北神急行 事業譲渡問題(その1)

 

 神戸市内を運行する北神急行電鉄(同市北区)の市営化に向け、同市の久元喜造市長と親会社の阪急阪神ホールディングス(HD)傘下の阪急電鉄の杉山健博社長が27日、神戸市役所で会見し、事業譲渡の協議を始めると正式に発表した。北神急行は市営地下鉄西神・山手線と相互乗り入れしており、市は地下鉄との一体運用で運賃を引き下げ、沿線の活性化などにつなげる狙い。(2018/12/27 20:41神戸新聞NEXT)

 

 報道によれば、市長は、これまでも運賃引き下げを目的とした助成を行ってきていたが、「いままでの支援策が乗客の増加につながっていない」ため、北区の人口減を食い止めるうえで「思い切った策を講じて、乗客人員の増につなげたい」と述べたとある。

 北神地域を神戸や大阪のベッドタウンとして考えると、乗り換えが必要で、接続する神戸電鉄の貧弱な輸送力では、三宮以西のJR沿線等と競争することは(単に運賃だけの問題ではなく)本来的に困難であろう。運賃を大幅に引き下げ、仮に北神地域への人口転入増加に成功したとしても、おそらく神戸圏の人口の再配分にいくらかの影響を与えるだけで、圏域全体の人口増加をもたらす話ではない。

 鉄道事業としてみた場合に、この計画では単に鉄道収入を神戸市の負担で減らして、結果的に阪急電鉄の負債を肩代わりすることにしかならない。だから、何か別の意図があるのでなければ、賛成できない。

 北神急行が高額な運賃となるのは、元々六甲山系に隔てられた地理的条件を人為的に克服しようとした結果で、当然のことだ。北神地域の人口減対策はベッドタウンとしてではなく、広大で比較的安価な地価を生かして職住近接の街づくりを行うことだろう。北神急行買収の対価はそうした産業誘致や神戸市全体の人口増加につながる都心の再開発に用いた方がよい。