今般のコロナウイルス感染症の経済に及ぼす影響について、今後の展開を見通すことは非常に困難である。
我が国の感染拡大はいったん落ち着き、今後、営業活動等も順次再開をしていくだろうと思われるが、引き続き、不要不急の外出、営業や出勤の自粛、いわゆる「新しい生活スタイル」が求められており、完全な回復には相当の長期間を要するのではないだろうか。
現在、人々の目に見えている、飲食店や観光関連産業の苦境とは別に、まだまだ表面には表れていない影響がこれから次第に明らかになってくるだろう。今後、各主体は、需要の減退、資金繰りの悪化を予想して、体制の縮小、投資計画の削減を行うだろう。それは、さらなる需要の減退を引き起こし、経済全体に負の影響を及ぼしていく。国内ばかりではなく、海外の経済状況も予断を許さない。
一般に、人は現在の傾向の延長線上でものごとを判断する性質がある。各主体が先を予想し、合理的に判断すると、どうしても一方向に動きが集中しがちだ。いったんなんらかのインパクトが生じると、経済活動の動態は、一方向に累積的に進行する傾向がある。そうした、各主体の合理的判断にあらがって、逆向きの行動を起こすのが政府の役割だ。政府は現在の状況だけではなく、先を見通して、経済活動の安定回復のための措置を講じてゆくべきである。今回のインパクトは、リーマンショックを超え、世界大恐慌と比べられるような事態なので、平時の常識を超えて大胆な対策をとる必要があるだろう。
現在、新型コロナウイルス感染症の影響は、飲食店など一部の業種に偏在しているように見られる。その他の業種の人々の多くは、自粛やテレワークなどを強いられているものの、さほどの深刻さはなく、いわば「対岸の火事」になっているのではないだろうか。しかし、これが本当に対岸の火事で収まるのかどうかは、警戒が必要だろう。
対岸の火事というと関東大震災の悲劇を想起する。地震の第一撃を逃れた人々は、最初はまさに対岸の小さな火事を安全なところから物見見物のように眺めていた。ところが、その火は次第に大きくなり、小さな炎はやがて一つに合わさって巨大の炎となり、ついには火災旋風となって町を蹂躙し始めた。炎は川をも飛び越え、町全体を炎が飲み込んでいった。すべてを焼き尽くすまで・・・。そのようなことにならないよう、十分な警戒、早目の対策が必要だ。
今般の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策を、神戸市がホームページに公表している。
特別定額給付金(一人10万円)、中小企業等への家賃補助(家賃減額を行った家主に対して、減額分の8/10を補助、4月、5月の2ヶ月を対象、最大200万円(検討中))以外は、貸付けや徴収の猶予など、基本的には、本人が負債を負う形態だ。
しかし、現時点ではそうであるにしても、最終的には、助成や免除など、公的に負担することが必要だろう。というのは、これだけの規模の大災害であるし、これを一個人、一事業者にすべて負担をさせることは適当ではないからである。例えば、固定資産税の徴収を1年間猶予したとして、来年度に2年分の税を払うことは可能であろうか。
では、こうした免除の負担は誰が負うべきだろうか。地方自治体にしても社会の1プレイヤーにすぎないから財政のバランスを考慮せざるを得ず、最終的には、社会のアンカーたる中央政府が最終的な負担者となるべきだろう。