兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラなどの疑惑を内部告発された問題で、県議会の百条委員会は5日午前、公益通報制度に詳しい奥山俊宏・上智大教授を参考人として招き、告発への県の対応について見解を聞いた。奥山教授は、県が告発を公益通報として扱わず、告発者を懲戒処分としたことは、告発者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法に違反する との見方を示した。
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奥山教授は「5月の段階で公益通報に当たらないと判断したのは拙速に過ぎた」と指摘した。同法では通報を受け付けた場合、第三者委員会など独立性の高い機関による調査が求められると説明。文書で疑惑を指摘された知事や県幹部が主導して内部調査を行い、処分したことについて、「まるで独裁者が反対者を粛清するかのような構図で、県の対応は保護法の趣旨を逸脱している」と述べた。
同法では「事実と信じるに足りる相当の理由」などがある場合、報道機関などへの「外部通報」も保護の対象となる。同法の指針では、県には告発者捜しの防止などの体制整備が義務づけられている。
ところが、斎藤知事は3月20日に文書の内容を確認した直後に、告発者の特定を指示した。奥山教授はこの点についても、「知事が先頭に立って、義務に違反する行動をとった」と批判した。
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(読売新聞 202409/05)
斎藤兵庫県知事に対する内部告発問題で、兵庫県議会の百条委員会は5日、公益通報制度に詳しい上智大学の奥山俊宏教授を参考人として招いた。奥山教授は、県が告発を公益通報として扱わず、告発者を懲戒処分としたことは、告発者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法に違反する との見解を示し、兵庫県の対応について、「まるで独裁者が反対者を粛清するかのような構図で、県の対応は保護法の趣旨を逸脱している」と指摘した。
兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑が文書で告発された問題を巡り、県議会の調査特別委員会(百条委員会)は6日、公益通報に詳しい山口利昭弁護士(大阪弁護士会)を参考人として招いた。文書の存在を把握した直後に告発者を特定し、公益通報の調査を待たずに告発者の元県西播磨県民局長の男性(60)=7月に死亡=を停職3カ月の懲戒処分とした県当局の対応について、「ありえない話で法令違反」と指弾した。
山口氏は、公益通報に当たらないとされるケースとして名誉棄損などの「不正な目的」がある場合があると説明した。
山口氏に先立って証言した元副知事の片山安孝氏は、メールの送受信記録の中に「クーデター」「革命」といった文言が含まれていたことを理由に「不正目的な行為であり(公益通報の)対象にならないと思っていた」と説明。一方、山口氏は「事業者(県)側に立証責任があり、相当厳格な調査をしなければ『不正の目的』は認められない」と強調し、告発者の男性による文書の配布は「公益通報者保護法上の外部公益通報にあたる」との認識を示した。
男性が5月に受けた停職3カ月の懲戒処分についても、「無効となる可能性が高い」とした。
山口氏は、消費者庁の公益通報者保護制度検討会の委員を務めており、公益通報に関連する著書もある。一連の県の対応を踏まえ、同法の法定指針で義務付けられている公益通報への対応体制の整備ができていなかったとして、「まだ兵庫県では違法状態が続いているという理解だ」と批判した。
(産経新聞 2024/9/6)
翌6日には、山口利昭弁護士(大阪弁護士会)が参考人として招かれた。県当局の対応について、「ありえない話で法令違反」と指摘し、「まだ兵庫県では違法状態が続いているという理解だ」との考えを示した。
一方、同6日に兵庫県知事は2回目の証人尋問に出頭したが、現時点においても、今回の内部告発問題に対する県の対応は適正であったと言い張り、一向に責任を認める様子がない。
委員会終了後の記者会見では、兵庫県議会側は、さらに消費者庁に照会を行うことを検討するとのことだ。
ところで、公益通報者保護法は、すべての事業者に、次のような体制整備を義務付けている。(同法11条~13条)
1)内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設置、「従事者」の指定、内部規程の策定等)を義務付け
2)体制整備義務違反等の事業者には行政措置(助言・指導、勧告及び勧告に従わない場合の公表)
3)内部調査等の従事者に対し、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け(違反した場合には30万円以下の罰金
さらに、同法は、事業者に対して報告の徴収並びに助言、指導及び勧告を行う権限を内閣総理大臣に与えている。勧告に従わなかった場合にはその旨を公表できることとされている。(同法15条、16条)
しかし、これらの指導、勧告の権限についての規定は、国や地方公共団体には適用されないこととなっている。(同法20条)その理由は、消費者庁では次のとおりと説明している。
法第2条第1項の規定により、「事業者」は「法人その他の団体及び事業を行う個人」と定義されているところ、国及び地方公共団体については、「法人」に含まれるため、「事業者」として、法第11条第1項及び第2項(これらの規定を同条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による公益通報対応義務等を負うこととなる。
国及び地方公共団体は、公益のために法令を制定し、又は公益のための秩序維持を図るものであり、その公益を自ら害することは通常想定し難く、仮に国及び地方公共団体において公益通報対応義務等に関係する職務に従事する職員が職務上の義務に違反し、又はその職務を怠った場合は、国家公務員法等の規定による監督措置がとられることとなる。
よって、国及び地方公共団体に係る公益通報対応義務等については、法において履行確保の手段を設ける必要性が低いため、国及び地方公共団体に対する法第15条及び第16条の規定の適用を排除し、報告の徴収、助言、指導及び勧告並びに公表の対象から、国及び地方公共団体である事業者が除外されたものである。
(消費者庁「逐条解説」)
つまり、国や地方公共団体は、「公益のために法令を制定し、又は公益のための秩序維持を図るものであり、その公益を自ら害することは通常想定し難」いので、適用を除外されているのである。この説明を読むと、今回の兵庫県知事の対応は、いかにあり得ないことであるのかがわかる。すなわち、兵庫県知事は、公益通報者保護の趣旨を守り、推し進める方の立場であって、法の規定の断片をつぎはぎして、制度の趣旨と正反対の結論を導き出し、告発者を粛正するような対応を行うことは、まったく「想定外」の事態なのだ。
今回の内部告発問題における兵庫県知事の対応の適否については、消費者庁のHP等で示された資料や、これまでの議論で、すでに明らかとなっている。この上、消費者庁の見解を求めることは、無用のことだと思われる。
別途、今後、懲戒処分を受けた当事者(遺族)が処分の無効を訴え、兵庫県に対して損害賠償請求を行うことも考えられるが、司法的決着を見るまでにはかなりの年月を要するだろう。仮に、司法が斉藤知事の対応を違法と決したとしても、斉藤知事は、「兵庫県の対応は適切だった」「県政を前に進めていくために全力を尽くしていくことが私の責任の果たし方だ」と嘯いて、その地位にとどまろうとするに違いない。
斉藤知事のような「無法」のアナウンスを公の場で垂れ流すことは、それ自体が公の秩序を破壊する行為であり社会的な害悪である。このような事態は一日も早く終息させるべきである。
斉藤知事は、まるで社会一般の常識とはかけ離れた世界に身を置いている。これ以上斉藤知事と議論をして、正しい結論に到り、自らその職を辞することはあり得ないと思われる。
やはり、ここは政治的に解決するしかない。すなわち、議会による不信任決議の覚悟を固めるべき時だろう。
(参考)
5日、6日に行われた、参考人招致の動画である。非常にわかりやすく、論点が整理されており、公益通報者保護法の理解に役立つ。
(2)弁護士 山口利昭氏 参考人招致
(3)6日の百条委員会終了後の委員の記者会見