新型肺炎の流行について(12)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国が1人につき一律10万円を配る「特別定額給付金」の個人個人の対応について、様々な意見が飛び交っている。

 神戸市の久元喜造市長は23日の定例会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国が1人につき一律10万円を配る「特別定額給付金」について、「私は家族を含めて、受け取りは辞退をしたいと思っている」と述べた。一方で「(市)職員に辞退を求めるつもりはない。受け取る権利があり、どう使うかは個々の職員の皆さんが判断をしてもらえばいい」と語った。

 同給付金は辞退が可能で、閣僚らが受け取らない意向を示しているほか、広島県湯崎英彦知事が県職員の受け取り分を感染対策の財源に充てたいとの方針を表明し、その後事実上撤回するなど、議論を呼んでいる。

(2020/4/23 神戸新聞

 

 今回の特別給付金は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに対する行動抑制措置によって、通常の営業ができなくなり、収入の途が途絶えてしまった人々の生活を維持することを目指して緊急に行われるものだ。なぜ、一律10万円の支給となったかというと、支給に条件をつけてしまうと、どうしてもそこから抜け落ちて施策が及ばなくなる人々が生じるし、また手続き、審査に時間がかかってしまい、緊急に行うという本来の目的が十分に果たせなくなるからと理解される。

 次に、高額の所得がある人や公務員のような安定した収入がある人が給付金をもらうのはどうかという意見が生じており、広島県知事は県職員の受け取り分を感染対策の財源に充てる意向を示したり、久元神戸市長のように受け取りを辞退する者、もらった後に寄付をすると明言する者など、様々な意見が出ている。

 こうした意見が出るのは、この給付金の全体像を見ないで、お金の給付を受けるという一局面にのみ着目するからだ。この給付金を、「無償でお金をもらう」と考えることが間違っているのだ。この給付金は、原資が何かと考えると、一時的には国債発行などによるだろうが、最終的には税金でまかなわれるものだ。したがって、もう少しスパンを長くとらえるならば、次の段階としては、今回支給されたお金は必ず税金で回収されることになる。そのように考えると、これはお金の前貸しであって、後々には返済が求められるものだ。もちろん、今回のコロナ禍により収入が途絶えた人たちはこれによってある程度の生活を維持することができるから、多いに利用すればよい。そうでない人の手にもお金は渡るが、その場合は将来の返済時のことを考えて処分するとよいだろう。使ってしまっても、寄付をしても、辞退をしても、将来には返済が求められる。将来の返済(回収)の段階で、払えない人も多いだろうから、おそらくは、現在、安定した収入のある人は、今回支給された額をはるかに上回る返済を求められるだろう。だから、先を見据えて、支給されたお金は、臨時収入だと考えずに蓄えておくべきだろう。要するに、「お金をもらう」と考えるから後ろめたく感じるのだ。もちろん、大資産家で、現在も将来もお金に全く心配のない人々もいるだろう。そうした人々は、自分がどのようにしようが自由だが、そうした人に限って、某は受け取るべきではない、寄付をすべきだ等の勝手なことを述べたがるものだ。この給付金は、個人にお金を前貸しするもので、お金を大判ぶるまいするものではない。必ずお金の返済が求められる。手元に資金がない人は躊躇なく使うべきだが、単なる預かり金にすぎない。だから、社会的に影響力のある人は、他人にあれこれ注文すべきではない。また、一般の人は、冷静に粛々と申請をして、支給を受けるのがよいだろう。