新型肺炎の流行について(27)

 経団連は17日、大手企業の2020年夏の賞与(ボーナス)の1次集計結果を発表した。回答した86社の平均妥結額は92万5947円と、19年夏と比べ6%減少した。マイナス幅はリーマン・ショック直後だった09年夏(19%減)以来、11年ぶりの大きさ。比較できる1980年以降、3番目の減額率となった。

 (日本経済新聞 2020/6/17)

 

  新聞の報道によると、主に春の時点で夏の賞与を決めていた企業が今回は回答しており、新型コロナウイルスによる経済への影響は反映しきれていないという。業種別にみると、鉄鋼は同25%減、化学は同6%減、非製造業は同10減で、紙・パルプは同8%増と数少ないプラス業種のようだ。

 今後は春以降の妥結結果や賞与を業績連動としている企業の状況を加え、7月下旬をめどに最終集計を出すそうだ。経団連は「夏より冬のほうがコロナの影響を踏まえ、厳しい数字になりそう」とのことだ。この報道の対象は大手企業のみであるが、中小企業も、同様もしくはさらに深刻な状況と考えられる。

 

 全国の主要企業100社を対象にした朝日新聞のアンケートで、今の国内景気を「後退」とみる企業が97社に達し、昨年11月の前回調査の12社から激増した。新型コロナウイルスの感染拡大で、個人消費や企業収益が落ち込んだのが主な原因だ。企業の景況感は最悪レベルまで沈んでいる。(略)

 2018年以降、景況感の悪化傾向が続いていたが、今回は一気に加速。98社が景気後退と答えたリーマン・ショック直後の08年11月調査以来の低水準となった。

朝日新聞 2020/6/22)

 

 上の記事が報じるように、企業の景況感は著しく悪化し、今後、事業の縮小、投資の削減などの自己防衛に向かうのは必然だ。

 

 今回の景気後退は、いつもの景気後退とは様相が異なるように感じられる。なんらかの経済的ショック、例えば、大企業の経営破綻であったり、株価の大暴落などが生じて、頂上から崩れ始めるようなものとは異なり、裾野の方から小さな火災が広がり、それが次第に中心部に被害が及んでいくかのようだ。病気の蔓延については人々の注意が及ぶが、経済の被害については姿が見えにくく、気がつけば巨大な災厄になってしまっていたということがないか心配だ。6月26日現在で、世界の感染者は960万人、死者は49万人となり、まだまだ右肩上がりで拡大を続けており、収束のめどは立たない。今なお炎は、不気味な静寂を湛えて燃え広がり続けている。

 我が国では新型コロナウイルス感染の第1波は収束したが、経済的な需要の縮減は、今後、雇用や賃金、新規投資を通じて影響を深めていくだろう。その上に、国や自治体までが、税収減少を受けて支出の抑制を始めると、さらに深刻なものとなるだろう。それは、また需要の減少の要因となり、一巡して、再び雇用や賃金の減少、新規投資の縮減を招くことになるだろう。

 この負の循環を防ぐことができるのは、国や自治体などの政府以外にはない。だから、この混乱が収まり、民間経済が再び力強く拡大を始めるまで、間違っても、財政再建に取り組んではならない。もし、国や自治体が、税収の減少を受けて、支出の削減に走るなら、経済の崩壊の最後の引き金を引くことになりかねない。