三宮の魅力は6つの駅があること?

 神戸市の久元喜造市長(写真)は8日の定例記者会見で、三宮再開発で神戸市の都心部にオフィスの供給が相次ぐことについて記者の質問に答え、「三宮は6つの駅があって交通も便利」であるうえに「東京や大阪の都心にはない『空気』を感じていただけるのではないか」と述べ、快適なオフィス空間の提供に自信を見せた。「三宮駅から北野坂に行くと、もう山に手が届きそう。すぐ南側には海も見える。旧居留地には歴史が育んだ、たたずまいもある」と神戸ならではの特徴を説明した。

(神戸経済ニュース 2022/06/08)

 

 久元市長が6月8日の記者会見で、都心部へのオフィスの供給が続く三宮について、神戸経済ニュースの記者から、神戸の魅力についてアピールしてほしいとの質問があった。それに対しての久元市長の回答が上の記事である。

 そのやり取りを、神戸市のHPでの市長会見の議事録から抜粋してみると、次のとおりであった。

記者: (略)これは直接新しくできた4施設とは関係ないんですが、JRの駅ビル、それからこのバスターミナルビル等、広いオフィスビルが確保されると。旧居留地にもその民間のオフィスビルの計画も出ていますねと。改めて、神戸の都心にオフィスを構えるメリットというのをどういうふうに。言ったら、神戸のオフィスを売り込んでいただきたいということですが、一言いただけますでしょうか

 

久元市長: やはり三宮は6つの駅があります。大変便利なまちであるとともに、この三宮の駅に立つと、目の前には山がありますね。すぐ北野坂に行くと、手が届くようなところに山がある。それから、すぐ南側には海がある。海と山が感じられるところ、こういう大きな大都会でそれを満たしているところってないと思うんですよね。それから、あとは、旧居留地など、神戸独特の歴史が育んできたまちのたたずまいというものがあるので、やはり東京や大阪の都心にはない空気というものを感じていただけるのではないかと。単なる大都会のオフィスということとともに存在する神戸らしい雰囲気や空気というものを感じていただければなというふうに思います。

 

 

 久元市長が言う「6つの駅」とは、JR、阪急、阪神ポートライナー、市営地下鉄山手線、海岸線を指す。確かにこれは大きな魅力だ。三宮は、市内の交通の中心地であり、関西圏の主要都市、京都、大阪、姫路、奈良とも多頻度、大量輸送の鉄道が直通するという抜群の利便性を誇っている。その点には間違いないが、それだけでは魅力の一端を語ったに過ぎない。三宮のもう一面の魅力、それこそが十分に気づかれず、活用されていないきわめて重要な魅力なのだが、三宮が長距離交通機関とのアクセスが極めて優れていることだ。すなわち、東海道・山陽・九州新幹線の全列車が停車する新神戸駅と地下鉄で2分、札幌、青森、仙台、東京、新潟、松本、高知、長崎、鹿児島、那覇など国内の主要都市を結ぶ神戸空港ポートライナーで18分で結ばれていること、それに加えて、西日本の諸都市とをくまなく結ぶ長距離バス路線網の拠点となる西日本最大級のバスターミナルが三宮駅に隣接して設置される。これだけの交通条件を備えているというのは、西日本に限れば、おそらく随一だろう。神戸、三宮に拠点を構えれば、特に西日本については、ほとんど日帰り圏に置くことができるのだ。これはビジネスにおいては相当のメリットだ。

 これらは、神戸の地理的、歴史的条件下で形成されてきたものだ。

 古くは大和田の泊として瀬戸内海、大陸との交通の拠点として反映した天然の良港を擁し、幕末以降は世界有数の神戸港として海外との窓口を独占してきたことから、神戸港を起点に鉄道網や道路網が整備されたことだ。今日、神戸港は、かつての独占的な地位を失ったが、その当時に形成されたインフラは健在である。神戸はその偉大な遺産を受け継ぎながら、そのすばらしさを十分認識できておらず、十分に活用してきたとは言えない。

 重厚長大産業が勢いを失った今、これを転換し、新しい時代にあった都市を形成する必要がある。それが、広域的中枢都市としてのオフィスや集客施設の集積という課題なのだと考える。

 神戸にどのような位置づけを与えるのかということで、6つの駅というのでは、単に兵庫県の都心という位置づけでしかない。三宮が兵庫県、神戸の都心というのは分かりきった話だ。神戸が挑まないといけないのは、国内の大都市との競争である。いかにしてブロックを超える超広域での都心の地位を確立するかが最大のポイントだと考える。

 

 近年、神戸市須磨区の流通業務団地や北区の複合産業団地等に大型の物流施設が相次いで建設されている。その理由は、高速道路を通じた西日本全域への利便性、労働力の確保のしやすさ、内陸部が津波被害などの心配もなく、防災面からも優れていることだという。(神戸経済ニュース 2021/04/20 「プロロジス、神戸テク・ロジでの物流施設5棟目の起工式」)

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 これらは物流施設であるが、オフィスやその他の業務施設についてもこれらの点は立地選択の重要な要素であると考えられる。だから、アピールするポイントとしては、これらの点は欠かせない。市内で一番便利というだけでは、企業誘致には何の役にも立たない。せっかくアピールする機会が与えられたのだから、ポイントを外さずにしっかりアピールをすることが必要だろう。そして、神戸市の企業誘致が本当に重要なポイントをアピールできているかどうか、再確認することが必要だろう。