神戸市が、新神戸駅前広場再整備の進め方(案)を公表

 JR新神戸駅は、市内で唯一の新幹線駅であり、1972 年(昭和47 年)に山陽新幹線新大阪駅岡山駅間の開通と同時に開業しました。当駅は、広域的な交通における神戸の玄関口であるとともに、地下鉄(西神山手線・北神線)やバス・タクシー等の公共交通の重要な結節点となっています。また、六甲山の山裾に位置し、布引の滝や布引ハーブ園等の豊かな自然環境へのアクセスの起点であるとともに、市内有数の観光地である北野エリアと隣接するという特徴も有しています。
 現在の駅前広場に関しては、これまでに「バスの乗り場が点在しており、乗換えが分かりづらい」「北野や布引の滝等の周辺エリアへのアクセスが分かりづらい」「神戸を感じられる雰囲気づくりができていない」等の意見をいただいています。
 このような状況に対し神戸市では、令和元年度からまちの質・暮らしの質を一層高めることで、都市ブランドの向上と人口誘引につなげるプロジェクト「リノベーション・神戸」をスタートし、新神戸駅を対象駅の一つとして位置づけました。新神戸駅の駅前広場については、利便性・魅力向上を図り、人と公共交通優先の空間とするため、再整備を行います。

(「新神戸駅前広場再整備の進め方(案)」令和 3 年7月 神戸市)

 

神戸市:新神戸駅前広場再整備の進め方(案)の公表 (kobe.lg.jp) 

 

 7月8日に神戸市が、新神戸駅前広場の整備方針案を発表した。そこには3つの再整備の方向性が示されている。

 

方向性1 公共交通の利便性向上(交通機能の再編)

・来街者にとって分かりやすく利用しやすい駅前となるように、新幹線改札口と同じ2階に公共交通(バス・タクシー)の乗降場所を集約するとともに、待合環境等の向上を図るなど、乗換え利便性を向上させます。
・1階と2階で一般車と公共交通を分離することで、交通の円滑化を図ります。

  

方向性2 周辺エリアへの歩行者動線の改善

・初めて訪れる方が目的地へスムーズに移動できるように、新幹線改札前の出入口部において、あらゆる方面への歩行者動線の起点となる結節点を整備します(視認性の高い空間づくりや分かりやすい案内表示等)。
・北野や布引の滝等の周辺エリアへのアクセス改善を図るため、案内サインの整備や、高架下空間のリニューアルを含む歩行者動線の改良を行います。
・生田川沿いの駐輪場を集約し、歩きやすい歩道空間を整備します。 

 

方向性3 玄関口としてふさわしい空間の創出

・神戸を訪れる方に対し、玄関口としてふさわしい空間を創出するため、駐車場の上部にデッキを整備し、新幹線改札から駅前広場南側の生田川公園(再整備予定)にかけて一体となった、神戸らしさを感じられるシンボル空間を整備します。

 

 

 これについての意見を述べてみる。

 

 整備の方向性は次の3つである。

(方針1) 新幹線改札口と同じ2階に公共交通(バス・タクシー)の乗降場所を集約し、乗換え利便性を向上させる

(方針2)周辺エリアへのアクセス改善を図るため、案内サインの整備や歩行者動線の改良を行う

(方針3)神戸の玄関口としてふさわしい空間を創出するため、駐車場の上部にデッキを整備し、神戸らしさを感じられるシンボル空間を整備する

 

 発表された資料によると、今回の整備を行おうとする目的については、「都市ブランドの向上と人口誘引につなげるため」であるという。そのために、新神戸駅の駅前広場については、「利便性・魅力向上を図り、人と公共交通優先の空間とする」というのが全体の考え方のようだ。

 具体的には、「バスの乗り場が点在しており、乗換えが分かりづらい」「北野や布引の滝等の周辺エリアへのアクセスが分かりづらい」「神戸を感じられる雰囲気づくりができていない」という意見があるため、そこから導かれたのが、上記の方針1~3ということのようだ。

 

 これらの問題点の指摘が一般多数の意見なのかどうかわからないが、それはさておき、この方針1~3を読んで明らかなように、これらは問題に対して対策を講じる「対症療法」であって、内容は「改善」のレベルだ。つまり、抜本的に、新神戸駅周辺の状況を分析し、どうあるべきかを考え、解決策を提示したものではない。だから、新神戸駅再整備の基本方針と言いながら、三宮、神戸の整備方針とほとんど何も違いのないような内容だ。新神戸駅周辺の現状をどう捉え、どのようにしたいのかよくわからない。これらの方策によって、都市ブランドの向上と人口誘因につなげる結果をもたらすことができると言えるのだろうか。乗り換え利便性の向上、案内サインや歩行者導線の改良、シンボル空間の整備の3つの施策だけで、都市ブランドの向上と人口誘因につなげるというのは飛躍がある。仮に駅前広場の利便性と魅力が向上するとして、どういう連関をもって、どういう具体的な効果を及ぼすか全くわからない。数値的な実態の把握がされていないし、目標値も示されていない。

 整備方針案の前提問題として、新神戸駅周辺の現状把握が正しく行われているのだろうか。他都市と比較した場合の新神戸駅の現状、低利用となっている周囲の状況をどう捉えているのか。新神戸駅に隣接した商業施設をあのような寂れた状態のままにしておいて、都市ブランドの向上が図れると考えているのだろうか。新神戸駅は県外から来客を迎える文字通りの「神戸の玄関口」である。都市の玄関口があのように照明が消え、昼なお暗いという、そのような大都市がいったい他にあるだろうか。玄関口をあのような姿で放置して、これ以上の都市ブランドのイメージダウンはないだろう。

 「都市ブランドの向上と人口誘引につなげるため」を目的に掲げるのであれば、これだけでは実質的に何もしていないことになってしまうのではないだろうか。

 

 

 

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