ルミナリエ2024を振り返って

(東遊園地会場の様子)


 第29回ルミナリエが1月28日に閉会した。神戸ルミナリエ組織委員会の発表によると、10日間の開催期間中の来場者数は229万8000人、このうちメリケンパークに開設された有料エリアの来場者数は15万400人だったということだ。

 

 今回はコロナ禍後、4年ぶりの本格開催ということだったが、旧居留地内、東遊園地内の会場を大幅に縮小し、メリケンパークに有料会場を初めて導入する等、新しいスタイルを模索するルミナリエとなった。

 来場者数は、前回の第28回(2019年)の346.9万人から33.8%の大幅減少となり、過去最低となった。過去最高であった第10回(2004年)の538.3万人と比べると、42.7%と半分以下となっている。

 一日あたりの来場者数を見ても、過去最高だった第10回(2004年)と比べると6割弱の数字となり、「集客力」が大幅に低下したという評価もできる。

 

ルミナリエ 1日あたりの来場者数)

 

 この結果について、新聞報道(神戸新聞2024/1/29)によると、組織委員会は「想定通りの数字だった」と言い、「観光の閑散期である1月に、これだけ多くの方に楽しんでもらえた」と話したそうだ。

 来場者数を評価尺度とすると、来場者数が前回の3分の2に激減し、過去最低であったという点から考えると「失敗」と言うべきだと思われるが、組織委員会は決してそのような評価を下さないだろう。しかし、そのこと自体が大きな問題であるように思われる。組織委員会ルミナリエに人を集めたいと思っているのか、人を集めたくないと思っているのか、その方向性が定まっていないように感じる。

 そもそもルミナリエを開催する目的は何なのだろうか。組織委員会自体がその目的がわからなくなっているのではないだろうか。

 

 そこで、ルミナリエを開催することの意義を再度考えてみよう。

(1)ルミナリエ開催の意義

 ルミナリエ阪神淡路大震災の「メモリアル」であって「鎮魂行事」ではない。個人が鎮魂の思いで参加することを妨げるものではないが、かつて神戸を襲った大震災を記念する行事である。対象は不特定多数で、できるだけ多くの人々に参加してもらい、あの震災に思いを致し、再び襲う大自然の脅威に備えるきっかけとなることがルミナリエの意義であると考える。これに対して、1・17のつどいは「追悼行事」であり、肉親など近しい人を失った人たちが中心となる、まさに鎮魂のために行事である。

 阪神淡路大震災は、単に破滅だけの物語ではなく再生の物語でもあった。だからこそ尊く、後世の人々の希望となりうるのだ。それは、その後の数々の災害が起きた際に、復興した神戸の姿が被災地の被災者を励ましたことをもって立証されるであろう。その復興の側面の象徴こそがルミナリエなのだ。

 これを比喩的に言うなら、1・17のつどいは「死」「闇」であり、ルミナリエは「再生」「光」ということになるだろう。光と闇は両立しない。鎮魂と集客という目標を巡って方向性の定まらないルミナリエの現状は、光と闇のそれぞれが、互いに打ち消し合おうと争っているかのようだ。

 ルミナリエ阪神淡路大震災のメモリアルとすれば、できるだけたくさんの人に参加してもらうことは趣旨にかなっているし、現在の神戸に求められている、街のにぎわいづくりに大いに役立つ貴重な行事ということができる。

 以上の理由から、ルミナリエ1・17のつどいとはしっかり切り分けて、開催時期も従来どおりの12月の開催とした方が妥当であり、歴史的事実にも忠実であると考える。

 

 その他、いくつか気づいた点を記しておこう。

 

(2)ルミナリエの会場について

 会場は分散させず、できるかぎり一まとまりとした方がよい。分散会場だと、一つ一つの規模が小さくなってしまう。ルミナリエは単体で見るものではなく、集合体を見るものだ。また、分散型だと、人々はたくさん移動しなければならず、結果的に人々の足を遠のかせることになってしまう。今回、おそらく、メリケンパークには足を運ばず、東遊園地だけを見て帰った人たちも多いに違いない。その人たちが感じることは、「ルミナリエは大幅に縮小された」という印象だと思われる。その人たちは今後、ルミナリエを見に来てくれるだろうか。

 会場はハーバーランドからメリケンパークまでの間に設けるのがよいだろう。つまり、従来は三ノ宮駅から元町駅の間の旧居留地を会場として人が流れていたが、神戸駅から元町駅の間を人が流れるようにするのがよい。ハーバーランドからメリケンパークは元々観光地であるから、これらの活性化のためにも有効だろう。メリケンパークには神戸港震災メモリアルパークもあり、震災のメモリアルという趣旨からも都合がよいだろう。

 今回、メリケンパークに有料会場を設定したが、メリケンパークも、いつの間にか、いろんなものが詰め込まれて、手狭になっているように感じる。今後、都心のイベントスペースとして大空間を確保し、ハーバーランドからメリケンパークを一まとまりとして、円滑な動線を確保するよう整備を進めるのがよいだろう。大勢の人たちが集まるならば、メリケンパークから新港第1突堤に渡る橋も建設する必要があるのではないか。

 

(3)有料化の問題

 今回、有料会場が設けられたが、有料会場の来場者はわずか15万人で、一人500円として7500万円の収入にしかならず、これだと有料化の効果はあまり得られなかったというべきだ。有料化には賛成であるが、もっと低額にした方がよいだろう。そして、有料会場、無料会場と分けずに、すべての参加者(小学生以上)から100円程度の入場料をもらうようにするのがよいだろう。そうすれば、仮に来場者が300万人とすると3億円の収入となる。100円の入場料であれば、人々の抵抗も少ないだろう。今回導入した予約制も、ルミナリエの参加しやすさを損ない来場者数を減らした要因と思われるので、撤廃すべきだろう。

 

 

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