新型肺炎の流行について(7)

 久元市長が3月23日、自らのtwitterに次のようにツイートした。

 

 今朝の神戸新聞に、イベントなどの自粛解除に傾いていた大阪府知事が、方針転換するために兵庫を利用したのではないか、要請の根拠とした資料の解釈にも疑問の声が相次ぐ、との記事が掲載されている。こんな憶測を招くことがないよう、関係自治体が意思疎通を図り、連携して対応することが大事だ。

 
 久元市長が指摘する記事は神戸新聞の次の記事である。

 大阪府の吉村洋文知事が大阪-兵庫間で3連休中の往来自粛要請を唐突に表明したことを巡り、イベントなどの自粛解除に傾いていた吉村氏が、方針転換するために兵庫を利用したのではないかとの見方が出ている。

 府が18日に厚生労働省から受け取った文書では「大阪府兵庫県内外の不要不急の往来自粛を呼び掛ける」と記されていた。「両府県内外の往来」がなぜ「府県間の往来」に変わったのか。吉村氏は理由を明らかにしなかった。

 ある府幹部は「府庁内では、直前まで(府主催のイベントなどの)再開に向けた調整を進めていた。方針転換するために兵庫を持ち出したのではないか」と推測する。

(2020/3/23 神戸新聞

  筆者はこの記事を読んで、大阪府が方針転換するために兵庫県を利用したという説には、正直、納得がいかなかった。大阪府が方針転換をするためにわざわざ兵庫県を利用する必要は感じられないからだ。したがって、この記事は、根拠の薄弱な、とるに足らない記事であると受け取った。

 久元市長がこの記事に早速食いついたのが、冒頭に掲げたツイートである。

 久元市長のツイートの論旨は、「関係自治体が意思疎通を図り、連携して対応することが大事だ」ということにあるが、その前提にある事実は、大阪府知事兵庫県知事の3月19日のそれぞれの発言が、同じ事実を前提にしながら、公表する情報の範囲、要請する行動が大きくことなっていたことである。だから、久元市長がツイートで、述べる論旨の前段として、「大阪府知事が、方針転換するために兵庫を利用した」ことをわざわざ掲げるのは、かなり不自然な印象を受ける。むしろ、このような根拠のあいまいな風説に近い記事を公の立場にある者が取り上げるべきではなかった。では、どうして、取り上げる必要もない風説をわざわざ取り上げたかというと、久元市長がこのツイートでいいたかった本当の趣旨は、「関係自治体が意思疎通を図り、連携して対応することが大事だ」ということではなく、この風説を流布したかったからだと考えるべきだろう。

 久元市長に対しては、ネット上で、発信する情報が少ないと多くの批判が浴びせられている。ただでさえ、情報発信が少ない中で、このような風説を流布するようなツイートを行うことはあるべき行動だろうか。そもそも、今回の厚生労働省大阪府兵庫県に対する要請について、久元市長は「(国からの)情報が来ていないので、コメントのしようがない」としか述べておらず、事後の対応もない。そんな中で、いきなりこのような風説だけを流布しようとする姿勢には疑問を感じる。

 大阪府知事の先の会見は、厚生労働省の趣旨とは明らかに異なっており、誤読といってもよいレベルだとは思うが、市民の警戒感を高めることには寄与したと思う。そういう意味では、大阪府知事のあの会見は一定評価をされるべきだ。それと比べて、この非常時に風説を流布しようとする久元市長と、どちらがあるべき姿だろうか。久元市長は、「上質」を好むが、このツイートは「上質」とは言えない。