三ノ宮駅ビルの都市計画決定が延期

 JR西日本が建て替え計画を進める三ノ宮駅ビルについて、神戸市が2020年度に予定していた都市計画決定が21年度にずれ込む見通しであることが、25日、新聞に報じられた。新型コロナウイルスの影響によるJR西日本の計画再検討に時間がかかるためという。

 

 三宮再整備の一環で、JR西日本が建て替え計画を進める三ノ宮駅ビル(神戸市中央区)について、神戸市は24日、2020年度に予定されていた都市計画決定が21年度にずれ込む見通しを明らかにした。新型コロナウイルスの影響でJR西の計画再検討に時間がかかるという。旧ビルの解体工事は予定通り年内に完了する見込みで、市は同社と連携し、更地のイベントなどでの暫定的な活用を検討する方針。

 新ビルについて、JR西はホテルや商業施設の入る複合ビルを計画。18年4月に発表した中期経営計画では、同駅ビルの再開発を大阪、広島駅と並ぶ「3大プロジェクト」と位置付け、開業時期を「23年度以降」としていた。

 神戸市によると、当初は20年度中に都市計画を決定することでJR西と合意していたが、新型コロナによる鉄道事業への影響が大きく、現時点で手続きが進んでいないという。

(略)

 JR西は「事業環境を見極めながら(計画を)推進、検討しているところであり、開業時期を含め現時点で決定している事項はない」としている。解体後の暫定的な土地活用について担当者は「部分的に仮囲いが開放できるため、神戸の玄関口である三ノ宮駅前空間を有効に活用したい」と話した。

神戸新聞 2020/9/25)

 

 この記事からわかることは、

(1)JR西日本では、三ノ宮駅ビル計画は計画の再検討にかけられている。

(2)新型コロナによる鉄道事業への影響が大きく、現時点で手続きが進んでいない。

(3)JR西日本は、事業環境を見極めながら(計画を)推進、検討している。

(4)同計画について、開業時期を含め現時点で決定している事項はない。

(5)JR西日本は、解体跡地について有効に活用したいと考えている。

ということだ。

 

 以上から、JR三ノ宮駅ビル計画は、計画そのものが再検討にかけられており、ほぼ白紙になっているということだろう。計画の再開については事業環境の好転が必要であり、かなり長期間を要すると考えているようだ。しかしながら、三ノ宮駅前の土地はJR西日本にとって貴重な財産なので、長期的には高度利用を考えるが、事業環境の変化が生じるまでの間、有効活用=暫定利用を考えていくということであろう。つまりは、解体跡地には仮設建物が建設され、商業店舗等が営業を行う可能性が高いと考えられる。これらの状況から、三ノ宮駅ビル計画の再開は、数年のうちではなく、少なくとも5年、場合によれば10年ないし20年先になるのではないだろうか。

 

 JR三ノ宮駅ビルの建て替え計画は、今から10年以上前の、2008年頃にJR西日本と神戸市との協議が始まり、2013年3月には再開発する方針を固めたと新聞で報じられた。それによると、建て替え計画は同社の13年度からの中期計画に盛り込まれ2021年度の完成を目指すとのことだった。こうした方針を引き継いだ久元市政であったが、「都心の未来の姿検討委員会」や「三宮構想会議」など、度重なるアンケートや検討会議に時間を費やし、三宮クロススクエアなどの本質とは関わりのない計画を抱き合わせにした。2年間という期間をかけ、2015年(平成27年)9月に発表されたのが「神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン]」、三宮周辺地区の「再整備基本構想」だった。その後も新ビルの計画ははかばかしくなく、いよいよ旧ビルは解体されたが、未だに新ビルの概要すら明らかにならないところを、今回のコロナ禍がJR西日本を直撃し、ついには計画そのものが白紙状態に陥ってしまった。

 三宮の再開発は、地盤沈下が続く神戸市の起死回生の策として期待され、都市復活の切り札ともいうべき最優先の課題であったはずだ。そして、せっかくの経済環境の好転など再開発の機運が高まっていたにもかかわらず、これを活かすことができなかった。おそらく、新ビルの建設に目的を絞って事を運んでおれば、それほどの時間はかからず、計画は具体化されていたであろう。都心再開発の起爆剤となるべき三ノ宮駅ビル計画の遅れは、他の都市再開発プロジェクトにも影響を及ぼすだろう。都市間競争が激しい時代に、神戸市は市内の交通中心駅のターミナルビルもないままで、長期間にわたり他都市と競争をしなければならないこととなってしまった。これは大きな失態というべきであろう。

 

 以下は、2013年3月の新聞報道である。 

 JR西日本はJR三ノ宮駅神戸市中央区)を再開発する方針を固めた。駅南側の広場を利用し、隣接する駅ビルを高さ160メートル前後の複合商業ビルに建て替える。事業費は約400億円にのぼるとみられ、2021年度の完成を目指す。13年度からの中期経営計画に構想を盛り込む。中期計画は13日に発表する。

 京阪神では1997年にJR京都駅、11年にJR大阪駅が再開発を終え、三ノ宮駅の地元、神戸でも主要駅の再開発を求める声が高まっていた。神戸の玄関口、三ノ宮駅の再開発が順調に進めば、神戸を活性化する起爆剤になりそうだ。

 三ノ宮駅の駅ビル、三宮ターミナルビル(地下2階、地上11階)は81年に開業。現在、ショッピングセンターの三宮OPAや三宮ターミナルホテルが入っている。ビル南側の三宮駅前広場(約1万2300平方メートル)はタクシー乗り場などとして利用されている。

 JR西と神戸市は08年から協議を開始。ビルと広場の一部の土地を利用して複合商業ビルを建設し、低層階に商業施設、高層階にホテルなどを入れる。

 神戸市によると、市中心部では六甲山系が隠れるような建物の建設を条例で禁じており、除外するための手続きが必要となる可能性がある。駅前広場上空に建物を建設するには都市計画の変更も必要だ。高層化のため現在800%の容積率を緩和するためには、都市再生特別措置法に基づく手続きも検討している。付近の歩道橋の導線も再検討する。

 三ノ宮駅の1日平均の乗降人員は23万5600人(11年度)。JR西の中では5番目に多い。17億円かけて駅構内の自動改札機の増設や店舗のリニューアルを進めている。

朝日新聞 2013/3/13)