新型肺炎の流行について(30)

 16日に全国で確認された新型コロナウイルスの新規感染者数は午後6時半時点で計513人で、5月末の緊急事態宣言解除以降で1日当たりの最多を更新した。500人を超えるのは4月18日以来。東京都で286人が確認されるなど、感染拡大に歯止めがかかっていない。(略)

 このところ、東京との行き来が原因になった可能性がある感染例が各地で報告されており、感染の「面」の広がりに対する懸念が強まっている。(略)

日本経済新聞 2020/7/16)

 

 新型コロナウイルスの感染の再拡大に歯止めがかからない。厚生労働省の発表では、7月16日の全国の新規感染者数は619人となった。下のグラフを見ると、6月の下旬から新規感染者数が急増し、前回のピーク時に匹敵するような状況となっており、さらにそれを上回ることさえも十分に予想される。

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(出典:厚生労働省

 

 5月中旬から6月中旬にかけての落ち着いていた状況は、ほんのつかの間の小康状態にすぎなかったと思える。それは、まるで、新型コロナウイルスが感染の拡大のために我々に警戒を解かせるためであったかのようにすら感じられる。

 

 こうした状況の変化に伴い、政府が進めてきた「Go To トラベル」キャンペーンの実施に対して再考を求める声が高まっていたが、政府はとうとう見直しに追い込まれた。

  新型コロナウイルス対策として22日から始める観光支援策「Go To トラベル」について、赤羽一嘉国土交通相は17日の閣議後会見で、東京都民と都内への旅行を対象外とすることを正式に発表した。

朝日新聞 2020/7/17)

  

 「Go To トラベル」は、政府が新型コロナウイルス感染症による活動自粛で疲弊した観光業界の早期の復活を目的として実施する政策である。7月22日から始まる予定であったが、新型コロナウイルスの感染が再び拡大しており、特に東京都内では連日200人を超える感染者が判明していることから、東京都民と都内への旅行を対象外とすることを国土交通大臣が正式に発表した。

 この施策は、新型コロナウイルスの感染拡大が年の前半までに収束することを前提に企画されたものと考えられるが、感染が再び急拡大の様相を呈している現在の状況下では、そもそもの前提が崩れてしまっている。見直しは当然であろう。とりあえずは、東京都だけが除外されたが、それで十分だろうか。首都圏の周辺都市は東京のベッドタウン的要素が強く、周辺諸県もあわせて一体の都市圏と見るべきだろう。であるならば、東京都だけを除外する合理性はなく、首都圏は一体として除外するべきであったかもしれない。

 感染の再拡大は予断を許さない。今後、指数関数的な拡大を見せることも十分予想される。そういう状況が発生した場合、政府は何らかの対応を迫られることになるだろう。その時に、このキャンペーンは継続可能なのだろうか。今後の大規模な再拡大のおそれが排除されないのであれば、キャンペーンそのものの実施を見送るべきではないだろうか。

 旅行会社では東京都除外の発表後、予約キャンセルの電話やメールが殺到しているそうだ。また、東京からの客を期待していた地方の観光地も大きなショックを受けているという。観光業界の苦境は想像するにあまりある。GoToキャンペーンに代わる、公的支援策の重点的な投入が必要だ。

 これまでの主張を繰り返すようだが、経済活動はそれぞれの経済主体が有機的に結びついた一体のものだ。ある分野の苦境は、周り回って他の分野へも波及する。したがって、道徳的な意味ではなく、他者の苦境も我が事として考えなければならない。社会は一つの共同体として、脱落者が生じることのないよう支え合わないといけない。他者を扶けることは自らを扶けることになるのだ。

 事態が長期化するに及んで、本格的な経済的な苦境はこれからだろう。税収も大幅な減少に見舞われるだろう。そうした中で、国も自治体も新型コロナウイルス対策で巨額の支出を行い、大幅な財政の逼迫が生じると思われる。しかし、今は財政均衡を考えるべき時ではない。一部で緊縮財政を唱える声が上がり始めているが、ここで緊縮財政を行うことは経済の破綻の引き金を引くことになりかねない。市中にお金が回らなければ、たとえそれが生活に必要なものであったとしても、市場経済では商品を生産し交換することができない。自分のためではなく他者のために働き、自らの生活は他者の働きに依存するというのが分業社会の実態である。経済活動、商品の生産や流通、交換という経済活動の実態を維持させることがまず第一に考えられるべきことだ。経済活動の実態が円滑に行われなければ、財政の健全化の意味はない。

 

 神戸市でも新たに感染者の発生が再び見られるようになり、爆発的な感染の拡大が懸念される。こうした中、震災が発生した1995年に始まったルミナリエの今年度の中止が決まった。やむを得ないことである。再び、ルミナリエが開催できるのはいつのことだろうか。それはかなり先のことになるのかもしれない。そのとき、ルミナリエの復活は可能だろうか。そのまま消滅となってしまわないことを祈る。

 

  世界全体を見ると、7月17日現在で、感染者数は1380万人、死亡者は59万人となっている。この1週間で感染者は154万人、死者は4万人増加している。累積感染者の推移を示すグラフは右肩上がりで、ゆるやかに上方に反った形状である。