オリビア・ニュートン=ジョン 奇跡の歌声

 2022年8月22日、歌手のオリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)が亡くなった。

 

 彼女は、数多くの世界的な大ヒットに恵まれ、70年代半ばから80年代前半にかけて全盛時代を迎え、世界のポップミュージック界の頂点に君臨した。彼女は余りに有名なので、その事績は他に委ね、その音楽、歌唱のすばらしさについて筆者なりの考えを記してみたい。

 彼女は、映画の主役にも抜擢されたように、美しく可憐な姿が魅力だったが、世界的な地位に至らしめたものは、なんといっても、その歌声にある。

 彼女の歌唱は完璧だ。音が外れる、音が上がりきらない、高音部で音が歪むなどが全くなく、常に正確に、ちょうどの声質で、ちょうどの音階に到達することができた。音域が広く、曲に合わせ、地声とファルセットの境目なく、どこまでも上がり続ける高音部は超人的だ。

 彼女の声質は、基本は澄んだ透明感のある声であるが、少しハスキーとまではいかないが独特なつや消しされたようななめらかな声であり、ちょうど、グラスの縁を指の腹でこすって音を出すグラスハープのような感触だ。

 彼女の声は独特で、どの曲を歌っても彼女の歌だとわかる。力強く声量豊かに歌い切る歌手は他にもいるだろう。しかし、様々な声質を使い分け、伸びやかでありながら、きらびやかに、ゆらめくような歌声は比類のないものだ。この声を武器に、彼女は人々を魅了し、世界の頂点に立ったのだ。

 歌う楽曲は、静かなやさしい曲から、アップテンポの曲、力強く激しい曲まで、すべてをカバーすることができた。優しい曲では、繊細に、ささやくように、激しい曲では力強く、電撃のように颯爽と舞い降り、軽やかに疾走する。しかし決して一本調子ではなく、いつも十分な余裕を残し、自由に多彩にゆらめき、表情を変えた。

 力強く伸びやかでありながら、ビブラートを用いた優しい発声で、高音部でも決して甲高くならず、曲は全体として歌い手の完全なコントロール下にあり、バランスを崩すことが決してなかった。そして、曲の所々に地声と裏声が重なり、倍音となったような声が不意に現れる。曲が佳境になると、歌声は伴奏と渾然一体となり、それが繰り返されるうちに、人々は次第に陶酔感に包まれるのだ。

 ここで特筆すべきは、彼女の歌唱は、自らの声を前面に出し、他を圧し、曲を力ずくでねじ伏せる様ではないということだ。曲調に応じて、伴奏と同調し、一体となって完璧なハーモニーを奏でる。それはデュエットにおいても強く表れ、デュエットに代表曲があるのも彼女の特徴だろう。相手方の声に合わせ、いつもこまやかに寄り添い、同質化させるように歌う。それは、周囲の世界との調和を重視する彼女の考え方が反映したものだったのかもしれない。

 彼女の声は、ユニークで比類なく、様々な要素が絶妙のバランスで統合された、まさに奇跡の歌声であった。彼女は生涯を終えたが、様々な音源や映像が我々には残されている。これらは、いつまでも人々から愛聴され、さらに新しいファンを生み出し続けることだろう。そして、1970年代、80年代を代表する人類の歴史的な遺産となるだろう。

 

 


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