神戸市の人口減少対策について

1 市長定例記者会見(2019.5.16)

 5月16日の定例市長会見で、神戸市の人口が川崎市に抜かれて7番目になったということに対して、久元市長は「人口減少対策についての取り組みが十分ではなかった」と述べ、「人口減少を食いとめるためのこれまでとってきた政策をもう一度点検」し、人口減少対策に全力で取り組む意向を明らかにした。

 その対策として、まちの「利便性の向上」を挙げ、その例として北神急行を神戸市が買収して運賃を大幅に引き下げるとした。

 また、「空き家対策」にしっかりと取り組むとして、今年度から実施する老朽危険家屋の解体補助制度を挙げた。

 さらに、出生数の増加、転入者の増加の両面から人口減少対策に取り組まなければならないと述べたが、その具体策は述べられなかった。

 そして、「グレードの高いまちづくり」をして、「神戸に住みたいという方を増やしていく」とも述べた。

 どういう世代にターゲットを絞るのかという記者の質問に対して、「若い世代」と述べ、神戸は全国有数の大学が集中している都市で、18歳人口がかなり増えるが、22歳からそれ以降の20代の半ばぐらいの世代が流出をすることを指摘し、「そういう世代が神戸で働いてもらう、神戸で暮らしてもらうようにしていく」と述べた。

 

2 コメント

 空き家対策として老朽危険家屋の解体補助制度を挙げているが、効果としては、まちの環境維持というぐらいで、どうしてこれが人口増加対策になるのだろうか。同制度は、解体工事に要した費用の1/3以内を補助する制度のようだが、費用の一部を補助するに過ぎず、そもそも利用そのものがどの程度あるかも疑問だ。むしろいったん買い取って、整備後に売却した方がよい。

 利便性の向上として挙げている北神急行の運賃引き下げも、神戸市に大きな財政負担が生じるわりに、人口増加対策としては効果に甚だ疑問がある。

 グレードの高いまちづくりも、内容が抽象的で、何を意味しているかわからない。

 20代半ばぐらいまでの世代に神戸で働いてもらうようにしていくというが、どうやったら、そういう世代の働き口を確保できるのか明らかでない。

 住みたい場所と住める場所は異なることは珍しいことではない。神戸に住みたいと思っても、望む雇用がなければ、他都市へ移らざるを得ない。神戸に住みたいと思っても、地価が取得可能な水準より高ければ、少々不便でも安い土地に住まざるを得ない。まちの利便性を高め、グレードを上げ、住みたい人を増やすことが仮にできたとしても、それが人口増加には必ずしも結びつくとは限らない。住みたい人が住めるわけではないからだ。住める人を増やすことこそが重要だ。

 久元市長は「人口減少対策についての取り組みが十分ではなかった」と言うが、原因に即した対策は「何もできていない」のではないか。

 神戸市は、場当たり的で思いつきのような施策ではなく、人口減少の原因を正しく分析し、合理的な対策を講じるべきだ。