新型肺炎の流行について(33)

 雇用を維持した企業を支援する「雇用調整助成金」について、今年3月以降で新型コロナウイルスによる休業を対象とした支給決定額が7日時点で計約7399億円となり、リーマン・ショックの影響をうけた2009年度1年分の支給額を約5カ月で上回った。休業者が4月に過去最多となったことなどが背景にあるとみられる。

 厚生労働省が12日、明らかにした。労働基準法では、企業の都合で従業員を休ませた場合、休業手当を支払う義務がある。雇用調整助成金はこの費用の一部を国が支援するものだ。

朝日新聞 2020/8/12)

 

 新型コロナウイルスによる休業を対象とした「雇用調整助成金」の支給決定額が、2020年3月から8月7日までの5ヶ月で、リーマン・ショックの影響をうけた2009年度1年分の支給額を上回った。

 リーマンショックは、海外の一部の金融企業の巨大損失から始まって、その金融不安から実体経済の縮小を引き起こし、次第に影響が裾野に広がっていったという展開であったが、今回は、まず、裾野の方から火がついて、次第に中心部に火勢が及んでいく展開だ。そのため、経済的な影響が見えにくく、被害の様相がつかみにくい。しかし、この記事が伝えるように、実体経済への影響は、リーマンショック時をはるかに超える状況となっているということだ。

 雇用調整助成金は、企業の従業員に対する休業補償を公的に肩代わりするものであり、従業員の生活を保障する上で欠かせない制度だ。7399億円は巨額ではあるが、考えようによれば、これだけの経済的な自粛があった中でこの程度の額に納まっているのは安いようにも思える。たとえば、gotoキャンペーンの予算は1.7兆円、1人10万円の特別定額給付金は12兆8800億円にも及ぶ。

 ここでお金を惜しんではいけない。お金を惜しむことは、企業の倒産、大量の失業の発生につながり、不良債権の発生、それまで影響のなかった企業の経営悪化、その結果として、さらなる経済の縮小という悪循環を生み、それに対する施策のコストは、はるかに大きなものになるだろう。