ポートライナー輸送力増強について新展開か 神戸市長会見(2020年1月29日)

 1月29日に開かれた神戸市長定例会見で記者から、昨年5月の3空港懇談会の規制緩和に基づく、神戸空港の夜11時までの運用時間の延長開始と制限枠の80便がすべて使われることになったことについての所感と、今後の方針について質問があった。

神戸市:定例会見 2020年(令和2年)1月29日

 

 久元市長は、3空港懇談会の規制緩和に対応して、国土交通省管制官を増員し、関係航空会社各社が増便や10時台の便を開設したことについて、大変ありがたいことであると感謝の意を表明し、「予想以上に規制緩和の効果が発現できた」との所感を述べた。

 今後の対応として、神戸空港は「これからも間違いなく利活用が進んでいく」ことから、アクセスの改善について、短期的課題、中長期的課題として考えていかなければならないと延べた。

 「ポートライナーの輸送力は、今後利活用が進んでもトータルとしてみれば対応できる」と考えているという認識を示す一方、短期的な対応として朝の8時台の混雑をいかに緩和するかとして、今月(1月)からの中央市民病院行きの無料バス運行開始、混雑時間帯の運賃をできれば無料にしてバスの方に誘導することができないか、そのような短期的な対応を考えていきたいと述べた。

 長期的には、港島トンネルの北進や新神戸トンネルの延伸については、国土交通省にも要望して、かなり理解を示してもらっている、あわせて生田川右岸線の整備によって道路交通の整備を行うと述べた。

 さらに、課題となっているポートライナーの輸送力の増強ということについて、いろんな課題があり、「もう少し時間をいただければ」と述べた。

 

 上記に対するコメントを述べる。

(1)神戸空港の利活用がこれからも間違いなく進んでいくという見解については同意するが、「ポートライナーの輸送力は今後利活用が進んでもトータルとしてみれば対応できる」という点については異論がある。1日単位で見ると、ポートライナーの実際の利用者数が輸送能力(1編成の定員×1日の運行本数)の枠内であることは間違いないだろう。しかし、それはポートライナーの輸送力が十分であるということを意味しているのだろうか。たとえば遊園地の乗り物で、30分待ち、1時間待ちというのは普通にあることだが、通常の交通機関として日常的に乗客の積み残しをすることは正常といえるだろうか。ポートライナーの現状は、混雑時間帯では、160%の混雑となり、乗客はそれでも乗り切れず、何本か列車を乗り過ごし、ようやく乗車をしているのだと考えられる。それは、時間通りに乗客を輸送する役割の公共交通機関としては、改善を図らなければならない状態というべきではないだろうか。また、空港利用者の乗り心地はどうだろうか。関経連の松本会長からは、「インバウンドに不快感を与えてはならない」と指摘されている。「ポートライナーの輸送力はトータルとしてみれば対応できる」というのは妥当ではない。そして、こうした状態は、神戸空港のさらなる利活用やポートアイランドへの企業進出を妨げるのではないだろうか。

(2)港島トンネルの北進、新神戸トンネルの延伸、生田川右岸線の整備は、将来を見越して行うべきであろうが、現在問題になっているのは、公共交通機関でアクセスの混雑、ポートライナーの混雑の問題であるから、その解決策とはいえない。

(3)混雑時間帯について、無料のバスを走らせて、乗客をバスに誘導して、混雑を緩和しようというのは、正常なあり方ではない。そもそも、バスの輸送能力はきわめて小さい。

(4)最後に、久元市長から、ポートライナーの輸送力の増強について、「もう少し時間をいただければ」という発言があった。これは注目すべき発言だ。「もう少し」を強調したその口ぶりから、ポートライナーの輸送力増強については、水面下で何らかの進展が生じており、あと少しの時間で公表ができるという段階に至っているのではないかと推測する。何のあてもなく、述べられた発言とは思われない。その内容が何かはわからないが、なんらかの動きがあるのは間違いないのではないだろうか。