ポートライナーの新神戸延伸について 久元市長会見

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 技術的に申しますと、ポートライナーは三宮の直前で大きくカーブしてポートライナーの駅に入るわけですね。新神戸駅に延伸するとなると、ここに新たな駅をつくらなければなりません。これは全く不可能ではないかもしれませんが、現実にあのエリアはもう既に高度利用されているわけですから、あそこに新駅をつくるということは、広い意味での技術面でも非常に難しいと思います。
 
 それから、このポートライナーの延伸は、巨額の事業費、建設費がかかります。既に新神戸駅三宮駅西神・山手線が走っているわけですから、これと競合する形になりますから、採算面では極めて不利です。
 
 もう1つは、そうすると、新神戸駅神戸空港をどう結ぶのかということですが、現在は、新神戸駅神戸空港に向かう利用客の数はそんなに多くはありません。これが、将来、神戸空港の便数が飛躍的に拡大したときにも、大量輸送機関が必要になるほどのレベルではないだろうと考えています。
 
 ですから、これはそれ以外の方法でアクセスを考えていく。先ほど港島トンネルの延伸のお話をしましたが、道路整備とバスによる輸送というのが基本的なアプローチではないかなと思います。(神戸市HP 市長定例会見 2019年6月13日)

 

 新神戸駅神戸空港とを結ぶ需要というものは、現状では、それほど大きなものではないという見方については正しい。久元市長は、記者会見で、神戸空港へのアクセス改善、ポートライナー新神戸への延伸問題について、道路整備とバスによる輸送というのが基本的なアプローチであると述べた。

 この考え方についてはどう考えるべきだろうか。

 ポートライナーの輸送力増強及び新神戸延伸の意義は、単に新神戸駅神戸空港の接続ということだけではなく、むしろ、新神戸駅神戸空港との2ウェイアクセスを有する沿線を創出するということにある。その沿線では、新幹線からも空港からも20分以内に到達が可能となり、西日本はもとより、日本全体から多くの人々が集合するのに極めて便利な環境が提供されることになる。つまり、新幹線駅と空港が地理的に近接するというメリットが、目に見える便益として具現化されることになるのだ。その沿線には、広域からの集客を要する産業、施設の立地の可能が生まれるということだ。沿線にそういった広域の集客施設を数珠つなぎに立地させ、それらを縫うように、ポートライナーが頻繁にこれらの施設をつなぐことになる。もしそれが実現できるならば、神戸は都市というよりも、「一つの施設」といえるぐらい便利な場所になる。ポートライナーの輸送力増強等は、単に交通機関だけの話ではなく、都市の在り方と一体的に考えられるべき都市構想の問題なのだ。

 日本全体を見回してみて、空港からも、新幹線からも、乗り換えなしに1本の交通機関で20分以内に到達できる立地はあるだろうか。おそらく、福岡市ぐらいではないかと思うが、福岡市は日本の中央から大きく偏った位置にある。神戸は地理的に日本標準時(東経135度)が通る日本の中央部の位置にあり、それが神戸の優位な点だ。

 ところで、福岡市は、大変交通手段が整った都市だ。福岡空港を起点に、地下鉄空港線が、博多(在来線・新幹線)から繁華街である天神を経由して、東西にまちを貫き、その沿線に、福岡国際会議場福岡ドーム等が駅から徒歩圏で数珠つなぎで立地されている。これは偶然にそうなったのではなく、おそらく都市計画当局の構想に基づくものであり、その構想の正しさが福岡市を九州一の大都市に成長させたのだ。この構想力の差ということでいえば、規格の合わない交通機関を次々と建設した神戸市とは雲泥の差だ。この長期的な構想力の差が、神戸市と福岡市の現在の明暗を分けたのだ。神戸市は、地方の中核都市である福岡市とでは比較できないなどと言わず、福岡市のこうした都市構造を模範とすべきだ。

 大通りにパークレットを置いたり、歩行者専用道路にしたり、美しいまちは、日本全国どこでもできることだ。しかし、空港からも新幹線駅からも20分以内に到達できる環境は、他にはない。この「他にはない」というところが大切だ。他にもできることは、他に任せればよい。他にはできないことこそ、取り組まなければならないことだ。

  ところが、この問題について久元市長の発言を見ると、単に、特定の時間帯の混雑を解消する視点しかなく、問題解決的発想で、非常に視野が狭く、静態的なものの見方であるのが残念だ。条件を変えることにより、新たな需要が生み出されることがある。新幹線駅と空港が近接するメリットをもっと生かそうという発想はないのだろうか。現在、ポートライナーの輸送力の貧弱さが指摘されているが、それが神戸空港の国際化の難点として具体的に指摘がされている。しかし、その指摘を待つまでもなく、既にポートアイランドへの企業の進出の足かせになっているおそれもある。神戸市はポートライナーの時差利用を呼びかけたりしているが、これでは、アクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるようなものだ。都市発展のインフラとして十分な輸送力をあらかじめ確保しようという発想はないのだろうか。それが先見力、構想力というものだ。神戸だけではなく、近畿圏、西日本全体の視点が必要だ。中国や韓国、東アジア、世界経済は大きく発展している。これらの風を神戸に吹き込ませる工夫をすべきだ。これらの経済発展を取り込むまちづくりを考えるべきだ。どうして、自ら需要を生み出すような施策を考えないのだろうか。このような考え方では、街の発展は望めない。