関西3空港懇談会とりまとめを読む(その5)

5.今後の取組・課題

 目標時期という時間軸の観点より、現在のニーズに応え、将来の成長に備えるため求められる具体的な取組や課題は以下のとおりである。

 なお、今後の取組については、主に、3空港の運営事業者である関西エアポート社が主体となることから、本懇談会としては、その経営判断を尊重し、その取組と連携・協力していくことを基本に、以下のとおり整理する。

(1)短期の視点に立った取組

 ワールドマスターズゲームズ2021 関西の開催などを見据え、概ね2021 年頃までに実現をめざす取組は、以下のとおりである。

 関西空港については、関係機関と連携し、災害対応力の抜本的強化を図るとともに、混雑緩和や旅客処理能力向上を図る施設整備(ターミナル1リノベーション等)に着手するなど、世界基準の国際拠点空港の構築に向け、一層の機能強化を推進する。

 伊丹空港については、引き続き関係者と連携し、安全・安心と周辺環境の改善に取り組むとともに、2020 年東京オリンピックパラリンピックに向けたターミナル改修の着実な実施等を通じて、空港機能の強化・利便性向上を図る。

 神戸空港については、関西空港伊丹空港を補完し関西の航空需要に適切に対応するため、神戸市及びその周辺とこれを結ぶ地域の航空需要と航空上の安全性を踏まえて、国内線発着枠、運用時間を段階的に拡大(当面、最大発着回数80 回/日、運用時間を23 時まで延長)することとし、必要な措置について、国への理解・協力を求めていく。また、課題となっている空港アクセスの強化について検討する。併せて、今後、ニーズの高まりが予想されるプライベートジェットの受入を推進することとし、必要なCIQ体制整備等についても関係省庁に理解・協力を求めていく。

 上記に加え、広域災害対策の一環として、3空港の災害対応力向上を図るとともに、発災時の3空港相互支援体制を構築し、日本全体での空港間の支援・補完についても体制を整えていく。

(2)中期の視点に立った取組

 2025 年大阪・関西万博の開催、IR誘致などを見据え、概ね2025 年頃までを目途に実現をめざす取組は、以下のとおりである。

 関西空港については、拡大基調が続く航空需要を適切に受け止めることができるよう、旅客処理能力の拡大(ターミナル1リノベーション等)に継続的に取り組むとともに、年間発着回数23 万回到達を見据えた環境影響調査の検証に着手する。また、国をはじめ関係機関との連携・協力を得て、将来の需要に応じた発着容量の拡張可能性に関する検討を行う。また、関西の官民連携の下、内際ネットワークのさらなる充実など、国際拠点空港としての競争力強化と需要拡大に取り組む。

 神戸空港については、上記の関西空港の取組を踏まえつつ、関西空港伊丹空港を補完する観点から、国際化を含む空港機能のあり方等について関係機関との検討を行う。

(3)上記以外の課題

 伊丹空港については、国と地元自治体や地元住民団体との間で締結された1990 年の存続協定を踏まえ、過去の経緯を尊重して運用される必要がある。そのため、伊丹空港に関する取組については、存続協定等を尊重し、地元関係者と対話しながら進めることが重要である。

 近年、悪天候等により、運用時間外の発着便やダイバート(代替着陸)便及び欠航便が発生している。今後は、関係者と連携して定時運航率の向上などに取り組み、周辺環境の改善への努力と利用者利便の向上を図る。

 伊丹空港の将来像については、上記の課題解決を図った上で、存続協定や国の経営統合基本方針、地元の意向、短中期の取組等を踏まえ、また、将来の大幅な需要変動を見据えて、国際便の就航可能性を含めた今後のあり方について、状況に応じて議論する。

 

(コメント)

  神戸空港について、短期的には、関西空港伊丹空港を補完し関西の航空需要に適切に対応するため、国内線発着枠、運用時間を段階的に拡大することとし、また、課題となっている空港アクセスの強化について検討するとしている。併せて、プライベートジェットの受入を推進することとし、必要なCIQ体制整備等についても関係省庁に理解・協力を求めていくとしている。中期的には、関西空港伊丹空港を補完する観点から、国際化を含む空港機能のあり方等について関係機関との検討を行うとしている。

 以上からわかることは、今後の具体的課題・取り組みとして、神戸空港が、関西空港伊丹空港を補完し、関西の航空需要の拡大に対応するということである。要するに、神戸空港が、「西日本を中心とする国際拠点空港」、「関西圏の国内線の基幹空港」である関西空港と、「国内線の基幹空港」の役割を補完し、関西の航空需要の拡大に対応すると述べているのである。そのため、空港アクセスの強化を検討し、必要なCIQ体制整備、国際化を関係省庁と協議していくとしているのである。