兵庫県立兵庫津ミュージアム・初代県庁館がオープン

 11月3日、初代兵庫県庁を復元した「兵庫県立兵庫津ミュージアム・初代県庁館」(神戸市兵庫区中之島2)がオープンしたと聞き、出かけてみた。

 

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 現地に来てみると、人気がない様子を想像していたが、行列するほどではないが、途切れなく人が訪れ、建物の規模がそれほど大きくないこともあって、意外に賑わっている印象だ。

 この施設については、正直、あまり期待を持っていなかったが、当時の県庁の姿が細部に至るまで忠実に復元されており、意外に興味深く、十分に楽しむことができた。初代の兵庫県知事は、かつての千円札で有名な初代内閣総理大臣伊藤博文であることはよく知られているところであるが、その初代知事の執務室(といっても、比較的こじんまりとした座敷に机と椅子を置いただけだが)や、風呂や炊事場、厠まで忠実に復元されており、当時の様子が生々しく再現されている。建物の周りには、庭園、白州(しらす)や仮牢、井戸と、徹底した復元ぶりで、まるで時代劇のセットに入り込んだようだ。

 昔の建築物を復元することはよくあるが、最近の尼崎城のように外観のみの復元ということも多い。この初代兵庫県庁館は、外観だけではなく、内部の復元も重視しており、建物だけではなく、そこで繰り広げられた当時の人々の息吹をよみがえらせようという思いが伝わってくるようだ。

 建物自体に文化財的な価値があるものではないが、建物を忠実に復元することは当時の人々の姿や生活を再現することでもあり、そうした目的のために建物を再現するということは意味のあることだと思われる。

 同ミュージアムは現在建設の途中であり、先行して初代県庁館のみが完成し、オープンした。隣接地には「ひょうごはじまり館」が建設中で、来年の下期に全体計画の完成ということだ。全体が完成し、社会全体のコロナウイルス禍が落ち着けば、人気施設として多くの人が訪れることになるのではないだろうか。

 場所は、兵庫のイオンモール神戸南の隣接地で、その向かいには中央卸売市場があり、これらが一体となって神戸の観光の核の一つとなることが期待される。

 周辺には、清盛塚や能福寺大仏などの観光名所がある。ミュージアムには、ぜひとも兵庫津や福原京などを整備した平清盛および平氏一門に関する展示を行ってほしい。平清盛は兵庫に拠点を定め、兵庫津に経ヶ島を建設し、ごく短期間ではあるが福原に都を遷した、神戸、兵庫の恩人ともいうべき人物だ。平清盛は瀬戸内航路を整備し、日宋貿易を盛んにし、宋銭を輸入し、貨幣経済化を推進するなど我が国の発展に大きな足跡を残した。厳島神社の造営も忘れることができない。歴史上、天下の権力を手中にする者は多いが、その権力を用いて何事かを成した者は少ない。平清盛はそうした数少ない人物の一人であり、歴史上の偉人としてもっと顕彰されるべき人物だろう。その偉大な足跡を顕彰するに、兵庫の地ほどふさわしい場所はない。現在建設中のミュージアムはぜひそのような平清盛顕彰のためのミュージアムとなることを期待したい。