兵庫県知事が2万人収容アリーナ検討を表明(3)

 知事の会見に対するコメントを述べる。

 

 知事は、アリーナ設置の理由について次のとおり説明している。世界的な大会を誘致するには、大きなアリーナ、興行的には2万人ぐらいの観客を入れないと成り立たない。国際大会を誘致できるような拠点施設の設置を関係者から非常に強く熱望されている。また、立地条件として、5haぐらいの土地、交通の便がよいことの2点を挙げている。

 記者から、明石公園の可能性について質問されているが、知事は「一つの候補地」であることを認めながらも、明石公園には史跡エリアがあり、史跡との調整が必要があるので、「明石公園の中でもし整備をするとすれば、史跡エリア以外のところにできないかというような検討が最初に行われるのではないか」と語っている。これをそのとおりに読めば、仮に明石公園に建設するのであっても、史跡エリアは最有先の候補地ではないということだ。さらに記者から、「明石公園でいくならば、自転車競技場と県立図書館のあたりを再整備すれば」どうかという質問があった。これに対して知事は、県立図書館は耐震化工事を実施したばかりなので移転は難しい、自転車競技場も代替地を考える必要があると、実現の難しさを述べた。

 このやりとりを見ると、知事は明石公園をアリーナの建設候補地として否定はしていないが、最適地とも考えていないようだ。そうだとすると、神戸新聞の「明石公園など候補地」という見出はミスリードだ。

 また、他の候補地として、三木防災公園はアクセスが弱いこと、尼崎21世紀の森は、大阪の万博跡地のアリーナ計画と近すぎることを挙げて、それぞれ候補地として問題があることを述べている。

 以上のやりとりからの推測だが、知事の念頭には、あえて名前が挙がっていないが、神戸市内、神戸都心での建設があるのではないだろうか。知事は、立地のための条件として5haぐらいの土地、交通の便がよいこと、2万人以上の観客を動員できることを考えており、この条件があてはまる場所として、神戸の都心を考えているのではないだろうか。さらに記者から、国際イベントなどをする上では、「神戸空港の国際化をより進めていくということも重要になってくる」かという質問に対して、国際化が必須の条件ではないが、「周辺環境整備の一つの大きな要素にはなる」と述べている。これを見ると、やはり知事は神戸都心、空港や新幹線との広域交通拠点とのアクセスを念頭に置いているのではないだろうかということが推測される。では、なぜ、神戸の名を挙げないのかと考えると、知事は兵庫県が先走るのではなく、やはり地元自治体である神戸市から名乗り出てもらうことを期待しているのではないだろうか。また、神戸市には、神戸空港や須磨水族園再整備、三宮再整備でも、何事にも反対運動が発生しやすい傾向があり、慎重に発言をしているのではないだろうか。

 兵庫県は、人口減少が続く神戸市の状況を憂慮しているに違いない。兵庫県庁建替えと周辺再開発を進めるのはそういう背景での動きと理解する。そうであるなら、兵庫県が、神戸のテコ入れの一環として、神戸へのアリーナ設置を考えていても不思議ではない。

 しかし、これはやはり神戸市が考えるべき問題だ。そもそも、大阪に大規模アリーナができると、ワールド記念ホールがどうなってしまうのかという懸念から議論が始まっている。「若者に選ばれるまち」と言いながら、この動きの鈍さはなんだろう。神戸市は、いったいどうなっているのだろう。