新型肺炎の流行について(36)

 新型コロナウイルス感染症の流行が、都市経済および神戸経済に与える影響を考えてみると、次のような影響が考えられる。

(1)感染防止のための行動制限に伴う飲食店、ホテル、観光業、商業、交通機関の利用縮小

(2)テレワークの普及に伴うオフィス需要の縮小

(3)事業所の都心への集中を避けて郊外への分散化

(4)景気の悪化による営業拠点の統合・縮小

 

(1)については全国共通であるが、神戸はインバウンドの恩恵をあまり享受できていなかったので、この点では、京都や大阪などと比べるとその分の影響は少ないかもしれない。

(2)これも全国共通であろう。

(3)都心の集中を避けて郊外に事業所を分散させる動きが一部にはあるようだ。これが神戸にとって、他の競合都市に比べて有利な効果を持つだろうか。神戸は東京や大阪ほど過密ではないが、神戸がその受け皿となるかというと、神戸もそれなりの過密であるし、もともとゆかりのない企業が神戸に進出するかというと、はなはだ疑問である。神戸市には、六甲山上をその受け皿にしようという目論見があるかもしれないが、この危急の際に、わざわざ六甲山上に拠点を設けようとするような企業があるとは思えない。

(4)これは、景気悪化に伴い、企業が国内の営業拠点を絞り込んでいくことだ。一般に、景気が悪化すると、経費の縮減のため、重要な拠点を残し、重要でない拠点を撤収する動きが生じる。こに点については、東京や大阪よりも、神戸にはより強いマイナスの影響が出るように思われる。既存の事業所だけではなく、新規投資についても、不要不急のものは取りやめとなるだろうから、本来的に中枢的機能が弱い神戸にとっては、より厳しい事態となるだろう。

 神戸は交通の拠点だとはいっても、感染拡大の局面では、それが強みとして評価はされにくくなるだろう。災害時というのは、価値があったものが価値がなくなり、価値がなかったものに価値が生じる、一種の価値の逆転が生じるのだ。

 要は、しわ寄せは均等ではないということだ。

 なんとなく、東京一極集中に歯止めがかかるというような気になっているが、地方の方が、被害は大きくなるのではないか。

 以上のような要素から他都市との相対的な関係で考えると、一番、大きな影響を与えそうなのは(4)である。そうなれば、神戸の拠点都市としての地位は、このコロナウイルス禍の結果、一段の相対的低下が進行する可能性が高いように思われる。結論としては、この新型コロナウイルス禍は、都市間競争の観点からいうと神戸にとっては相対的にマイナスに働くと考える。つまり、神戸の凋落を一気に加速しかねないということだ。

 したがって、神戸市は「withコロナ」など、他人事のように言っている場合ではなく、一日も早い事態の正常化、すなわち、コロナ以前の状況に戻すように努めなければならない。事態の正常化まで時間がかかればかかるほど、ダメージは大きくなるだろう。新型コロナ感染症の克服は、人類の生命健康にとっての重大事であるが、神戸という都市にとっても、その将来を左右する重大事なのだ。