新型肺炎の流行について(3)

 3月3日、神戸市から、市内で初の新型コロナウイルス感染症患者の発生が発表され、同じ日のうちに2例目の発生も発表された。

 こうした状況の中、3月5日の久元市長定例会見では、新型コロナウイルス感染症への対応についての説明があった。神戸市内での患者の発生状況とともに、感染者に対する情報公開の考え方、神戸市の医療体制等の状況、市民向けの相談窓口の状況、市民への感染拡大防止のための呼びかけがあった。合わせて、児童の居場所確保として、屋外活動・自然体験プログラムの提供、民間団体が行う子ども向けプログラムへの助成制度の創設、事業者への支援として、融資制度、市の施設のキャンセル料金の免除についての説明があった。

 そして、同日、久元市長が自らのtwitterで、次のようなツイートを行った。

 感染者の行動を暴き立てて、何になるのですか。地下鉄を使っていたら乗るのをやめるのですか。そんなことより、子どもたちの居場所に関する選択肢を増やすことです。学童保育、学校のほか、公園、自然の中で少人数の活動を増やしたい。そのために活動していただける民間団体をつのり、支援します。

 このツイートに対して大きな反響があり、3月6日の神戸新聞毎日新聞にもこれを取り上げた記事が掲載されている。
 
 この件について、次のとおり考える。
 行政に関する情報はすべて公開すべきであるというのが原則であるが、同時に個人情報の保護にも一定の配慮が必要であることも間違いない。
 しかし、市民の中からもっと情報を公開せよという声が出ることは当然のことであり、こうした声に対して「感染者の行動を暴き立てる」と、あたかも不道徳な行為であるかのような表現をすることは誤っている。さらに、情報を公開することが「何になるのですか。」というのも、公開された情報をどのように利用するかということは行政側がとやかく言うことではない。
 神戸市は行政として、情報公開と個人情報の保護の2つの原則の中で責任をもって判断をしなければならないことは当然のことだ。したがって、まずは自らの行った判断をていねいに説明すべきである。
 ところが、今回の久元市長のツイートは、ていねいな説明もなく、情報公開を求める声に対して「感染者の行動を暴き立てる」行為と決めつけ、「そんなこと」と軽んじた表現をすることは、「暴言」といってもよいぐらいで、それに対して反発の声が生じるのは当然である。
 「地下鉄を使っていたら乗るのをやめるのですか。」というのも、まずは危ないのかどうかの情報が大切で、危ないのであれば神戸市は対策を講じるべきであり、危なくないのなら冷静を呼びかけるなどすればよいことであり、それがわからない状態でそのように問いただすことは「居直り」と捉えられても仕方ないだろう。
 先日の「ジタバタしても始まらない」発言にしても、今回の「暴き立てる」発言にしても、いったい何のために、わざわざこの言葉を選んで、このタイミングで発するのか理解に苦しむ。世界全体がウイルス感染症の流行の脅威に見舞われ、市民が力を合わせて立ち向かわなければならないこの時期に、このような発言をすることは不適切であるし、神戸市の信用をも損なうものだ。
 また、今回の市長会見の中で、児童の居場所確保として、森林公園や離宮公園、再度公園などでのクイズラリーやビンゴゲームなど、公園等を活用した野外プログラムの提供や近隣の公園や自然環境を活用する屋外活動・自然体験などのプログラムを提供する団体に対する助成制度創設などにかなりの時間を割いて説明をしていたが、今、緊急に行う必要がある事業なのだろうか。まずは、感染症の拡大のための必要な措置や市民の相談体制の充実、マスクや消毒液の不足、経済的影響などの問題解決に注力すべきで、限りある市の行政資源をいたずらに分散するべきではない。的外れ感が否めない。