北神急行 事業譲渡問題(その2)

 北神急行の運賃を低減すれば利用客数は増えると言えるのだろうか。

 北神地域に対して、都心機能を提供するのは神戸(三宮)と大阪(梅田)の2都市が考えられる。北神地域の住民の需要が、交通費が高いことを理由に大阪に流れているのなら、運賃を下げることにより神戸への需要を増加させる効果を持つだろう。

 両都市への交通費と所要時間(乗り換え時間を除く)を試算してみると、それぞれ谷上経由と三田経由の条件で、岡場~三宮が930円(26分)、岡場~大阪が1150円(1時間)、道場南口~三宮が990円(33分)、道場南口~大阪が1060円(52分)と、現状でも、交通費、所要時間とも神戸の方が優位であるので、運賃を引き下げることによって、神戸方面への利用客数がさらに増えるとは考えられない。三田まで行くと、三田~三宮が1060円(41分)、三田~大阪が760円(39分)となり、交通費、所要時間とも大阪が優位となるが、現状でも三田は大阪のベッドタウン的性格が色濃いので、三田の需要を運賃だけで神戸に振り向けるのは困難だろう。

 

 神戸市全体を見た場合に、現下の問題は、都心機能の提供という点で、長らく更新が行われておらず老朽化した神戸が、大阪に対して質的にかなり見劣りしている点だ。実際に、神戸市の東部では、大阪や西宮北口へ相当の需要漏出が起きていると感じる。運賃は三宮の方が安いにもかかわらず。だから三宮の再開発を急がなければならない。北神急行の譲渡価格は多額に上るのではないかと思われるが、これを都心の更新費用に充てた方がよいというのは、こうした理由による。

 また、鈴蘭台~三宮は500円(33分)にはメリットが及ばず、谷上~三宮と運賃がアンバランスになるのもいかがなものか。

 北神地域は中国道山陽道新名神道、北神戸線が結節し、しかも神戸・大阪にも近いという抜群の立地条件にある。これを活かして産業集積に努め、職住近接の街づくりを進めるのがよいだろう。その上で、都心との広域的な連携を図るべきだ。