神戸空港へのバス輸送力向上 市、20年度着手へ

 神戸空港へのアクセスを強化するため、神戸市は2020年度、道路拡幅やバスの利便性向上などで輸送力増強に着手する。三宮などの都心部と空港をつなぐ路線バスを大幅増便するとともに、ポートアイランド島内と市街地をつなぐ一部路線で無料化を検討。将来は、連節バスによる大量輸送を可能とし、専用レーンや優先信号などを備えるバス高速輸送システム(BRT)の導入を視野に入れる。

神戸新聞2020/1/5)

 1月5日の神戸新聞で、神戸空港へのアクセスを強化するため、神戸市が2020年度、道路拡幅やバスの利便性向上などで輸送力増強に着手すると報じられた。

 内容は、次の4つである。

(1)新神戸駅付近と空港方面を直結する都市計画道路「生田川右岸線の車線拡幅工事に着手。将来的にはBRTの導入を検討する。さらに港島トンネルの延伸も検討。

(2)ポートアイランドの企業や大学の通勤・通学時間が重なる午前7時半~9時台に、三宮-神戸空港間の路線バスを20分間隔から10分間隔に増便。5年後には5分間隔まで増やす方針。

(3)中央市民病院利用者のバス運賃無料化を検討。JR神戸駅前から同病院まで10分間隔で運行する社会実験を1月中旬から始める。

(4)神戸空港島とポートアイランドを結ぶ連絡橋「神戸スカイブリッジ」の車線を、片側2車線に拡幅。

 そもそもの問題は、神戸空港のアクセスであるポートライナーの混雑が慢性化しており、神戸空港の今後の規制緩和、国際化に対して、アクセスの増強を求められていることである。今回の4つの施策により、問題が解決するのだろうか。この中で、ポートライナーの混雑緩和に直接関係があるのは、(2)の三宮ー神戸空港間の路線バスの増便と(3)の中央市民病院利用者のバス運賃無料化の2つだけだ。(1)のBRTは将来的な検討にすぎない。

 では、この施策によって、どれだけの効果があるのだろうか。

 三宮-神戸空港間の路線バスを10分間隔に増便するということは、1時間で6本ということになり、バスの定員を50人とすると1時間あたり最大300人ということになる。ポートライナーは1時間に最大で30本の運行が可能で、1編成で定員が300人(50人×6両)とすると、1時間で9000人が定員ということになる。これがラッシュ時には混雑率が160%になるというのが現在の状況だ。今回の増便の1時間300人は、ポートライナーの1時間9000人のわずか3.3%にすぎない。仮に5分間隔で1時間12本運行しても輸送力は600人で、6.6%にすぎない。これでは、混雑率が幾分減少するだけの効果しかない。ラッシュ時間帯には空港へはポートライナーは使用せずに、バスでアクセスしようということなのだろうか。これは、神戸空港へのアクセス増強と言えるのだろうか。

 中央市民病院利用者のバス運賃無料化も、ラッシュ時間帯だけ無料化することになり、公平性に欠ける。

 このように考えると、今回の一連の施策は求められている課題の根本的な解決になっておらず、対策を講じているという姿勢を示すだけのことだ。

 神戸空港へのアクセス増強問題は、単に神戸空港だけの問題ではなく、ポートアイランドの利便性向上、利用価値の向上、ひいては神戸市の発展につながることだ。市は対症療法ばかり考えているが、もっと前向きな考えで交通体系を構想するつもりはないのだろうか。神戸の成長のエンジンとして、神戸空港の今後の大発展が見込まれる中で、現在のポートライナーがそれを支える交通機関としては不十分であることは誰の目にも明らかだろう。仮に新しいインフラを構築するにしても実現までに長期間を要するのは間違いないから、今すぐにできることを考える必要はある。だからと言って、対症療法だけしか行わないのであれば、結局は、問題を先送りしていることと同じではないだろうか。実現に時間がかかるからこそ、早期に将来の構想を示すべきだ。

 今春開催が予定されている3空港懇談会の座長の松本関経連会長は、神戸新聞社のインタビュー(2020/1/1)で「空港設備やアクセスの充実で地元の努力に期待している」と述べている。今回の神戸市の施策はどのように評価されるのだろうか。