異次元の少子化対策

 これまで、我が国の少子化の原因、メカニズム、対策について縷々述べてきた。その対策は、非正規労働者の正規労働者化に求めてきた。しかし、もっと抜本的な対策がある。それは、最低賃金の大幅な引き上げである。

最低賃金制度の概要】

最低賃金制度とは

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

(以下略)

 

厚生労働省HP「最低賃金制度の概要」)

 

 現在は非正規労働者最低賃金(2022年度)は、東京で1072円、兵庫県で960円にすぎない。

 単純化のために、仮に時給を1000円として、8時間、月20日の労働とすると、日給8000円、月給16万円、年収192万円となり、そこから税や社会保険料を差し引いた手取額で考えると、これではその人の生活を維持するのが精一杯だろう。こうした条件で働く人々が多数を占めるようになると、社会の少子化が生じることになる。

 では、子孫を残し、社会を維持させるのに十分な賃金はいくらだろうか。

 ざっくりと、一つの試案として、時給2500円を提唱しようと思う。これは現在の最低賃金の2.5倍の水準にあたる。時給2500円で、8時間、月20日の労働とすると、日給2万円、月給40万円、年収480万円となる。そして、結婚すれば、夫婦で480万円の2倍、960万円となる。これに加えて、出産、育児の間の育児休業補償を十分に行うならば、どの世帯でも社会が維持可能となる2人以上の子供を持つことができるだろう。

 つまりは、目標とすべきは、日給2万円の社会だ。

 法外だと思う人もあるかもしれないが、大工等の日当が2万円程度という話を聞いたことがあるので、不思議ではないだろう。本来、世帯の生計維持者には、この程度の収入が保障されるべきなのだ。

 もともと、1980年代頃までは、アルバイトは全体の一部であり、たとえば、学生が小遣いを稼ぐような労働が中心で、その時の賃金水準が、従前は正社員として勤務させていたような仕事をパートやアルバイトに切り替え、世帯の生計を維持する必要がある人々にまで野放図に拡大されてしまったのだと考えられる。

 

(参考)非正規労働者割合の推移

総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ」より作成)

 

 

 では、このような賃金水準は実現可能だろうか。

 この問題については、実現が可能かというよりも、この賃金水準が社会の持続可能のために必要な水準であると考えることが必要である。この水準を標準的に満たせないなら、その社会は持続可能条件を満たさない。つまり、その社会は必然的に崩壊に向かう。だから、できない理由を考えるよりも、どうすれば実現できるのかを考えなければならない。

 これに対して、すべての国民にこのような賃金水準を保障することは、我が国経済の能力を超えてしまうのではないか、我が国経済にこれだけの供給ができないのではないかという疑問があるかもしれない。

 そもそも発想が逆転している。人々の必要を満たすために生産活動を行うのであって、生産した量にあわせて生活をするのではない。何をどれだけ生産するかは、市場経済の元では、貨幣の支出によって指示するしかない。人々の購買行動の結果、もしも、人々の需要を満たせないなら、生産を増やせばよいのである。これは、図らずも、我が国が30年にわたって成長しなかった事情を説明している。つまり、人々の生活に必要な財を手に入れるだけの収入を与えず、逆に消費税の増税社会保険料の引き上げなどその抑制に努めることばかりをやってきたからこそ我が国経済は30年間全く成長しなかったのだ。

 

 また、最低賃金の引き上げは、海外製品との競争力が低下し、国内経済の破綻を招くのではないかとの疑問があるかもしれない。

 この疑問に対しては、仮にそのような状況が生じるのであれば、輸入品に対する制限を設けるべきだろう。ある人は自由な貿易を至上の命題のように唱えるが、社会の維持可能性が問題となる場合に、どちらが優先すべき価値かは明白だ。自由な貿易を守って、国民経済が崩壊するなら、いったい誰のための利益なのだろう。

 

 近代以前の貧困は、生産能力の不足によるものだった。現代の経済問題は、絶対的な生産力の不足ではなく、分配の問題である。生産能力はあるにもかかわらず、また人々が求めているにもかかわらず、手元の貨幣がない(有効需要がない)ために起きていることだ。だから、人々に十分な収入が与えられるならば解消が可能だ。仮に、供給が不足するのであれば設備投資を行って生産能力を拡大すればよい。そうすると、設備投資が新たな需要となって、いっそう有効需要が拡大することになり、経済成長が促進されるだろう。

 

 

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