神戸商工会議所、2020年度神戸市政要望(1)

 去る9月2日に、神戸商工会議所が神戸市長に行った要望の全文が明らかになったので紹介する。要望書は、「令和2年度〔2020年度〕 神戸市政に対する要望」の題名で、最重点項目と重点項目の2項目からなっている。

http://www.kobe-cci.or.jp/kcci/teigen/?id=49

 

 要望書には前文が付されており、我が国経済の概況から始まり、続けて、神戸の経済の現状について次のように述べている。

 こうした中、神戸は、間もなく、阪神・淡路大震災から25年の大きな節目を迎えようとしている。震災復興にかかる財政負担により、神戸は都心部の再開発 などの面で十分な施策を打つことができず、その後の都市間競争において大き く遅れをとってきたが、ここに来て、大阪湾岸道路西伸部の工事着工や、都心・ 三宮の再整備、神戸空港規制緩和実現など、都市機能強化や神戸経済浮揚に向けた動きが進みつつある。

 神戸は阪神・淡路大震災により、都市間競争に大きく遅れをとったが、神戸経済再浮揚に向けた動きが進みつつあるというのが、基本的な情勢認識のようだ。


 しかし、その動きは緒に就いたばかりで、まだまだ力強さやスピード感に欠けている。折しも、神戸市は、直近の人口動態調査において、全国の市区町村で最大の人口減少数を記録したが、神戸市が目指す「若者に選ばれるまち」を実現するためには、子育て支援など市民生活の充実もさることながら、神戸で働き、活躍する場所があること、すなわち魅力的な産業、企業をいかに増やしていくかが何よりも重要である。そして、今後さらに激化するグローバルな都市間競争に打ち勝つためには、進捗・計画中の都市基盤整備の加速化のみならず、シンボルゾーンへの集中投資や、都市活力の核となる新たなリーディングプロジェクトの創造等を通じ、広く国内外から人や企業を呼び込む、大胆な攻めの都市経営を展開することが強く期待される。

 これらの動きに対する商工会議所の評価は、「力強さやスピード感に欠けている」との評価だ。そして、直近の人口動態調査において神戸市が全国の市区町村で最大の人口減少数を記録したことを指摘し、子育て支援の充実の重要性について認めながらも、「神戸で働き、活躍する場所があること、すなわち魅力的な産業、企業をいかに増やしていくかが何よりも重要」と指摘している。

 これは全く正しい指摘である。しかし、この当たり前の考え方が神戸市役所から出てこないところに、現在の神戸市政の混迷がある。

 現在の神戸市政には合理的思考が失われていると感じる。客観的事実に基づき合理的な思考を展開することなしに、グローバルな都市間競争は戦うことはできない。商工会議所は神戸市に検討をゆだねるのではなく、神戸経済界の能力を結集して自ら積極的に市政について検討し、具体的な施策を神戸市に提言をしてほしい。