神戸市の人口動態について

 兵庫県の2018年の人口動態は1万9107人減となり、阪神・淡路大震災後、最大の減少幅になったことが13日、県への取材で分かった。少子高齢化に伴う自然減などの影響で、県内人口は9年連続で減少。転出者が転入者を上回る「転出超過」も続いており、東京や大阪への人口流出に歯止めが掛かっていない状況が浮き彫りになった。(中略)

 県統計課によると、減少数の9割は死亡者が出生者を上回る自然減によるもので、17年比で出生者が約2千人減少。一方で、死亡者が約千人増えたことが影響した。

 社会減は1186人と減少要因の1割に満たないものの、その内訳をみると、外国人を含む国内の転出超過数が5330人と全国で11番目に多い数字に。日本人に限ると、さらに順位を下げてワースト7位。

 17年のワースト2位からはわずかに持ち直したものの、神戸市が東京23区と政令市20市の中でワーストの転出超になるなど、兵庫の低迷ぶりが目立っている。

(2019/2/14 07:00神戸新聞NEXT)

 

1 神戸市の人口動態の概況

 神戸市は平成24年から平成30年まで、7年連続での人口減少となり、人口減少に歯止めがかからない。

 平成29年の神戸市の人口動態を見ると、自然増減 △4,110人に対して、社会増減は +1,819人である。社会増減の内訳を見ると 国内の移動が△2,236人の転出超過になっているのに対して、国外の移動分が +4,055の転入超過となっている。つまり、日本人の転出超過を外国人の転入が補っている形である。

 さらに、国内移動を世代別に見ると、20~24歳が △302人、25~29歳が △1,443人、30~34歳が △644人の、それぞれ転出超過で、その合計は △2,389人となる。全体の転出超過の原因は、ほぼこの年代の異動と考えられる。

 さらに、他の地方との関係を見ると、大阪府 △649人、関東 △2,778人で、その合計は △3,427人の転出超過となり、東京圏や大阪への転出が主要な要因となっている。また、対近隣市に対しても、出超となっており、阪神間6市が △1,029人、東播臨海部が △725人の出超で、その合計は △1,754人の転出超過である。

 これらの数字から次のことが考えられる。20~34歳の年齢層の大幅な転出超過は、市内での雇用の不足が原因となっている。それに対して海外からの、おそらく低賃金労働者が流入している。

 対近隣市でも転出超過となっているが、神戸市の居住環境が周辺市と比べて特段に劣るということはないと思われるので、原因は神戸市の地価が近隣市と比べて割高であり、市内に高水準の所得が得られる雇用が不足しており、その結果、市内に比べて比較的安価な周辺市町村に住居を求める傾向が生じているのではないかと推測する。

 以上より、神戸市の人口低迷の最大の原因は、高水準の所得が得られる雇用の不足、産業活動の低迷が原因と考えられる。大手企業の雇用が少ないために、就職の機会に市外への転出を余儀なくされているのだと考えられる。

2 人口減対策

 こうした状況に対して、どのような施策が必要かと考えると、雇用の確保に尽きる。必要なものは、「高水準の所得が得られる雇用」である。神戸市は、全力を挙げて、雇用の確保に努めるべきである。具体的には、三宮の広域交通の利便性を活かして、企業の西日本の拠点の受け皿となるビジネスセンターを構築すべきだ。また、コンベンションセンターをつくるべきだ。そのための長距離交通相互を結ぶ交通インフラを整備することだ。すぐに完成するものではないが、プランを示すだけでも効果があると考える。

 これに対して、神戸市は人口減少に対して有効な施策が打ち出せていない。

(1)移住促進 雇用のないところに居住することはできない。移住促進は雇用とセットで考えなければ意味がない。移住促進のPR戦略は、努力しているというアピールにしかならない。

(2)老朽家屋対策 やるのは当然だが、人口減対策とはいえない。本来的に、問題に対する後追いでしかない。余り強調すると、神戸市の衰退を印象付けることになりかねない。

(3)駅前の再開発 都市のリプレイスは必要なことだが、神戸市の住宅地としての質が人口の低迷の原因ではない以上、人口減対策にはならないだろう。

 神戸市は、現象を正しく把握し、原因に応じた施策を講じなければならない。施策の優先劣後をよく考えるべきだ。限られた人的、財政的資源を分散投入する愚を犯すべきではない。なにより、都市の魅力ある将来像が提示できていないことに重大な問題がある。

 交通の要衝というのはわかった。しかし、その便利な交通によって、いったいどういう都市をつくるのか。これが一向に明らかにならない。方針を示せないものに対して行動はありえない。