新型肺炎の流行について(29)

 東京都は10日、新型コロナウイルスの感染者が新たに243人確認されたと発表した。9日の224人を上回り、2日連続で過去最多を更新した。再び感染が拡大する中、首都圏の1都3県の知事はテレビ会議で会談し、感染防止へ向けた行動を呼びかかる共同声明を出した。一方、政府は10日、社会経済活動の段階的再開を予定通り進め、イベント参加者の上限を1千人から5千人に緩和した。

朝日新聞 2020/7/11) 

 東京都の発表によると、東京都内243人の感染者のうち、新宿区が101人に上り、そのうち「夜の街」関連が93人を占めるとのことだ。この状態を見ると、東京都内全般に感染が広まっているということではなく、「夜の街」にクラスターが発生しており、そこに出入りする人に感染が広まっているということだろう。なぜ、「夜の街」にクラスターが発生するかというと、おそらくは、こうした歓楽街では、マスクの着用など感染防止対策が疎かになっており、そうした中で、客や従業員が近接して飲食や会話などを行うことにより、感染が発生しているのではないかということが想像される。これらの客や従業員が媒体となって、ウイルスはやがて市中にも拡散していくだろう。ウイルスの感染拡大は、都内ではとどまらず、国内全体にも広がっていくと考えざるをえない。

 下のグラフを見ると、感染の再拡大の傾向が一層明瞭になってきている。最近の発生件数は、見かけ上では、緊急事態宣言下の4月頃の半分くらいの高さまで高まってきているが、4月頃には検査が十分行われていなかったことを考えると、実際の蔓延状況はそれほどではないのだろうか。

 

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(出典:厚生労働省HP)

 

 そうした状況の中で、国内旅行を促進を目的として国内旅行の代金の半額を公的に補助する「Go To トラベル」キャンペーンが22日から始まる。これは、国内移動の自粛を呼び掛けていた緊急事態宣言とは真逆の施策である。

 新型コロナウイルスは、通常、マスクを着用しておれば、感染のリスクはそれほど大きいとは考えられないが、人は食事時や入浴時等にはマスクを外さざるを得ないから、24時間マスクをしていることはできず、宿泊を伴う移動を行うことは、やはり感染のリスクを高める結果をもたらすだろう。

 したがって、こうしたキャンペーンの実施にもかかわらず、人々が自由に旅行を行える環境には程遠く、旅行業界の苦境はまだまだ続くものと予想する。

 世界全体を見ると、7月10日現在で、感染者数は1226万人、死亡者は55万人となっている。わずか1週間で感染者は139万人、死者は4万人も増加をしている。