新型肺炎の流行について(32)

 国内での新型コロナウイルス感染症の新規発生者数は増加の一途をたどり、1日の発生件数は1500件を超え、4月のピーク時の件数をはるかに超える状況となってしまった。あれだけ高く見えた4月のピークも、今や小さな波にしか見えない。感染の再拡大は、当初、一部の地域に限られていたが、次第に広がりを見せ、感染者の年齢層、属性も拡散し、身近にも感染のニュースが聞かれるようになり、再び厳重な警戒が必要な状況に至った。

 

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(出典:厚生労働省HP)

 

 

 

  新型コロナウイルスの感染拡大防止対策はどうあるべきかを考えてみる。

 筆者の考え方は、感染防止対策と社会経済活動の並立策である。感染防止対策は、一律の全面的な社会活動の停止は行うべきではない。新型コロナウイルス感染症は基本的には飛沫感染接触感染であるから、マスクにより飛沫の拡散を防止し、口や鼻を覆うことによって接触を防止すれば、100%とはいかないだろうが、感染リスクを大幅に軽減することは可能であると考える。その上で、人的距離の確保、換気の徹底なども合わせて行えば、少なくとも感染倍率を1より下げることができるだろう。

 しかし、これを原理的に行えない場面がある。それは、マスクを外し近接して同じ場所で長時間を同席する会食の場やいわゆる接待を伴う飲食店などである。これらは、営業者には気の毒であるが、閉鎖をせざるを得ないのではないか。その代わりにいくらかの休業補償を行うべきだろう。これまでの状況をみると、通勤電車や、オフィスでの業務などは、それほど大規模な感染は発生していないように思われる。昼食にしても、一人一人がカウンターで短時間に食事を済ませる程度であれば、それほど危険だとは思われない。

 理屈の上では、社会経済活動を完全に止めれば感染拡大は防止できるのだろうが、もしそうすれば、生活に必要な商品の生産、物流、流通が止まってしまうので、社会が維持できなくなってしまう。だから、全部門の全面的な活動停止はするべきではない。感染のリスクが高く、社会の維持に必須といえないような部門に限って活動を停止させるべきだ。このたびの感染の再拡大も、そうした整理をしないままに、全部門の規制を解き放ったから生じた事態だと考えられる。すべての人が自発的に自粛ができるなら規制を行う必要はないが、必要な自粛ができない人々が一定数いることが明らかになっている。したがって、強制的な活動停止措置が、社会の維持のためには必要となる。つまり、法的な規制が必要となる。それらの規制は社会全体の維持のために必要な規制なので、規制に伴う経済的保障は社会全体のコストとして負担されるべきだ。そして、それらは国会が責任をもって処理すべき問題だ。

 そのように、一部の部門に限って活動を停止させても、社会全体の活動を停止することと比べると比較にならない程の安いコストですむはずだ。この度の政府の一連の動きを見ていると、早く処置をすれば問題が小さいのに、そのわずかなコストを惜しむがために対策が後手に回り、ウイルスの感染拡大を許してしまい、最後には社会全体の活動の制限に追い込まれて、結果的に社会全体に莫大な経済的被害を引き起こしているように感じられる。

 上のグラフを見ると、8月の感染者数は、著しい数値を示すことが懸念される。ここまで感染が広まってしまうと、再度の全面的な活動停止もやむを得ないかもしれない。8月は、幸いなことに児童、学生は夏休みであるし、企業もお盆休みに入る。この機会を捉えて、1週間、できれば2週間程度の活動休止期間を設けるべきではないだろうか。それにより一旦感染者の発生を抑え、その上で、上述のような、部分的な強制的活動停止措置を行うのがよいのではないかと考える。

 

 

 経済への影響は、いよいよ目に見えて深刻さを増してきた。

 政府は物価変動の影響を除いた2020年度の実質国内総生産GDP)の成長率をマイナス4%台半ばとする見通しをまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、年初に閣議決定した見通し(プラス1.4%)から大幅に下方修正する。リーマン・ショックのあった08年度の実績(マイナス3.4%)を超える落ち込みを予想する。

日本経済新聞 2020/7/29)

 

 

 米商務省が30日発表した第2・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比32.9%減と、統計の記録を開始した1947年以来最も大きな落ち込みとなった。

 新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)により個人消費や企業支出が大幅に低迷した。新型コロナの感染件数が再び増えていることで、始まったばかりの経済回復も脅威にさらされている。(略)

 第2・四半期GDPは、これまでの最大の落ち込みだった1958年第2・四半期の10%減と比べ、3倍以上の減少幅となった。第1・四半期GDPは年率で5.0%減だった。

 第2・四半期GDPは、これまでの最大の落ち込みだった1958年第2・四半期の10%減と比べ、3倍以上の減少幅となった。第1・四半期GDPは年率で5.0%減だった。

朝日新聞 2020/7/31)

 

  アメリカにおいては、第2・四半期の実質国内総生産速報値が、年率換算32.9%減という、驚くべき値となった。このまま、経済的な対策がとられなければ、世界経済は重大な危機に見舞われるだろう。

 

  世界全体を見ると、7月31日現在で、感染者数は1729万人(1551万人)、死亡者は67万人(66万人)となっている。この1週間で感染者は178万人(171万人)増加している。累積感染者の推移を示すグラフは右肩上がりで、ゆるやかに上方に反った形状である。(( )内は7月24日現在)