都市の発生モデル

 都市はどのように発生し、発展するのだろうか。都市の発生メカニズムをモデル的に考えてみる。

(1)都市は人々の交換の場として発生する。

(2)当初は、周辺の村落から、それぞれの余剰生産物を持ち寄り交換する場所が自然発生的に現われる。それは、自ずと人々が集合しやすい場所が選ばれる。人々が集まりやすい場所は、多方面からの交通の便がよい場所であり、街道や河川、海上交通などの交通の結節点が選ばれる。その交換活動が定着し、定期的、常設的に開かれるようになると、それが市場となる。

(3)市場の規模が大きくなれば、需要が大規模化するとともに、供給者側にも競争関係も生じることにより、ある特定の分野に特化する者が現れる。つまり、専業化するものが現れ、それはすなわち社会的な分業である。専業化すると農村部に定着する必要がなくなり、市場の内部あるいはその周辺に定住するものが現れる。これが都市の始まりであろう。

(4)専業化した者は、兼業的な者より生産性が高く、高品質な商品を提供することが可能となる。専業化した者が1カ所に集まり、相互の高品質な材を用いつつ生産を行うことにより、一層高度な商品の提供が可能となる。生産性が高く、高品質化した商品は、より広範囲から多くの人々を集める誘因となり、市場の規模がさらに拡大する。

(5)市場の規模が拡大すると、小規模な市場では成り立たなかったような業種が成立が可能となる。もう少し詳しく言うと、それほど多くのニーズはないが、社会全体で見れば専業が可能なほどの需要があるようなものが考えられる。それは、分業の細分化、商品の高度化をもたらし、その高度の商品を求め、さらに広範囲の人々を集める誘因になる。

(6)都市に定着する人口が増えてくると、共通の利益のための行政機能的なものも必要となってくるだろう。

(7)都市の機能が整ってくると、ますます広範囲の人々がこれを利用するようになり、また、利用頻度も高まり、周辺部の人々を都市へ運ぶ交通手段が整備される。

 このようなプロセスが繰り返されることによって都市は発展すると考えられる。そして、この発展のメカニズムは現在も基本的にあてはまるだろう。

 

 (2)で述べた「都市が発生する場所」は、基本形としては「人々が集まりやすい場所」なので、人々が集まりやすいのであれば、領主の城館や多くの人々が参拝する社寺の周辺であったりする場合もあるだろう。

 

 ここから、都市の発展に必要な要素を考えると、次の二つである。

(1)交通が便利であること

(2)産業の集積などの都市機能が存在すること

 交通が便利であることは、都市が誕生するために必要な条件である。周辺部から見て、通常、交通の最も便利な都市が選択される。しかし、産業の集積も必要な要素なので、交通の便利さだけではなく、産業の集積度合いによって都市は選択されることになるだろう。したがって、一旦ある場所に産業の集積が発生すると、その集積地は固定化する傾向があると考えられる。

 科学技術の進展により、広域の交通手段が発展すると、どの都市を利用するかという都市の選択の条件が変化し、その結果、都市の淘汰、都市の序列化(高機能、中機能、低機能)が発生するだろう。

 都市の発展を考える場合、どれだけ多くの周辺人口を獲得するかによる。それ故、交通機関をどれだけその都市に集積させるかということは大変重要な要素であるが、都市の機能、産業の集積がなければ人が集まることがない。産業を集積させることは一朝一夕にできることではなく、長期的な視点をもって、地道な努力が必要となるのだ。