兵庫県内 住宅地 最高価格地点の変遷

 国土交通省が21日、土地売買の目安となる7月1日時点の基準地価を発表した。

 これについて、朝日新聞は、兵庫県内の住宅地の最高価格地点が20年ぶりに交代したと報じた。昨年までは神戸市の東灘区岡本2丁目が19年連続で首位であったが、今年はJR芦屋駅近くの芦屋市大原町が最高価格地点となったとのことだ。東灘区岡本2丁目の前の最高価格地点は神戸市中央区山本通2丁目であり、長らく県下の首位の座にあった。

 県下の住宅地の最高価格地点の推移を整理すると、次の表のとおりである。

 

(表)兵庫県 基準地価 住宅地 最高価格地点の推移

(凡例)黄色 第1位、灰色 第2位、オレンジ色 第3位、白色 第4位

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 神戸市中央区が2001年まで首位を守り、2002年からは神戸市東灘区が首位となり、昨年2020年までその座を占め続けた。そして今年2021年、その座を芦屋市に譲り渡した。

 このように見ると、最高価格地点が神戸市中央区から神戸市東灘区、芦屋市 と西から東へ遷移していることがわかる。また、神戸市中央区は、首位から次第に順位を下げ、2012年からは第3位の座を西宮市に譲り渡し、第4位に転落している。

 

 これは、何を表しているのだろうか。

 上の表を見ると、1990年頃においては、神戸市中央区は他を大きく引き離しての首位であったことがわかる。神戸市は県庁所在都市で、兵庫県下第一の都市として君臨していた。その中心地の中央区が住宅地としても最高価格地点であったことは十分納得できるところである。しかし、その中央区は今や、芦屋市、西宮市の後塵を拝し、市内の第一位でさえなくなっている。

 これは、神戸市の県下での相対的な地位の低下を表すものだと考えられる。つまり、県庁所在都市の神戸市の中心地である中央区が神戸の最高価格地点とはならず、神戸の中心地から離れ、大阪に近い東灘区が最高価格地点になっている。従前の阪神地区は大阪と神戸という二つの核が並び立ち、双方が強い磁場をもって、人や物を引きつけあっていた。しかし、現在は片方の核である神戸が衰退し、大阪への一極集中型の構造に変化したのではないかということである。神戸に近いことは、もはやメリットにはならず、大阪により近い方が価値があると感じられるようになってきたのではないだろうか。

 今回の最高価格地点の交代は、新型コロナウイルス禍の影響による一時的なものなのだろうか。それとも、人口減少を続け、一向に有効な策を打ち出すことができず、期待された三ノ宮駅ビル再開発も行方が定まらず、完成の目処が立たない、現在の神戸市の状況を映すものではないだろうか。