広域交通拠点としての神戸

 明石海峡大橋開通後、淡路、四国と陸路で直接結ばれることになった神戸(三宮)は、いまや長距離バスの一大発着地となっている。西日本諸都市間の便に限れば、路線数、便数において、広島や岡山を凌駕し、大阪(梅田または難波)とほぼ遜色のない状況である。いったん神戸に出て、そこから鉄道に乗り換えて近畿圏各地へ移動するのが、早くて経済的であることが理由と思われる。神戸はまさに近畿圏の西の玄関口と言える。

 長距離バスだけでなく、在来線、新幹線、フェリー、航空機とあらゆる長距離交通機関が集まる神戸(三宮)は、西日本全体で一同に会するとすれば「最も集まりやすい場所(集合適地)」であると言っても過言ではないであろう。なぜなら、三宮ならば、近畿圏内はもとより、西日本各地から「乗り換えなし」に直通で来ることができるからだ。逆に、三宮に拠点を置けば、西日本各地に容易に直行することができる。

 こうした貴重な特性を持つ三宮、中でも三宮駅から徒歩圏にあるエリアは、限られた範囲の、希少な「神戸の宝」ともいうべきエリアなので、高度利用を図ることは極めて重要である。このエリアは、土地の特性を活かして、広域的な需要を満たす用途、例えば広域の商圏を有する大規模または専門的な小売業、コンベンション、大規模なコンサート、企業の中枢管理機能などの用に提供されるべきだ。逆に、住宅には広域的な利便性は本来必要ないと考えられるので、その外周部に配置すれば十分だ。このように、地理的特性をよく考えて、土地利用の方向性を考えることが大切だと考える。

 ところで、現状では、神戸は近畿圏の「玄関口」であっても「目的地」ではなく、神戸を経由しながらも、大阪、京都へ通過してしまっているのが実情と思われる。神戸にとって重要なことは、これらの西日本全域から集まり通過してしまっている人の流れを繋ぎとめることだ。それには、交通の至便な三宮に大阪に代替できるような大規模な商業施設や集客施設をつくることだ。また、西日本全体への交通の利便性を求める企業の立地を促進することも考えられる。

 西日本との人の流れを考えたときに、神戸は確実に大阪より、費用面、時間面での地の利がある。そして、広域からの集客に成功してはじめて、一か所に都市機能が集中している利点や、風光明媚な景観が一層光り、「回遊性の向上」が重要となると考える。