新副市長が就任会見

 13日付で神戸市の新しい副市長として今西正男氏が就任し、同日、記者会見を開いた。今西氏は、神戸市の生え抜きで、いわゆる財務畑で阪神淡路大震災のときは財務課の係長、直近では医療・新産業本部で企業誘致やスタートアップ支援、神戸医療産業都市などを担当したという。
 その会見の内容が神戸経済ニュース(2020/7/14)に報じられている。
 
 今の神戸市の課題はという質問に対して、「歴史的にみて、交通の結節点が都市として発展した。神戸は昔からの交通の結節点ではなく、開港によって人工的に交通の結節点になることにより発展してきた。歴代の市長は、明石海峡大橋のように新たな道を作って神戸を交通の結節点にしようと努めてきた」、「神戸は発展に向けて動き続けないと、常に衰退する可能性がある」、「空港を交通の次の拠点と考え力を入れているが、神戸空港が国際化されておらず、可能性が十分に活かされていない」と述べた。
 将来に向けた投資についての考え方、組織のスリム化についてはという質問に対して、「阪神淡路大震災後、非常に多くの借金を抱えたが、政令市で中位まで財政力が回復し、再び投資ができる状況となった。少ない投資で最大限の効果を上げるというのが投資スタンス」、「組織についてはDX、デジタルトランスフォーメーションを活用して、職員の使い勝手が良い、働きやすいIT環境を用意できるかが重要なポイント」と述べた。
 久元市長からの注文はという質問に対しては、「これまで培った産業界とのネットワークを生かした仕事をしてほしいという話があった」と述べた。
 神戸に雇用を作り出すためには大企業の本社誘致が必要との指摘に対する自らの考えと実現の可能性という質問に対して、「東京一極集中の下実現は難しいが、コロナ禍を受けてテレワークが広がり、東京から地方への本社移転の可能性が芽生えた。神戸は素晴らしい都市環境を有するので、今後も努力したい」と答えた。
 
 この記者会見のやりとりについての感想を述べると、まず、神戸市の課題という質問に対して、都市の歴史や地理から始め、神戸市のこれまでとこれからの施策の基本として時代に応じた交通結機能の獲得という点を指摘しており、長期的、広域的に物事を捉える鳥瞰的な視点と、問題を構造的に捉える能力を有する人物であると感じる。「神戸は発展に向けて動き続けないと、常に衰退する可能性がある」、「少ない投資で最大限の効果を上げるというのが投資スタンス」と述べる点では、神戸市の伝統的な考え方に立っているように思われる。医療・新産業本部で企業誘致やスタートアップ支援に当たってきたということで、おそらく実務的な処理にも長けているのだろう。また、DXに触れて、職員の使い勝手、働きやすさという点に言及しており、現場の職員の感覚も持ち合わせているのではないかと思われる。全体としては、物事を合理的、客観的、構造的に捉える力が高く、かつ、常識的な感覚を合わせ持つ有能な実務家という印象である。もし、そうであるとすれば、久元市長とは大分異なるタイプのように思われる。新しい副市長の今後の活躍を期待したい。