新型肺炎の流行について(14)

 4月23日、神戸市が 新型コロナウイルス感染症対策で緊急補正予算(第1弾)を発表した。

補正予算の概要

 都市部を中心に新型コロナウイルス感染症が急増しており、本市においても感染者の増加傾 向が見られる。早期収束と医療崩壊を起こさないために感染症拡大防止に全力で取り組むとと もに、長引く外出自粛や臨時休校等で困っている市民の生活と、経済活動の急速な縮小により 疲弊している市内事業者を全力で支援するため、特に緊急を要するものを補正予算(第1弾) として編成する。

 補正予算の規模は、一 般 会 計1,618億6,500万円、特 別 会 計 5億4,400万円で、合 計1,624億900万円となっている。

 内訳を見ると、次の通りである。

(1)感染症の拡大を防ぐ 21.2億円(1.3%)

(2)市民の生活を守る 1,575.69億円(97.0%)

(3)神戸経済を守る 27.2億円(1.7%)

   合計 1,624.09億円(100.0%)

 

(1)の「感染症の拡大を防ぐ」では、マスク等衛生資材の確保と感染拡大防止策の強化、医療提供体制の充実と検査体制の強化として軽症者等受入施設の確保とPCR検査機器等の整備、患者等の受入を行う医療機関への支援として防護服等の確保費用の助成 などが上げられている。

(2)の「市民の生活を守る」では、全市民に1人あたり10万円を給付する「特別定額給付金」が1,555億円、児童手当を受給する世帯に対して対象児童1人あたり1万円を給付する「子育て世帯への臨時特別給付金」が19.06億円があげられており、この2項目が、今回の補正予算の97%でほとんどを占める。これらは国の施策として行われるものだ。

 その他は、学校休業時等における学びの環境整備としてICT環境が整っていない家庭へのPC・ルーター貸与、ひとり親家庭のサポートとして新たな就労に向けた講座受講費補助の拡充、資格取得時に就職準備金(5万円)を支給、DV相談体制の強化 などの項目が上がってる。

(3)の「神戸経済を守る」では、次のような項目が上がっている。

・中小企業等の事業継続や売上向上への支援〔飲食店のテイクアウト・宅配参入や製造業の新商品開発などに取り組む経費を補助〕

・中小企業等への家賃負担の軽減〔中小企業等の店舗の家賃を減額した不動産オーナーに対して軽減額の8割を支援(最大200万円)〕

・県の休業要請に応じた事業者の経営継続支援〔県が休業要請を行った中小法人及び個人事業主に対して県市協調で支援〕 〈支援内容 法人:100万円、個人:50万円(飲食店・旅館・ホテルの場合 法人:30万円、個人:15万円)〉

・中小企業等のICTを活用した経営強化支援〔中小企業等のテレワークや電子商取引(EC)等に係る取り組みを支援〕

・先払い利用券による飲食店等の支援 〔先払い利用券が購入できる仕組を持つ事業者と提携、クーポン発行を支援〕

・宅配事業者等を活用した飲食店等・家庭への支援〔UberEatsなどを活用した宅配・テイクアウト事業や商店街・市場における共同宅配事業への支援〕

・中小企業等への経営相談体制強化〔セーフティネット保証(4・5号)等の認定申請受付窓口の強化、社労士等による専門相談窓口の開設

 

 今回のコロナウイルス感染防止のための活動自粛により、多くの事業者が収入が途絶え、破綻の危機に瀕している。収入は途絶えても、賃金や家賃、公共料金、税金など、固定的な支出があるから、放っておくと出血多量でたちまち死んでしまう。その事業者が破綻すると、従業員の生活も破綻するし、取引先、借入先の金融機関へも波及する。危機に見舞われているのは中小企業に限らず、大企業であっても、この状況が続くならば存亡に関わる事態になるだろう。

 対策としては、従業員には速やかな生活費の提供、事業者には固定費の支払い猶予、返済資金の猶予などが必要であり、具体的には公共料金の免除、固定資産税などの猶予、資金返済の猶予などであり、金融機関や電気・ガス・水道・地方自治体などがこれらの影響を受けることになるが、これらの負担は最終的には、国債の日銀引き受け等により政府が対応せざるを得ないだろう。

 国、自治体は、場当たり的に対応するのではなく、現在生じている事態を構造的にとらえ、先回りして必要な施策を、従来の常識にとらわれずに矢継ぎ早に打ち出さなければならない。現状の10万円支給だけでは、とうてい回避することができない規模の事態だ。本質を考え、効果の大きい部分から優先的に実施するべきだ。神戸市としては、当然ながら、一自治体ができることには限度があるから、必要な施策を考え、国に積極的に働きかけるべきだ。

 今回の神戸市の補正予算による施策だけでは、人々の安心にはほど遠い。

 

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東遊園地の花時計が笑顔のデザインに変わりました。みんな気分が落ち込み不安になりがちです。そんな中にあっても、少しでもやさしく、前を向いて過ごしたい。そんな願いを込めて。

(2020/4/22 久元喜造twitter)

 

 花時計の笑顔だけで人々は笑顔になれるものではない。市長の仕事は願うことではなく、不安の原因になっていることを具体的に手当をすることなのだ。