関西3空港懇談会とりまとめを読む(その2)

 2.現状・本懇談会の問題認識

 2010 年の本懇談会取りまとめ以降、関西の航空需要は大幅に拡大している。特に、訪日外国人は、政府のインバウンド促進施策や各地域の取り組み等により、2018 年には3千万人まで劇的に増加した。関西空港は、こうした訪日観光需要の増大を背景に、24 時間運用や滑走路2本を有する等その高いポテンシャルを発揮することで、首都圏空港と並ぶ国際拠点空港へ成長した。一方で、環境アセスメントで想定した年間発着回数23 万回の到達も近づき(2018 年発着回数約19 万回)、ピーク時間帯には航空機離着陸やターミナルの混雑が激しい状況も生じている。同時に、平成30 年台風21 号による大規模浸水被害の発生等を踏まえ、空港機能の喪失を防ぐ災害対応力の抜本的な強化についても、現下における喫緊の課題となっている。

 伊丹空港は、現在も騒音値が環境基準を達成できていない状態が続いており、引き続き騒音低減等の周辺環境の改善が求められている。一方、発着枠370 回/日の上限まで活用される等、その利便性が発揮されており、空港の利用者等からは、更なる公共交通機能としての空港の利便性向上を求める声もあり、その両立が課題となっている。

 神戸空港は、神戸市周辺とその以西を中心とする国内需要が堅調に伸びており、発着回数は60 回/日の上限に達している。また、空港の利用者等から更なる増便を求める声があるなど、航空需要拡大への対応が課題となっている。

 今後、関西では、ワールドマスターズゲームズ2021 関西、2025 年大阪・関西万博、IR誘致などのビッグイベント・プロジェクトが計画されている。政府がインバウンドについて2020 年4千万人、2030 年6千万人の目標を掲げ、関西観光本部として関西への訪問率45%を目指す中、これら好機を逃すことなく、インバウンドの勢いを加速させ、関西全体の発展に繋げていくことが重要である。

 地域の自治体や経済界が連携し、関西全体の魅力向上に取り組むと同時に、空港側においても、こうした取組と歩調をあわせつつ、3空港それぞれの機能を適切に発揮させ、今後の関西の拡大する航空需要を確実に受け止めていくことが必要である。首都圏空港をはじめとする国内主要空港や、アジア近隣諸国の拠点空港において容量拡大や機能強化の取組が進められる中、こうした動きも念頭に、今後の需要動向も見通しつつ、関西のゲートウェイとして中核的役割を担う関西空港の更なる機能強化、伊丹空港及び神戸空港を含む関西3空港の航空ネットワークの充実など、将来の航空需要を見据えた議論を進め、今後の関西の成長・発展に備えることが重要である。

 以上の認識の下、アジア・世界の活力を取り込み、関西全体の発展に繋げるための関西3空港の最適活用を目指すことが不可欠となっている。

 

(コメント)

  今回の懇談会開催の問題認識について述べている。訪日外国人は、政府のインバウンド促進策等により、2018年に3000万人まで増加し、さらに政府が2020 年4000万人、2030 年6000万人の目標を掲げていることが示されている。その一方で、関西空港は、年間発着回数が、2018年で19万回に及び、23 万回の上限への到達も近づいていること、ピーク時間帯には航空機離着陸やターミナルの混雑が激しい状況も生じている。これらの好機を逃すことなく、インバウンドの勢いを加速させ、関西全体の発展に繋げていくことが重要であり、そのためには、関西3空港の最適活用を目指すことが不可欠であると述べている。

 政府の目標では、2030年には6000万人と2018年の倍増を目標としており、関西空港の容量だけでは、需要をまかなえないことが明らかである。そのため、他の2空港も含めて、発着回数の増加、国際化の対応を図る必要があるというのが、国の方針であり、今回の懇談会の開催の理由であることがわかる。