井戸兵庫県知事が退任を表明

 兵庫県井戸敏三知事(75)は11日の県議会本会議で、来年夏に予定される次期知事選に立候補せず、同年7月末の任期満了で退任する意向を明らかにした。阪神・淡路大震災の復興事業が節目を迎え、行財政改革など重要施策にも道筋がついたことなどを理由とした。5期20年に及ぶ長期政権にピリオドが打たれる。

神戸新聞 2020/12/12)

  兵庫県井戸敏三知事が、11日の県議会本会議で、来年7月の任期満了で退任することを明らかにした。井戸知事は、75歳という高齢はさておいても、前回2017年の県知事選で多選批判にさらされながらも県政史上最多の5選を果たしたということもあり、今期で退任することはほとんど既定の事実だった。

 井戸知事は、総務官僚の出身で、阪神淡路大震災後の1996年に兵庫県の副知事となり、2001年7月に貝原知事の後を受けて兵庫県知事に初当選した。以後5期20年にわたって兵庫県知事を務めることとなった。

 

 井戸知事の功績としては、震災後の財政悪化に対する行財政改革が挙げられている。

 井戸知事の就任は、阪神大震災から6年後だった。震災の復旧・復興にかけた金額は16兆3千億円。うち1兆3千億円を県債で賄ったため、当初から厳しい財政運営を余儀なくされた。3割の職員削減などの行財政改革に取り組み、19年度決算で県債残高は3229億円まで減らした。

朝日新聞 2020/12/12) 

  また、2010年に発足した関西広域連合の初代連合長に選出され、今年12月に退任するまで10年間に渡り同連合を牽引したことも業績に挙げられるだろう。

 神戸との関わりでは、関西3空港問題の解決に向けて神戸市長以上に積極的な発言を続け、3空港懇談会の再開にこぎつけ、神戸空港の初の規制緩和を実現させたことも井戸知事の大きな功績といってよいだろう。

 人目を引くパフォーマンスをする人ではなかったが、その割には意外な存在感があり、「関東大震災が起きればチャンス」発言や、NHK大河ドラマ平清盛」についての「画面が汚い」発言などの「舌禍事件」を起こすこともたびたびあり、全国的な注目を集めることも多かった。特に新型コロナウイルス対応では、大阪府の吉村知事との対比で批判を浴びることも多かった。

 しかし、全般としては、非常に手堅く、優れたバランス感覚をもって、20年の長きにわたって兵庫県知事として安定した県政を実現したことは評価されるべきだろう。人物的にも「飾らない人柄」との評があり、実際、県知事会見の議事録を見ると、穏やかで丁寧な説明で、質問に対しても誠実に回答をしているのが印象的だ。また、久元神戸市長のように、職員を矢面に立たせるようなこともなく、高級車問題もそのような知事の姿勢のせいなのではないだろうか。

 後継については、金沢和夫副知事の名前が挙がっており、井戸知事は既に水面下で県議会最大会派・自民党の幹部に対し提示をしているようだ。対して自民党は、11日に金沢副知事を支援する方針を決めたと報じられている。ただし、満場一致というわけではなく、一部には異論もあり、多数決で決せられたとのことだ。(神戸新聞 2020/12/12)

 知事の退任表明がこの時期になったのは、大阪府での大阪都構想住民投票の動向を見定めてのことだったのかもしれない。

 

 金沢氏は、総務省出身の64歳で、2010年4月から副知事を務めており、10年以上も井戸知事と一緒に仕事をしてきたわけで、後継者としては順当なのだろう。

 

 一方、久元神戸市長の井戸知事退任のニュースに対する反応が次のとおり報じられている。

「昨日もお会いしたが、いつも通り気力、体力がみなぎっているご様子だったので驚いている。」神戸市の久元喜造市長のコメントからは、知事の退任表明が思いがけない出来事だったことがうかがえる。

神戸新聞 2020/12/12)

  井戸知事の退任はほぼ自明のことだったので、久元市長が驚いていることに逆に奇異な印象を受けるが、このあたりの動きについての情報が余り入っておらず、両者の関係が実は必ずしも緊密でないことを物語っているのかもしれない。

 久元市長は、金沢副知事より2年年長であり、兵庫県知事の世代交代は神戸市長にも影響を与えるかもしれない。