兵庫県議会の本会議が5日、開かれ、斎藤知事の内部告発文書を調査する百条委員会がまとめた報告書が賛成多数で了承されました。
兵庫県の斎藤知事の内部告発文書を調査する百条委員会は、4日、パワハラの疑いなどについて「一定の事実が含まれていた」などとする報告書をまとめました。
5日開かれた県議会の本会議では、百条委員会の奥谷謙一委員長が提出された報告書の内容を説明し、「県の対応は、組織の長や幹部の不正を告発すると、懲戒の不利益処分などで通報者が潰される事例として受け止められかねない。全体を通して客観性、公平性を欠いており、大きな問題があったと断ぜざるを得ない」と述べました。
そのうえで、「斎藤知事は報告書を重く受け止め、リーダーとして厳正に身を処していくことを期待する」と述べ、知事に対し、県民への説明責任を果たすよう求めました。
(略)
このあと、採決が行われ、百条委員会の報告書は賛成多数で了承されました。
百条委員会は5日で終了しました。
本会議のあと斎藤知事は記者団に対し「議会側から1つの見解が示されたことは受け止める。一方で、ひぼう中傷性の高い文書が作成・流布されたことへの県の対応は適切だった。改めるべきところは改め、県政を前に進めることで責任を果たしていく」と述べました。
(NHKニュースWEB 2025/3/5)
斎藤知事に対する内部告発問題を調査する兵庫県議会の百条委員会の報告書がまとまり、3月5日の本会議で報告され、賛成多数で了承された。
報告書の全文は兵庫県議会のホームページで見ることができる。
「文書問題調査特別委員会調査報告書(PDF:984KB)」
報告書では、当該告発文書に掲げられた7つの項目についての調査結果は次のとおりとなった。
1 五百旗頭真理事長ご逝去に至る経緯について
「文書の記載内容については、信頼できる情報源に基づいており、概ね事実と言えるが、一部で事実誤認、憶測、疑いにとどまるものも含まれていると言える。」
2 令和3年の知事選挙における県職員の事前選挙活動等について
「文書の記載内容や違法行為を裏付ける証言等は確認できなかった。」
3 次回知事選挙に向けた投票依頼について
「この件にかかる文書記載の違法行為を裏付ける証言等は確認できなかった。 」
4 知事が贈答品を受け取っていることについて
「文書の記載内容については、一部で事実誤認や憶測も含まれてはいるが、一定の事実が記載されており、虚偽の内容とまでは言えない。」
5 知事の政治資金パーティー実施にかかるパーティー券の購入依頼について
「文書の内容には一部で事実誤認や憶測も含まれているが、一定の事実が記載されており、虚偽の内容とまでは言えない。」
6 阪神・オリックス優勝パレードにかかる信用金庫等からのキックバックについて
「文書の記載内容については、一部で事実誤認や憶測も含まれてはいるが、一定の事実が記載されており、虚偽の内容とまでは言えない。また、公金横領や公費の違法支出は認められなかったものの、本件については、背任容疑の告発状が県警に受理されており、捜査当局の対応を待ちたい。 」
7 知事のパワーハラスメントについて
「齋藤知事の言動、行動については、パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なものだった。」
7項目のうち、2、3については、指摘事項を裏付ける証言等は確認できなかったが、その他の項目については「一定の事実が記載」されていると評価されている。
そして、これを受けて、今回の告発文書についての公益通報者保護法の適合性の問題については、次の結論となった。
Ⅳ 公益通報者保護にかかる調査の内容と結果について
「元県民局長の文書は公益通報者保護法上の外部公益通報に当たる可能性が高い」、「一連の県の文書問題への対応には看過できない問題があったと言わざるを得ない」
全体の総括として、「公益通報者保護については、元県民局長の文書は公益通報者保護法上の外部公益通報に当たる可能性が高く、県の初動は、文書内容の調査をせずに通報者の特定を行うなど、不適切な対応に終始しており、現在も体制整備義務違反の疑いが指摘されている。」、「知事は、3月27日の記者会見で元県民局長の文書を『事実無根』、『うそ八百』と評したが、約9ヵ月に及ぶ本委員会の調査により、文書には一定の事実が含まれていたことが認められた。」、「文書に記載の当事者である知事や幹部職員による初動対応や内部公益通報後の第三者機関の検討、元県民局長の処分過程など全体を通して、客観性、公平性を欠いており、法令の趣旨を尊重して社会に規範を示すべき行政機関の行うべき対応としては大きな問題があったと断ぜざるを得ない。」、「齋藤知事におかれては、本報告書の期するところを重く受け止め、兵庫県のリーダーとして厳正に身を処していかれることを期待する。」としている。
以上が、今回の百条委員会の報告書のあらましである。
これに対する筆者の感想を述べてみたい。
全体としては、昨年9月の不信任決議当時の議論から、かなり「後退」した内容になっていると感じられた。というのは、全般に、適否を断定する記述を避け、たとえばパワハラの項目についても「パワハラ行為と言っても過言ではない」、公益通報保護法の問題についても「外部公益通報に当たる可能性が高い」などの、反対論を認める余地のあるあいまいな書きぶりとなっているからだ。個別の事案については評価の分かれる部分もあるのはやむを得ないところではあるが、少なくとも、パワハラについては、定義も明らかであり、「過言ではない」とまでいうなら「パワハラ」と断言すべきではなかったか。また、告発文書は「一定の事実が含まれる」と認めるのであれば、公益通報者保護法違反に該当するのは明らかであるから、「違法」と明言してよかったのではないか。
この報告書がまとまる最終段階においても、結論を「両論併記」として、報告書の方向性を定めることすらできない状態に陥っていたという。しかし最近になって、斉藤元彦氏を支援する一部の議員が「秘密会の音声データ」を漏洩させたり「真偽不明の文書」を部外に発出していたことが発覚し、百条委員会の委員を辞任する騒ぎがあり、それらの影響力が低下したことにより、両論併記はなんとか阻止することができたということだ。
斉藤知事の不信任決議の頃から、斉藤知事を支援する勢力が、百条委員会の委員に対して激烈な誹謗中傷、個人攻撃を繰り返し、その中にあって、百条委員会の議論の中心的な存在として活躍していた竹内英明議員が自死されるという痛ましい事件も発生した。そうした猛烈な逆風の中での傷跡が、この報告書の中に生々しく残っているのだろう。
この報告書について、斉藤元彦氏は、記者会見で「1つの見解」にすぎないと、これまでの考え方を一切変えようとしていない。斉藤元彦氏を支援する勢力からは、この百条委員会を「茶番」として誹謗し、徹底して価値をおとしめようとする言説が流布されている。しかし、筆者はこの兵庫県の百条委員会の取り組みについては、高く評価するものである。
この百条委員会の発端となったのは、一人の兵庫県職員の告発である。そして、その職員は、告発を受けた斉藤知事の一派によって告発者の探索、手続きに甚だ問題のある取り調べを受け、知事の記者会見で告発者を特定する形で「事実無根」「嘘八百」「公務員失格」と罵倒され、社会的な信用をおとしめられ、懲戒処分に付され、ついには自死に至ってしまった。兵庫県議会は、このたった一人の県職員に降り懸かった悲劇を見逃さなかった。そして、告発者の告発の真偽を、膨大な時間をかけて、ついに、告発の内容が「一定の事実が含まれる」と、その価値を兵庫県議会として公式に証明したのである。その調査の過程で、斉藤知事を支援する勢力から、百条委員会およびその委員に対して、あらゆる妨害、誹謗中傷、個人攻撃が加えられた。それは、告発の内容の真実が明らかになることを妨げるためと考えられる。そして、今なお、報告書そのものの価値をおとしめる攻撃が続けられている。
いつの日か、すべての真実が明らかになり、すべてが白日の下に正しく評価される日が、必ずや訪れるだろう。そのときに、もし、この百条委員会が開かれていなければ、我々は後代の人々から、正義を見殺しにしたとの誹り(そしり)を受けていただろう。このような社会的な不正に対して、誰も声を上げず、傍観するのはなんと陰惨なことだろう。しかし、兵庫県議会は自らの権限を行使し、百条委員会を開き、真実を解明しようとした。多大な犠牲を伴いながら。この百条委員会は、この歴史的な大災害の中で兵庫県民が残した不滅の金字塔なのだ。