ふるさと納税の流出超過対策

 総務省は29日、全国の自治体が2021年度に受け入れたふるさと納税の寄付総額が前年度比1.2倍の8302億円だったと発表した。寄付件数は同1.3倍の4447万件で、いずれも過去最高を更新。利用者数が拡大し、寄付総額は16年度から5年で約3倍になった。

(中略)

 21年度の寄付金額が伸びている理由について、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは利用者数や返礼品の種類が年々多くなっていることを挙げる。ビールや化粧品など有名企業の商品を返礼品に採用する自治体も増えているという。同社によると21年以降は、ふるさと納税の「普段使い」の傾向が強まっているという。ティッシュペーパーやトイレットペーパーなど雑貨・日用品の21年度の寄付金額は19年比で1.5倍に伸びた。物価の高騰もあり、22年はさらにこの傾向が強まる可能性があるという。

朝日新聞 2022/7/30)

 

 ふるさと納税は、個人が地方自治体に寄付を行った場合に、寄付した額のうち2千円を除いて全額税額控除を受けることができる制度である。寄付を行った人へその地方自治体が返礼品を贈ることが認められており、返礼品を目的として寄付が年々拡大している。いくら多額の寄付をしても、結局は2千円を除いて全額税額控除してもらえるので、寄付とはいうものの、実態としては2千円で返礼品を買うことに等しい。返礼品は寄付額の30%までとされており、高額な寄付をした方が高価な返礼品をもらうことができる。たとえば、10万円を寄付すると3万円相当の返礼品がもらえることになり、それに要する費用は一律2千円で、2千円で3万円相当の品物を手に入れることができる。費用対効果は、2千円と3万円で、実に15倍の投資効率である。そのため、ふるさと納税は一種の節税の手段となっている。この差益は誰が負担しているのかというと、寄付を行った者が居住する地方自治体、市や県である。

 返礼品を求める動機については、主に二つのパターンがあると考えられる。一つは、通常であれば買わないような豪華な品物を、2千円で手に入れようとするパターン。もう一つは、現在の生活費に充当しようとするパターン。これまでは、どちらかというと前者のパターンの方が主流であったと思われるが、経済環境が厳しく、物価が高騰しつつある状況下においては後者のパターンが増加するのではないかと予想される。

 上記の記事は、その予想を裏付けるものだ。

 

 神戸市では、ふるさと納税の収支については、制度発足以来、大幅な流出超過が続いている。

 当ブログで、神戸市のふるさと納税の流出超過を改善する方策として、日常用品に相当するものを返礼品に加えることを提案していた。上記の記事は、その方向性を支持するものだと考えられる。神戸は大都市圏にあって、その消費需要を満たすための多くの品物を産出している。酒、ビール、小麦粉、食用油、調味料、パスタ、総菜、菓子・・・。日常用品のセレクトには事欠かないはずだ。日常で、日々消費するものをパッケージ化し返礼品とすべきだ。大量に発注し、より安価に調達できれば、いっそうパッケージのお得感が強まるだろう。返礼品を、神戸牛やファッション用品、神戸ブランド用品など、いわゆる特産品やブランド品に限るのではなく、日々家庭で消費するものをパッケージ化してラインアップすることがよいと考える。そして、それは、神戸に所在する一般企業のPR、市場拡大にも寄与するはずだ。

 

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