神戸市の「人口減少対策」について 久元市長会見

 定例の記者会見で、神戸市の人口が川崎市に抜かれて7番目となったことについて、久元市長は次のように述べた。 

 人口減少対策についての取り組みが十分ではなかったということだと思いまして、私自身このことは大変申しわけなく思っております。ぜひこの人口減少を食いとめるためのこれまでとってきた政策というものをもう一度点検いたしまして、さらにこの人口減少を抑制する手だてということを、これを全力で取り組んでいきたいと思います。

(神戸市HP 2019年5月16日 市長定例会見)

 

 まず、どうして、「人口減少対策」と言うのだろう。「人口増加策」と言うべきではないか。というのは、競合他都市は人口が年々増加している。したがって、神戸市も人口増加を目指すべきであり、「人口減少対策」と言っているようでは勝ち目がない。また、自然増減はやむを得ないとして、社会増減が不振なことが問題の根本だ。負け幅を少しましにしたいというのが目標なのだろうか。「対策」というのも、どうも後追いの印象だ。 都市の評価において人口は最大の指標だ。人口の減少は、都市の活力の低下の現れであり、都市の存在意義に関わる重要な問題だ。この結果は深刻に受け止めなければならない。

 久元市長は「人口減少社会」に以前から強い関心を持っているが、その関心の置き所は、放置空き家の対策等のいわゆる都市環境の維持という「守り」にあるようだ。人口減少は日本全体で発生しているトレンドである。一方、国全体の人口が減少する中では、都市の選別が進む側面がある。その中では、競合他都市とどのように差別化して、どう勝ち残るのかという点こそ、大都市の市長が心血を注ぐべきことで、つまり、「攻め」の施策が必要だ。しかし、久元市長は、ここでも、問題の後追いで、施策の方向が後ろ向きだ。久元市長が、「人口減少対策」というのは、その問題の捉え方の反映と考えられる。

 次に、よく、「あらゆる手段を取る」というが、本当にあらゆる手段を講じそうで心配だ。大切なのは、選択と集中だ。あらゆる手段を講じてはならない。経済学で、「パレートの法則」というものがある。経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論で、「8:2の法則」ともいう。2割の重要な施策を行えば、8割の成果を得るというものだ。これに従えば、2割の施策に絞り込むべきだ。しかし、久元市長は、網羅的に、10割をやろうとする傾向がある。因果関係が薄く効果が乏しい8割の施策は見送るべきだ。そうしなければ、投入する人的・物的資源が分散することになり、選択と集中を行う競合他都市に、主戦場で敗退する結果になるからだ。神戸市の近年の不振は、久元市長の、政策の方向性のなさと戦力の分散投入によるところに一因があるのではないか。人口減少の原因を科学的に分析し、強い因果関係のある施策に重点的に取り組むべきだ。