぎ駅の役割を帯び始めた。2006年に神戸空港が開港、新神戸駅には全列車が停車することになり、2011年の九州新幹線の全線開通も加わり、年々利用客が増加する状況となってきた。近年、JR西日本が駅中の活用として、ぎりぎりまで通路部分を削って商業スペースを確保するようになったため、新神戸駅は一層手狭に感じられるようになった。現状では、土産物売り場の他は、飲食店なども少なく、旅行者にとってはあまり快適な場所とは言えない。

 



 今後、国際化される神戸空港が、本格的な国際空港として発展し、新神戸駅と三宮、神戸空港を結ぶ中央軸が整備されると、この2大長距離交通拠点を車の両輪として、両者が緊密に連携し合い、新神戸駅は西日本の交通の一大中心地として発展していくことになるだろう。とすると、「国際空港に最も近い新幹線駅」「西日本の交通の一大中心地」となる新神戸駅は、現在のままの姿で十分なのだろうか。今後の発展に備え、新神戸駅の機能向上、できれば面目を一新するような大改造を行ってほしいものだ。

 

 筆者は、新神戸、三宮、神戸空港を結ぶ交通機関として、ポートライナーの新線建設を提案している。このポートライナー新線は、三宮方面から東に進み、生田川沿いを北上し、新神戸駅とは垂直の方向に接続すると想定する。ポートライナー新神戸駅は、できる限り新幹線新神戸駅に近接する場所に設置し、新幹線新神戸駅の改札階と同じ高さにその改札口が設けられることが望ましい。つまり、新幹線の改札を抜けると、そのまま水平移動でポートライナー新神戸駅の改札口に到達できる状態が理想だ。

 これを前提として、新神戸駅の大改造プランを考えてみよう。

 やはり現在の新神戸駅は、あまりに手狭である。通路部分や待合スペースなどは、少なくとも現在の数倍の広さがほしい。そして、利用者の利便性を高める飲食店や土産物などの商業施設をもっと充実させてほしい。新神戸駅は、「国際空港に最も近い新幹線駅」「国際空港と直結する新幹線駅」として、今後は西日本の玄関口となることを前提に、土産物は、神戸だけではなく、兵庫県下、近畿地方全般の品物を取りそろえるのがよいだろう。また、神戸空港との乗り継ぎ客用のホテルも必要となってくるだろう。

 そのように考えていくと、現在の規模では到底収まらないから、駅舎そのものを大幅に拡張する必要があるだろう。その場合、背後は山であるため、前(南側)にせり出すしかない。となると、現在のロータリー部分に敷地を求めることになるだろう。そうなれば、現在のロータリーや自動車の走行路部分の移設や改造が必要となってくるだろう。

 今すぐにできないとしても、このまま無計画に、場当たり的に施設を作ってしまうと、後々に計画余地がなくなってしまい、JR三ノ宮駅の二の舞となってしまう。だから、せめて、将来的な姿を視野に入れて長期的なプランを早急に検討する必要がある。

 

 以上のような見地から、今進められている新神戸駅前広場再整備を見直してみると、このような長期的な視点が全く欠けているように思える。シンボル空間やシンボルの設置は、第一の優先課題ではないだろう。

 

(出典:「新神戸駅前広場再整備の進め方」神戸市記者資料提供 令和3年9月29日) 

 

 

 思えば、新神戸駅は、ユニークな神戸という都市の中でも、とびきりユニークな駅だ。六甲山系の尾根と尾根の間の谷筋の、トンネルとトンネルの間にあって、新生田川を跨ぎ、駅の真下には清流が流れ、背後にはすぐ山がせまり、登山ルートがあって、途中には布引の滝などがある。そして、南を臨むと、新生田川がまっすぐに伸び、遮るものなく、その先には空と海が広がっている。まるで神戸の地理を凝縮したような駅だ。このような駅は他にはない。だからこそ、新神戸駅に殊更シンボルやモニュメントは要らない。この地、この駅の形こそ、神戸らしいのだ。モニュメントの設置は、少なくとも第一番の課題ではない。

 

 このように、新神戸駅の機能面を改善することにより、乗降客が増え、駅周辺の賑わいが増えるだろう。そうすれば、これまで光が当たらなかった、新神戸駅南西の大型商業施設にも活用の目が出てくるだろう。それは、イベントの実施による一過性の賑わいとは異なるものだ。