神戸市の文化政策について

 神戸市は、「ジャズの街神戸」を推進している。これを文化・観光施策の柱と考えるなら、考えを改めるべきだ。「がんばる努力の焦点を “ 正しいところ ” に持っていかないと結果はでない」(USJ マーケティング本部長 森岡 毅)

 

 一般社団法人日本レコード協会が発表した「2015年度音楽メディアユーザー実態調査」https://www.riaj.or.jp/f/pdf/report/mediauser/softuser2015.pdf によると、「普段よく聴く音楽ジャンル(年代別)」を見ると、日本のポップス・ロック・ダンスミュージック、海外のポップス・ロック・ダンスミュージック、アニメ・声優・ゲーム・ネット・ボカロ系音楽は全世代で高い人気があるのに対して、クラシック、アイドルミュージック、ジャズ、演歌・歌謡曲は全体的に少数でユーザーが限られており、世代間の偏りが大きいことがわかる。このうち、ジャズを見ると、30代以下の若い世代が10%に達するかどうかという水準であるのに対して、40代以上、特に60代以上の年代では25%に達しており、高齢者の支持が多いのが特徴だ。(この特徴は、演歌・歌謡曲とよく似ている。)

 神戸市は「若者に選ばれる街」を目指しているにもかかわらず、ジャズの街に力を入れることは、「神戸は高齢者の街」というイメージを植え付ける結果になってしまっているように感じる。(神戸の街のレトロ趣味も同様だ。)ジャズの振興そのものが悪いこととは言えないが、もっと多くの人が興味を持つ分野、ポップス・ロック・ダンスミュージック等に力を入れるべきだ。将来的には現役の世界的なミュージシャンに神戸でコンサートをしてもらえることを目指したいところだ。

 最近、Queenの映画が世界的なヒット作となり、良い音楽は世代を超えて支持されることが確認された。このように、古くてよいものに再度、光を当てることができないだろうか。先日、神戸税関でPink Floydの音楽を鑑賞するイベントがあったようだが、これはとても良い着想だと思う。今後も、ぜひ続けてほしい。ただし、もっと一般受けしそうなコンテンツの方がよいと思う。音楽だけでなく、映像も付けて。例えば、新港地区の広大なスペースを活用して、ポップス・ロック・ダンスミュージック等のフィルムコンサートを行えばどうか。ジャズは基本的に少数者向けの音楽であるが、ロックミュージックは大群衆向きの音楽だ。こうしたイベントを活用して、若者が恒常的に新港地区に出入りしてもらうようになればよいと思う。そして、将来的には現役の世界的なミュージシャンの登竜門的な存在に神戸がなれればよいと思う。

 

 その可能性はあるだろうか、神戸は日本全国から人が集まるのに最も便利な都市のひとつである。新幹線、空港、鉄道、道路を使って日本中から日帰りでも来ることができる。市街地の中心部に港という広大な空間を抱えている。そして風光明媚だ。この条件を活かして、上記のような大衆向けのコンテンツを育成することだ。